一席持つ
●一席持つ
「なるほど。
やくざ者と軍次殿の諍いは、やくざ者からすれば賭場荒らし。軍次殿に言わせればイカサマ暴露であった。
それで暴れて、暴れるついでに信殿のお父上の負けを無かったことにしてしまったのだ。
「それで、意趣返しにございまするか?」
やくざ者達を睨み付けると。
「いや。そうじゃない。親分が腕と
困った顔をする軍次殿。
「何を遣ったのです?」
目を逸らした軍次殿に変わって、やくざ者の一人が、
「取り囲んだ
頭に血が上った若い
『坊主。狭い所で振り回し、客人衆に怪我させる気か?
それと、刀はもっと銭出して替え。安物買いは命を失うぞ』
と凄まれる始末。
気が付きゃ訳の分からんまま
「肩をですか」
「へい」
やくざ者の話にわしは、
「軍次殿は、随分とお優しいこと」
にこりと笑い澄まして言うと、軍次殿は苦笑い。
「いや。信殿に手出しさせぬ為には、怪我などさせて要らぬ恨みを買う事もございますまい。
叩き殺さば
刃に無手で応じて肩を外したのは、
なるほど。軍次殿なりに事を自重したようだ。
「そちらの都合は判った」
「では……」
期待と共に身を乗り出して来たやくざ者。
軍次殿の目配せに、わしは左手を開いてやくざ者に突き出し、その後を継ぐ。
「お待ちあれ。
人は、同時に二君に仕えること
軍次殿は今、
親分殿に面子があるように、上様……
万が
「なっ……」
思いもよらぬ大樹公の名に、思わずぎょっとするやくざ者達。
如何に親分殿が力を持って居ようとも、天下相手に喧嘩は売れぬ。
決して『矢でも
「なんとかならねぇか?」
「おっと、売るじゃあ買うぜ。白刃の雨だってね」
お国訛りで軽口を叩く軍次殿。
「ついでに言うじゃあ、
おまんらが借金のカタにしようと考えてたお
えっ。と呻く声を最後に続く沈黙。その中で、じりじりと焦げるような小一時間。
「聞きます。身内にしたいと言うのは、軍次殿と敵対したくないと言うのが本にございますね?」
「そんだ。遺恨を水に流し、争わねぇためだ」
「ならば!」
とわしは提案する。
「固めの杯では無く、手打ちの盃になさいませ。手打ちをするのに親分の面目上、銭が必要ならばこの私が
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