ベタ赤三等卒
●ベタ赤三等卒
「たったったっ……大変じゃ!」
まるで阿波踊りか泳ぐように手を振りながら飛び込んで来た
その様は、落語で言うなら下駄と草履を片方ずつ履いて来たような慌て振り。
「何事にございますか?」
「お
急ぎ
「
わしと条件を詰めた
「本日は、ご老公の使者として参った。これより郷士共へのお沙汰を申し渡す」
退助殿は書状を広げ読み上げる。
「郷士・中平
よって構いなし。
郷士・池田
粗忽にも、仇を
これに依り、両名切腹
あるいは父母の大事に孝行成す為罷り越すを除き、断じて山ノ内が
食邑とは領地の事であるから、土州からの追放刑だ。郷士側に対する正式の処分はほぼ、わしが求めた形と成った。
「
続けてわしに向けた要望が語られる。
「永追放の者、召し抱えるは勝手なり。されど草履取りより奉公させ、向こう三年士分に取り立てざるを望む」
まあそうだろうな。
「畏まりました。
現在、
彼が齢八つ(現在満六歳)にて
彼らは、幼少により
算術の神童である
因みに。御親兵に於いて二等卒とは訓練途中の新入りの位。半年の訓練を終え一人前の兵卒と認められると、自動的に一等卒へと昇進する。ここまでは小学生が上の学年に上がるが如き容易さなのである。
それなのに寅之進殿や喜久馬殿は、向こう三年見習い隊士の更に下に留め置かれるのだ。
このことを説明すると、忽ち当の寅之進殿・喜久馬殿達は情けない顔となり、仔犬が飼い主に縋るような目となった。
これには退助殿もわしの傍らの
「今の二人の心中思うたら、いっそ死んだ方がましかもしれん」
と退助殿が言い。
「尾巻殿は
そう、気の毒そうに乙女殿が漏らした。
「口惜しさから今死ねば、何の意味も持たぬ無駄死にとなりまする。
退助殿。土州侯様のお望み通りの話為れば是非も無し。両名には腹に飲み込んで貰わねばなりませぬ。
さもなくば、池田と宇賀の家がお取り潰しと成っても、否は唱えませぬぞ」
容赦せずにわしは告げた。古今より、上の命令に服せぬ兵隊程、始末に負えないものは無いからだ。
「さて。これから上士の側やき、
上士の体面を慮り、あくまでも遊学の体裁を取ってはいる。しかし、要は世間の荒波に揉まれて来い、と十分な金も持たせず、五年は帰って来るなと放り出すのである。
恨みに思う者が出ても不思議では無いのだ。
そこでわしは申し出た。
「少しお待ちくださいませ。今、両名にベタ赤の階級章を付けた
因みに前世に於いてベタ赤は、新兵が入営時に付ける階級章であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます