所有と経営1
●所有と経営1
「ご府中のお
職人達の了解が得られたわしは、入れ替わりに前に出た人々に声を掛けた。
わしが門前に呼び集めたのは職人達だけではない。呉服屋を始めとする商人達もだ。
渡した見本に商機を見出したお店は、拙くても決定権を与えられた番頭や大番頭。中には主人が直に遣って来ていた。中には建前上の決定者に据えられた若旦那が、業績作りのために番頭と来ている所も散見される。
後ろの方には、直接関わりないと思われるお
これが門前、市を成した理由の一つ。こう言った
「大坂は
この内
八島の絹は
それ故、紫の渇望は激しく。染めれば八島の絹が唐国の絹より高く売れるようになりましょう。
いいえ。何が何でも売らねばなりませぬ。売って売って売り抜いて、八島から流れ出る黄金を、取り戻さねばならないのです」
田沼時代に形成された信用貨幣制度。
しかしこれは、
ここで田沼が、当時の制度を根本から変えること無く
身も蓋も無い言い方をすれば、諸外国は無自覚に大量の贋金を持ち込んで、金本位制国家の金を買い占めたのであり、これが近年の経済危機に繋がっているのだ。
不当な商売で奪われた国富は、未来知識と言う不公正な手段で取り返しても一向に構うまい。
前世と同じタイムスケジュールであると仮定すると、モーヴもそろそろ開発されているから急がねばならぬ。
「この紫染・橙染の二つの染料を大量に生み出す為には、最初に夥しい銭を必要と致します。
また、僅かの染料を生み出す時には現れなかった問題も、多くを生み出し続けると為れば、必ずや表に出て来ることでしょう。
それは例えば。一升の瓶でどぶろくを
新しく農地を開墾致しましても、最初の一年は耕しさえ出来ませぬ。僅かな雑穀でも採れれば上首尾でありましょう。
開墾地は、年貢が取れるまで先ず三年は掛かります。土を作り
未だ誰も成し遂げたことのない、大いなる
その代わり事が成りし暁には、永く金を生み続ける事業にございまする」
わしは朗々と、銭儲けの話を始めた。
町方の連中が渋い顔や軽蔑の目でわしを見る。
構うまい。わしに言わせれば、お前達の方が『お潰し方』だ。
勿論、治安を預かる奉行所が金儲けに走ると、絶対碌な事には為ら無い事は重々承知しておる。
だから口に出す予定など有りはしないが。
「
柳屋の主人がわしに問うた。
「大小の、株と言う物を発行致します」
「特権を保証する株なら存じておりますが、大小の株とは
わしは八島に今ある概念を利用して、新しき仕組みを創り上げる。
こんな都合の良い物は、絶対に平成の代では成立しないのであるが、前例無き制度で、しかも政府が独裁権を握る今ならば可能だ。
勿論。出資者の利益は『事業の儲けの出る限り』保証するが。
「学のない
現在、御親兵の
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