忍び寄る魔の手8
●忍び寄る魔の手8
町方が
これについてご重役方は蜂の巣を突いた騒ぎになって居る模様。
何せ、町方が御家人と同等の者を勝手に捕縛しただけでも問題なのである。
まして捕縛されたものが、
それを有ろうことか、言い掛かりを付けて賊の一味の者として捕らまえたのである。
今頃は、だれが許可を下したか。と言う犯人探しに成っていることであろう。なぜならば、拷問するは彼らご重役の採決が必要であるからである。
彦根中将様を抜かせば渦中のご重役は四人。先任順に並べると、
――――
文長四年 五月 三河
文長六年十二月 陸奥
(注:天久七年の十一月二十七日より文長元年)
――――
少なくとも一人は責めを負わされることになるだろう。それが如何なるお沙汰なのかまでは判らない。
しかしわしが、見た目の若返りを実現する新しき
なぜならば、許可なく拷問を行ったと言う事は、お伊能殿を狙って拷問死させ、病死や自殺したと届けた可能性が高い。つまりそれは、町方の中に彦根中将のお命を狙う敵がいる。と言う話になるからだ。
現在わしが知る限りでは、大樹公様や大奥や彦根の町方に対する疑念は強い。
何せ、捕縛される前に大樹公様がお与えになられた
「人間。あまり
しんみりと宣振が言った。
身分が低ければ苦労するが、上には上なりの苦労がある。
「そうどすなぁ。政務がせわしなけったら、よう見んといてご
人の好いお春なんぞは気の毒がるが、
「一遍それで懲りたらええ。上の者は、下を数や文字としてしか見ちょらんことが多いきなぁ」
と、郷士生まれの宣振は醒めたもの。
大名の家老と言うどちらかと言うと上の立場の家に生まれた
「ま、それで下手をしたら切腹と言うのも酷だけれどね」
と、お
「はぁー。お偉りゃーさんは
良くて
軽くて辞任、悪ければ切腹させられるかもと、
彼は、助っ人をすると子分を引き連れて破軍神社に遣って来たのだ。
そんな同情気味の声もある一方で、
「
「捕縛の現場に居合わせておれば、捕り手を決して五体満足では帰さなんだ」
と憤る
「あれを使いたかったのじゃ……」
物騒にも「
わしの煽りも半分あるが、うちの連中は血の気が多い。
果ては町方相手に一合戦遣ると言う瓦版が出回って彦根屋敷から「ご加勢する」と赤備えが遣って来たり、御前出入りの喧嘩相手・
こうした騒ぎに、大家の
「はぅあ~! あわわわわわわわわっ!」
と意味不明な奇声を上げて
「ところで姫さん。羽で書いちゅーのは
宣振がわしの手元を覗き込んだ。
「これですか? 巨勢の秘術にございます」
母を巨勢の女とした事は良い隠れ蓑。紫染や橙染、そして
わしはにやりと不敵に笑った。
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