ハリスの疾風3
●ハリスの疾風3
「
わしは外交官の当然の常識として知って居なければならない、八島の常識から切り出した。
「例えば、薩摩は
例えば、長門は
水府も京も、直轄地を除く八島の地は、大名小名の領地にて、
「承知している」
「では『戦を覚悟しなければ口出し出来ぬ勢力』が犯人だとして、もし抵抗勢力の為にそれが敵わぬとなれば如何致します?
身を我らと入れ替える時、ハリス殿はそれさえ出来ぬと言う相手の要請を受ける訳には参りますまい。
それとも、よもやメリケン国は。人に頼んでおいて都合が悪く為れば掌返しで、ご自分の敵の肩を持つ、卑怯未練な男らしくないお国にございまするか?」
「そんなことは無い。要請した以上、敵を支持するなど有り得ない」
やはりこの時代も、メリケンはフェアと言う言葉に固執する。少なくとも建前上は。
そして、このフェアの一語だけで国益を無視して市民が物申す国でもある。ベトナム然り、アフガン然り。
これを孫達に言わせると、テレビ版だろうと映画版だろうとメリケン国はジャイアンなのだ。
「ハリス殿にお尋ねいたします。法とは厳正なものにて、貴賤国籍を問いませぬ。
わが国は斬首による死刑が一般的で、凶悪犯には
形式化しているとは申せ鋸引きもございますし、溺死させる
ふふふ。
わしは口の端を吊り上げて人の悪い笑みを作り、ハリス殿に確認した。
つまり、犯人に厳罰と言い張るならば、犯人がエゲレス国の者だろうとオロシャ国の者だろうと、フランス国の者だろうと。当然メリケン国の者であろうと容赦なく、外国人特権も無視して
「犯人の引き渡しを強く求める」
おや? 風向きが変わった。ガムを噛んで落ち着きを取り戻したハリス殿は、当然わしの笑みを深く読む。
なのでわしは更に深読みさせる。
「それでは抗った場合、生死問わずで確保致さねばなりません。確実に犯人だと断定する為には、大樹公家が戦を覚悟せねば仕置不能な者共であっても、手段を択ばず取り調べを行う事になりまするが、宜しいので?」
当然、匂わせているのは外国人への拷問だ。メリケン国の要請で遣らされているとなれば、厄介な事態と為るであろう。
わしとハリス殿はこのようなやり取りを繰り返し、遂には、
――――
メリケン国は大樹公直接統治外の諸勢力の所業に対して大樹公家の免責を認める。
この協定書はいつでも公開することが出来る。
――――
の一文のある協定書にサインをさせることが出来たのである。
ハリス殿はメリケン国総領事として、大樹公家に対する圧力が元でメリケン国が国際的に拙い立場に為る事を嫌ったのであった。
どさくさに、我が国が申請する特許の件は、エゲレスが承認する限り同等条件でメリケン国も同日扱いで自動承認する内容を盛り込めた事を記しておく必要があるだろう。
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