講場試衛
●
ご
町人達に貸し出され商店街として賑わうその一角。現在
その
「どうでぇ。中々のもんだろ。
うちの流儀は良く言やぁ実戦的、悪く言や勝ちゃあそれでいい泥
殆ど相打ちで敵を
見てくれの良さを気にする奴には、田舎剣術と馬鹿にされっがよ。
そんなお上品な剣術は、いざ斬り合いとなっちまったらうちの敵じゃねえ。
トシ殿はそう言うが。
「練兵館も一廉の剣士がおられるようですよ」
そう言って、交流試合に出張って来て居る連中に顔を向けた。
「
目が合ったのは
「女癖が悪いのか? はたまた女運が悪いのか? 何度もそ奴のせいで女共が不幸になって居るのであります。
百両の金が有れば旗本株が買えると騙されて、トシ様ご出世の銭を用意する為に自ら勝手に
そ奴は真に
「真ですか?」
わしが子供っぽく聞くとトシ殿は、酢を三升ほど飲まされたような顔をして、
「
と口を尖らせる。
「だいたいなぁ。そんな心配は
「ほう。僕の主家の姫を
やけに噛み付いて来る春風殿。
「おいおい」
トシ殿も少し険悪。
「
これは、トシ殿的にはわしを褒めているのだろうな? 恐らくは。
しかしはっきりと、練兵館より自分達は倍も優れていると言い切って挑発している。
しかしこれは……。
「仲の宜しい事で」
とわしが一言口にしただけで、
「「誰が!」」
二人は声を揃えた。
盛んに試合が出来るのは、統一ルールが存在するからである。
そして交流試合をしていると言う事は、彼我の実力が釣り合って初めて可能に成る事である。
一方的に稽古を付ける関係は、胸を貸すあるいは借りると言って交流試合とは口にしない。
要は、トシ殿も春風殿もこれが初対面などでは無く、以前から何度も統一ルールの下で竹刀を交えている間柄だと言う事だ。
三組目の五人同士の勝ち抜き戦、その初戦。
「テェイアー!」
胴への一突きに浮き上がった試衛先鋒の咽喉に、すっと入る一突き。
「突きあり一本!」
最初の強烈な一突きその物は体勢を崩す行いとなり、死に体となった咽喉に吸い込まれた突きが一本に数えられた。
「
試合後の一礼の後わしの方を向いた男の声は、
「狂介殿」
ご府中への道中わしの警護を務めてくれた、不器用で生真面目な男であった。
狂介殿は続く次鋒・中堅と三人抜きの活躍をしたが、ここまで一方的に押し込まれているのに、大将たるトシ殿は涼しい顔。
「
トシ殿は副将を送り出す。
「やったれ。役者の
若い剣士に面を付けて遣るトシ殿。
トシ殿の言う『みせつけ』の漢字が前後で異なる事は、そしてどんな文字を当てているのかは、誰の目にも明らかであった。
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