一大事
●一大事
血相を変えて飛び込んで来た
「姫様におかれましては、
と、呼ばわった。
「何が有りました!」
「先生が。先生がまた
ご府中の牢屋敷にある筈の
「先生は牢屋敷にて、隠れ
「まさか。改宗を……」
「いえ。唯、学問として
切支丹の男は、公使館・領事館にいる
昔と違って、今は
しかし義卿先生の、名にし負わばと発せらる猛は、我ら常人の考えの及ぶものではございませぬ。
過去に発せられた猛は、何れも一命を
拙く行かば、姫様やご継嗣様にまで累が及ぶ恐れもございます」
「ちょっ……待ちなさい。兄上様まで連座の恐れとは只事ではございませぬ」
縁座・連座の恐れありとは余程の事である。確か、八代
その数少ない例外の中は、平成の御代の言葉に直すならば、国家転覆を謀る内乱罪と外国勢力を引き込んで国を危うくする
「先生には前例がございます。黒船に乗り込んで
この時、死に値する罪ではございませぬが、師匠筋の
なんとも自分に厳しい人である。
黙って居ればバレなかったものを敢えて自首し。しかも受け付けた役人が見逃すどころか握り潰してくれようとしたのに、わざわざ刑に服す。
とは言え。それに巻き込まれた者は堪らない。と春輔殿は訴える。
「このままでは。先生は、死すとも自らの罪を明らかにするでありましょう」
説得してくれと言う事か? それとも縁座・連座に問われた時の備えをしておけと言う事か?
「義卿先生に、何ぞ死に当たる罪がございまするか?」
取り敢えず、聞かねば判断付かぬと声を潜めて問うわしに、
「お耳を……」
春輔殿は耳打ちした。
「それは……」
わしを絶句させた言の葉は、
――――
老中
――――
しかもなんと、堂々とそれを成す為に必要であると、正式に藩に大砲の使用許可を求めたのだ。
「当時を知る者ならば、
この事を自ら訴え出れば。
別して……。大樹公家・禁裏の畏き筋に
計画だけとは言え、武力行使を伴えば罪状は思想犯ではない。紛う事無き
まだ思想犯ならば蟄居閉門で済まされるかも知れないが、国事犯ともなれば命は無い。後はその死に臨んで武士として死ねるか、賊として殺されるかの違いだけである。
「判りました。参りましょう」
身支度をして、破軍神社の門を出た時。
「登茂恵様!
早籠を用意した使いの者と出くわした。
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