第262話 辞職 

「モモセさん、あとはお任せください」


「いつまでも、地球人冒険者がホラール人冒険者に指導する体制を続けるよりも、優秀なホラール人冒険者と役目を交代した方がいいでしょう。ルシアンさん、あなたは現在レベル700を超えて、ホラール人冒険者ではトップの存在です。私の仕事をあなたに引き継ぎます」


「責任重大ですね。レベル712はホラール人冒険者からすれば凄いのでしょうが、地球人と比べるとそこまででもないですし……」


「半年でレベル1からレベル712までレベルを上げられる人が希少ですけど。良二さんもそう思いますよね?」


「地球にダンジョンが出現した時に比べて、冒険者の育成マニュアルが効率化されていたとはいえ、ルシアンさんはトップアスリート並だと思うよ」


「そんなものですか。フルヤさんとモモセさんを見ていると、全然実感ないですけどね」


 里奈に頼んでいたホラール人冒険者育成の監理を、優秀なホラール人冒険者に任せることにした。

 ホラール人冒険者たちの育成は順調だし、地球の時とは違ってちゃんとマニュアルもあるからだ。

 いつまでも、地球人がホラール人に指導する立場を続けるのも、今後の両惑星の関係を考えるとよくないので、ルシアンさんという天才冒険者に里奈の仕事を引き継いでもらった。

 ルシアンさんは半年でレベル712に達した天才だし、人に教えるのが上手だ。

 きっと、ホラール人冒険者たちをしっかりと育成してくれるはず。


「里奈がいなくなっても、地球人冒険者の大半は残るから大丈夫ですよ」


 初心者にダンジョンの知識を叩き込み、中級者になるまでレベルリングをする冒険者は不足しているので、かなりの数の地球人冒険者は残りつづける。

 彼らを監理する責任者が、里奈からルシアンさんに変わるだけだ。


「大半の地球人冒険者たちは、地球に戻らないんですね」


「それは……」  


 ホラール星とデナーリス王国との間で始まった貿易により、ホラール連邦国の貨幣が世界の為替市場で取り引きされるようになったのだが、多くの地球の人たちが安全資産であるホラール貨幣を買い漁った結果、一気に通貨高になってしまった。

 ホラール人冒険者たちに指導をする地球人冒険者からすれば、地球で働くよりもホラール星で働いた方がお金になるのだ。

 支払いが、価値のあるホラール貨幣というのが大きい。

 そして対ホラール貨幣に対し円が安くなったので、また『日本の国力が落ちた!』と騒ぐ経済評論家や自称知識人は健在である。

 そのあと続けて、『だから、これからの時代はホラール貨幣に投資しましょう!』と言うのもお約束だけど。

 そういえば、俺やイザベラたち、イワキ工業などは貿易の決済でホラール貨幣を大量に手に入れていたので、なにもしないで資産が増えている。

 そんなわけで、ホラール貨幣が手に入るホラール星で働きたい冒険者が増えていたのだ。

 彼らはホラール人冒険者への指導の合間にダンジョンにも潜り、成果をホラール連邦国政府に高く買い取ってもらっていた。


 現在ホラール星では、足りない魔石、資源、モンスターの素材、ドロップアイテムを地球各国から輸入するようになった。

 とはいえ、今でも日本、デナーリス王国からそれらのものを輸入している国が大半なので、輸出できる国は限られていたけど。

 ホラール連邦国は関税をかけなかったが、輸送費が高くつく……デナーリス王国と俺が売る分は、『アイテムボックス』と『テレポテーション』で運ぶからそれもかからなかったけど……のと、まだ冒険者が育っていないホラール星では、ホラール人冒険者が手に入れた分だけでは到底需要を満たせなかった。

 そこで、地球人冒険者がホラール星のダンジョンで得た成果を高く買い取っても十分にペイできる状態であり、目聡い低レベル、中堅冒険者たちがホラール星に出稼ぎをするようになったのだ。

 決められた日数、ホラール人冒険者たちに指導するという条件はあったが、それを加味しても地球より稼げた。

 なんなら、冒険者特性がない冒険者でも、ホラール星なら地球の何倍も稼げる。 

 デナーリス王国が運行する宇宙船……俺がホラール星から購入したものだ……で三日間の宇宙旅行をしてから、ホラール星のダンジョンで稼ぐ冒険者が増えた。

 気候、食べ物は似ているし、言葉の問題もホラール星の翻訳機が高性能なので問題なかった。

 高レベル冒険者は、俺も含めてすぐにホラール共通語を覚えてしまったけど。  

 なお、自動学習機能つきのホラール連邦国製翻訳機は、現在地球への最大の輸出品となっている。


「それは知りませんでした。どおりで、このところ地球人冒険者が多いと思ったら……」


「地球の就職難と、現在のホラール通貨高が生んだ状況とも言えますけど」


「地球人は働き者ですね。ホラール人は、無職でも気にしないですからね」


 このまま科学技術だけが発展し続けた地球といった感じのホラール星では、とっくにロボットとAIができる仕事はそれらに任せるのが常識になっていた。

 就業率は25パーセントほどしかなく、それでもベーシックインカムや社会保障が充実しているので、割とみんな楽しそうに暮らしている。


「冒険者特性がないのに、ダンジョンに潜ろうとするホラール人はほとんどいませんよ」


 そのため、冒険者特性を持たない地球の冒険者たちが、こぞってホラール星にやって来て、ダンジョンに潜っている。

 このところ、地球のダンジョンでスライムを狩っても収入が落ちる一方だったのも大きいと思う。


「冒険者だと、ホラール連邦政府も労働ビザをすぐに出してくれるんですよ」


「ホラール人は、冒険者特性が見つかれば真面目にダンジョンに潜りますけど、冒険者特性がないのにダンジョンには潜りません。そういうところはドライなのかもしれませんね」


「冒険者特性がなくても、スライムは倒せるんだけどなぁ……」


 能力によって、働く、働かないがキッチリ分かれている社会がずっと続いていたから、冒険者特性がなければダンジョンに潜る能力がなく、無理に挑むとかえって社会に迷惑をかけてしまうかもしれない、という風に考えているのかも。


「ですが、地球人冒険者のおかげで、ホラール星は助かっていますよ」


 その代わり地球では、徐々に収入が減る冒険者特性がない冒険者の姿がダンジョンから減りつつあった。

 ホラール星に行く宇宙船の運賃は高いが、ホラール星のダンジョンでスライムを倒していればすぐに元が取れるからだ。


 地球のダンジョンの一階層、二階層から、冒険者特性がない冒険者の数が減り、地球側は困った……とはならず、古谷企画とイワキ工業がゴーレム軍団を運用して、スライム、ゴブリン以下低階層のモンスターを倒すようになった。

 フルヤ島のダンジョンでデータを取りながら試験していたものを実用化したものだ。

 これで、ダンジョンの低階層のモンスター討伐、素材と魔石、鉱石、ドロップアイテムの回収をゴーレムだけでできるようになった。

 効率よく低階層で活動するゴーレム軍団により、地球の冒険者特性を持たない冒険者の収入はさらに減り、それを我慢するか、ホラール星に出稼ぎに行くか、マジックアーマーを購入して中階層で活動するか……マジックアーマーを購入して、ホラール星のダンジョンに潜る冒険者が大半だけど。

 社会の効率化が進むと、仕事がなくなってしまう問題は人類のいまだ解決できない課題なのだろう。


「それも踏まえて、モモセさんの代わりにしっかりとやらせていただきます」


「頑張ってください」


「はい」


 こうして、ホラール人冒険者の指導と指導する冒険者の管理を地球人である里奈から、ホラール人であるルシアンさんに引き継いだ。


「里奈はよくやったと思うよ」


「一仕事したって感じです」


「モモセさんの功績も、ホラール人の記憶に大きく刻まれるでしょう」

 

 それからしばらくして、ホラール人冒険者の育成を担い、それを統率する重要な役割を地球人で長々独占せず、すぐにホラール人に戻した俺が、もの凄くホラール星で評価されるようになったのは、なんというか、そういう機会を狙って既得権益を得ようとするのは人間の業であり、それをやらなかった俺と里奈が特殊だったのかなって。


「(まあ実は、宇宙船を使った地球とホラール星との航路を独占してたり、今のところ『テレポテーション』でホラール星と地球を行き来できるのが俺だけだったりで、結果的に色々と独占しているけど)」


 とにかく、無事に里奈はホラール人冒険者の指導役を次の人に引き継ぐことに成功した。

 彼女がこの役を降りたのは、いつまでも地球人冒険者がホラール人冒険者の育成で指示する状態を脱することと、彼女が俺との結婚のために今の生活を変えるためでもあった。

 だが、俺みたいなただ冒険者として圧倒的に強かったからインフルエンサーになれた俺とは違って、真にカリスマを持つインフルエンサーでもある里奈が結婚するというのはなかなかに大変で、俺も彼女もしばらく色々な騒動に巻き込まれてしまうのであった。





「里奈さんが結婚!」


「それも、色魔古谷良二とだって!」


「そんなことがあっていいのか!」 


「桃瀬さん! 我々はいつか古谷良二に勝つべく、頑張ってきたじゃないですか!」


「それなのに、その古谷良二と結婚なんて、それはないですよ!」


 里奈がスタッフたちに結婚の話をしたら、彼らは大反対した。

 自分たちは、彼女が俺にインフルエンサーとしても冒険者としても勝利すべく、これまで懸命に頑張ってきた。

 それなのに、里奈が目標である俺と結婚するのは酷いじゃないかと。

 感情的には理解できるけど、別に彼女が俺に勝利することを強く望んでいたわけではなく、スタッフたちが勝手に盛り上がっていただけだし、彼らは里奈に雇われているスタッフにしかすぎない。

 『雇われているスタッフたちが、雇い主である里奈の人生を決めるのってどうなんだろう?』と、俺は思っていた。


「里奈が結婚するもしないも本人の自由だし、そうなったらそうなったで、里奈を上手くプロデュースして支えていくのがスタッフの仕事なんじゃないの?」


 現に、イザベラたちのスタッフたちだってそうしてる。

 俺と結婚する前の彼女たちは独身の美少女で、アイドル的な゙人気が高かった。

 スタッフたちはファンの傾向をしっかり分析して、今でも上手く彼女たちをプロデュースしている。

 たとえばイザベラたちが俺と結婚、出産すると、アイドル的な印象を薄めて奥さん、母親の面も上手く引き出して人気を維持していた。

 まさか一生アイドル売りなんてできないので、将来に備えて他の売り方を考えておく。

 芸能界のアイドルの話っぽい話だけど、里奈をインフルエンサーとして売り続けるのてあれば、そのくらい考えてプロデュースしてくれないと。


「桃瀬さんに、まだ結婚は早い!」


「そうかなぁ?」


「あなただけの問題ではないんだ! 人気者の桃瀬さんは、みんなのものでもある!」


「半ば公人みたいなものだから、桃瀬さんの人生には多少の制限があっても仕方がないんだ!」


「いくつかの広告案件とCMもあるけど、向こうは桃瀬さんが結婚、それも古谷良二だなんて想定外だろう! 違約金を支払うことになるかもしれないから、結婚はやめるべきだ!」


「……」


 前回の武藤議員もそうだけど、里奈はちょっと気が弱い。

 イザベラたちなら自分を最優先してスタッフの意見なんて受け入れない……というか、里奈が雇い主なのに、どうしてスタッフたちが偉そうなんだ?

 経営者でもないくせに。


「(里奈を世界一のインフルエンサーにする。やる気と情熱に溢れているように見えるけど、里奈の性格上そんなことは望んでいない。ただ、こいつらが勝手に盛り上がってるんだな。しかし、こいつらって……)」


 前に、イザベラが言っていたことを思い出した。

 

『我々のような貴族、金持ち、資本家、企業経営者にたまにいるのですが、雇った人たちに主導権を握られがちな人がいます。世間では、雇い主だから圧倒的に強者だと思われていますし、大半がそうでしょう。だから酷い使われ方をされないよう、労働法規が生まれたわけですが、たまに従業員や使用人、家臣たちに担ぎあげられて、言いなりになってしまう人がいるのです』


『貴族でもいるのか?』


『あら、日本にも昔いたじゃないですか。バカ殿様を操る悪家老が』


『時代劇で見たよ』


『そうなった時は、本人にクビは切れないので、代わりに誰か近くにいる人が手を貸す必要が……難しいですけど……』


 里奈のスタッフたちの理想は彼らの理想であって、里奈本人の理想ではない。

 さらに悪いことに、こいつらは自分たちは里奈のファンの代表になった気分でいるから、自分たちは絶対に正しいと思い込んでいた。


「(こういう連中を放置すると、ろくでもない結果になる)」


 里奈のため、俺が嫌われ者になってでも、こいつらをクビにする必要があるな。


「ああ、CMの件だけど、向こうに聞いたら特に問題はないそうだ。中には既婚者は……って案件があったけど、他のインフルエンサーを紹介しておいたから、違約金の問題は安心してくれ」


「「「「「えっ?」」」」」


 『えっ?』じゃないよ。

 お前ら、里奈のスタッフのくせに、どうしてこんなに仕事ができないんだ?


「(里奈がどういう過程でこいつらを雇ったのかは知らないけど、そもそも給料が高すぎるだろう)」


 里奈は稼いでいるから節税みたいな形になってるけど、彼らに払う給料があれば、一人優秀な人を雇って、あとはゴーレムで十分だ。

 彼女のスタッフたちは、人数の割にやっている仕事の量と質がイマイチだった。 


「あと、俺と里奈が結婚するとなると、動画もそれに合わせた企画になるし、色々と新しく案件も出てくる。だけど、あんたたちはそれを認められないんだろう? じゃあ、辞めてもらわないと」


「古谷良二! 俺たちをクビにするつもりか?」


「お前になんの権限があってそんなことを!」


「クビじゃなくて、新しいステップだよ。あんたたちは、アイドルインフルエンサーを育てたいんだろう?」


「そうだ」


「じゃあこれから結婚する里奈じゃなくて、新しい子を育てていかないと。あんたたちなら、きっとやれるさ」


 と、スタッフたちに話しかけながら『暗示』をかける。

 極めて弱いスキルだが、冒険者スキルを持たないスタッフたちには効果てきめんだな。


「……そうだな。我々は、桃瀬里奈をトップインフルエンサーにできなかった」


「だが、この世のどこかに、桃瀬里奈以上のダイヤの原石があるはずだ」


「我々はやるぞ!」


「「「「「おおっーーー!」」」」」


「これまでの功績に報いるため、退職金は出すから」


 上手く、里奈の会社のスタッフたちを辞めさせることができた。

 そして新しく里奈が持つ会社の社長を雇い、複数の高性能ゴーレムを導入してみたところ……。


「あれ? 良二さんとのコラボなんかもあって仕事が増え……てない。でも収入は増えている……」


「あいつらは、単価の安い仕事を取りすぎ!」


 スタッフたちは里奈を世界一のインフルエンサーにするといいつつ、単価の安い仕事を沢山取ってくることが多かった。

 冒険者として大成することを目指している里奈が、ダンジョンに潜る以外の仕事でバカみたいに忙しかった理由はこれだったのだ。


「(しかも、クライアントからリベートを取っていたんだよなぁ。悪質だろう)」


 その分は、あとで慰謝料と利子込みで密かに回収するから覚悟しておけよ。

 里奈の会社を辞めたスタッフたちは、新しい冒険者の女の子をスカウトし、インフルエンサーにしようと会社を作ってプロデュースを始めた。

 里奈を育てたスタッフということで可愛い子が複数集まり、出だしは好調らしいけど、そのうちボロが出るだろう。


「(あいつらがプロデュースしても、里奈は超一流になれたっていうか、むしろあいつらが足を引っ張っていたという現実)」


 これは、能力のない人を働かせるなって話に通じるというか。 

 いくら本人が働きたがっていても、能力がない人を働かせると、かえって生産性が落ちてしまうという話に繋がってしまう。

 ただ生産性が落ちるだけならまだいいけど、里奈をオーバーワークに追い込んで他人に害を与えているのが悪質だ。


「(新しいマネージャーとゴーレムたちが補佐する里奈は、前よりも休めて収入も上がったしな。結婚の件も……)」


 世の中には、結婚しようが、子供が生まれようが人気の落ちないインフルエンサーなんて山ほどいる。

 そういう風にプロデュースすればよかったのに、あのスタッフたちにその能力がなかったのだろう。


「(だから里奈に、『結婚するな!』としか言えないわけだ)」


 今のアイドル的な要素もある里奈しかプロデュースできないから、里奈の結婚に上から目線で反対した。

 クビを切って、新しいマネージャーにしたらすぐに問題は解決したけど。

 あとは……。


「税理士さんよ! あんた報酬をボリすぎ!」


「なんでネット証券なのに、手数料がこんなにバカ高いんだよ!」


「事務所の家賃、高すぎだろう! もっと安いところへ引っ越しだ!」


 どいつもこいつも、売れてお金のある里奈に集りやがって!

 俺と新しいマネージャーで、片っ端から里奈の会社の梃入れをした結果、これでだいぶ売り上げと利益が改善したはずた。

 

「良二さん、ありがとうございますぅーーー」


「はははっ、これも可愛い妻のためさ」


 それに、確かに里奈は見た目に反して少し気が弱いところがあるけど、それまで一人で頑張って、世界でも有数の冒険者にしてインフルエンサーになったのも事実だ。

 これからの里奈は、イザベラたちのように、冒険者としても、インフルエンサーとしても、妻としても、母親としても、上手くやっていけるはず。






「リナさん、ようこそ」


「やっばりリョウジ君と結婚しちゃったね」


「そんな゙予感はしていました」


「高レベル冒険者で、リョウジと結婚したい女の子は結構いるけど、リナは度胸座ってたから」


「リョウジさんに頼まれたからって、いきなりホラール星に飛んで冒険者の指導なんて、私たちでも少し躊躇しますから」


「これは……愛なのよ!」


「……デナーリスは、もっとそれっぽい感想はないのか?」


「だってリョウジ、デナーリス王国の女王がプレッシャーかけられないじゃない。リョウジの奥さんって独立採算性だから、頑張ってね」


「リナは稼いでいるから大丈夫だよ」


 そのために、会社の梃入れも手伝ったし。


「独立採算性ですか?」


「リョウジがその気になったら大勢の女性を養えるけど、キリがないから、リョウジの妻になれるのは、独自に生計を立てられる冒険者特性を持つ人だけってことね」


「リョウジさんに養ってもらおうなんて考えている、不届き者を排除するためです」


「幸い、今は男女平等な世の中だからね」


「女性も働いて、独自に生計を立てるのが主流ですから」


「私も普段はビルメスト王国の女王をしていますし、ダンジョンにも潜って、動画も撮影していますし」


「私もたまにダンジョンに潜っているわよ。これでも昔は、リョウジに戦い方やダンジョンについてレクチャーしたこともあるし、動画も撮影しているからね。なんか私たちとリナって、似た者同士って感じ」


「みなさん、よろしくお願いします」


 イザベラたちが、里奈を受け入れてくれてよかった。

 だけど、次もこうやって穏便に済むかわからないから、これ以上奥さんの数は増やさないように……努力しようと思う。





「なぜだぁーーー! 再生数が悪くないのは最初だけで、そのあとはダダ下がりじゃないか」


「おかしい! 第二の桃瀬里奈になれる、美少女冒険者を複数スカウトしたんだぞ!」


「我々が抜けた、桃瀬里奈のチャンネルは……どうして古谷良二との結婚を発表したのに、チャンネル登録者数と視聴回数が下がるどころか上がってんだよ!」


「こうなれば、次の美少女冒険者をスカウトするんだ!」


 元里奈のスタッフたちが、美少女冒険者を何人かスカウトして動画チャンネルを複数立ち上げたが、残念ながら視聴数が多かったのは最初だけで、すぐに稼げなくなって困窮するようになったらしい。


 やはり里奈の人気は里奈本人のおかげで、彼らは全然関係なかったんだな。

 そもそも、美少女なだけで弱い冒険者をアイドル売りするから……。

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