君は功を成せ
●君は功を成せ
伝馬町の牢屋敷。士分の入る牢を訪れると、
「君は功を成せばよい。僕は大事を成す!」
先客がいるらしい。強い言葉で一喝する
「
先客は
らしからぬ罵声の後、間近のわしが拾えるかどうかに声を潜めて義卿先生は言う。
そう、舞台袖で吐く息だけで会話する宝塚などの流儀でだ。
「
ご継嗣奥番頭殿(春風殿の父のこと)は四人の子宝に恵まれました。されど男は君
父母の一人息子たる君なれば、何よりも先ず義理を果たさねばなりません」
義卿先生の真意は、先の言葉と裏腹だった。
「君が
先生は、春風殿が
「僕は敢えて、見も知らぬ先祖の為にとは言わないのであります。
命を頂いた父母の為。君を救う為に死をも顧みなかった祖父母の為。君は
その言葉に、春風殿はすっかり黙り込んでしまった。
彼には色々と言いたいこともあったのであろう。しかし、義卿先生の諭しに、
「委細承知致しました」
と、同じく吐く息だけで答えた。
義卿先生は頷くと、切り紙に何やら認めて手渡し、
「これは後の為の君の証しであります」
と告げた後。再び声を荒げて言うには、
「
師の言葉が解らぬとあれば、今を限りに、君は弟子でも何でもありません。
君に同調する全ての塾生も同罪であります!」
と、牢屋敷の端まで響く大声で怒鳴り散らした。
「解りました! 僕
対して春風殿も、
「君と僕との道は違えられました。君
義卿先生はさらに激しい言葉で
こうしてこれだけ聞いた者の誰もが、義卿先生と春風殿は義絶したと思う程。二人の激しい口論は続いた。
そして遂に、このわしさえも眼中に無きが如くに
春風殿が去って後。わしは今まで彼が居た場所に進んで
「ご上意にございます。私は先生を説くように申し付けられました」
と用件を告げると、すっかり覚悟を決めておられる先生は、
「姫様。お役目ご苦労であります」
主君の
「
「いかにもそうであります。姫様は博学でありますな」
「ならば、私の言葉は届きますまい。しかしながらこれもお役目。
ゆっくりと無言で頷く義卿先生にわしは、
「とは言え。先ずは先生の存念を
と暗に、先生の意を必ず
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