説くは大攘夷2
●説くは
宮中の方々は、意外と諸外国の情報を持っていた。
しかし耳で聞くのと目で見るのは大違いだ。
万が一、攘夷を成せとの
そうなったら
追い打ちするように、間を置いてわしは舌より
「お畏れながら侍従様。登茂恵は、こう愚考致しまする。
夷狄と八島を
「……それは大げさではないのか?」
具視卿は目を剥くが、
「これでも、かなり押えております」
「為す
と言う嘆きの声にわしは冷たく言葉を返す。
「はい。刀を持つ賊に、無手で戦っては為りませぬ。
具足を着込み槍持つ兵に、平服の
一町向こうの弓衆に、槍一筋で
十町先の鉄砲火砲と、弓矢で戦って勝てませぬ」
わしは子供でも解る道理を突き付けた。
時が水飴の様に伸びる憂いの時間。具視卿の絶望感がどん底に至る
「毒薬なれど、一つだけ妙薬がございます」
一筋の希望を投げ掛けると空気が変わる。
「登茂恵はん。そら、どうしたらよいのやろうか?」
縋る眼差しの具視卿に、わしは続ける。
「三十六計に
わしの話に興味を示したのか、
「ほう?」
と身を乗り出した。
「メリケンには、僅か三つで熊退治した武人の話がございます」
「
「いえ。ほんの二十年程前にメリケンに居た武人にございます。しかもどうやら作り話でも無き模様」
怪童丸とは何なのかは知らぬが、わしの申すはお伽噺では無い。
「お伽噺が如き
その利は力が要らぬ事。三つ子でも引き金を引けば弾は放て、弾に当たれば熊も討てます。鎮西為朝に三つ子が勝つ為には、優れた武器を持てば宜しいのでございます」
「成るほど。それが刀を借る言う事か」
わしの言わんとすることが、飲み込めて来たらしい。
「はい。夷狄の
ここまでは、
「八島が桃源の夢にありし三百年。夷狄は戦国の只中でございました。今もそれは変わっておりませぬ。
修羅の世で磨き抜かれた、夷狄の優れた武器や兵法を採り入れ。それを支える
八島を護るその為に、八島を夷狄の如き国に致さねば為らぬかもしれませぬ」
我が国が平和な時代を過ごして来た三百年。外国は戦国時代の最中だった。それは今も続いている。
我が国も外国の、戦争の中で磨き抜かれた優れた武器や戦い方を採り入れ。それを支える法律や社会制度も推し進めて行かなければ、未来永劫我が国は外国に勝てない。
我が国を護るためには、我が国を外国の様に変えて行かなければならないかもしれない。
そうわしは説く。
「まて、そら……」
流石に声を上げた具視卿。それを遮りわしは続ける。
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