埋めな捨てな
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「新しき
「まあまあ。そうおっしゃらんと、お
同時に、聡い
「
「うん!」
「きっとお城の姫様みたいに綺麗になるぞ。綺麗になってと、お婆様にお願いするのじゃ」
「ばんば! ばんば! きれーなって」
可愛い孫にせがまれて、姑殿は渋々の態で承知するが。
「はぁ~。ええ気持ちじゃのぉ」
蒸しタオルとお春の顔面マッサージに、思わず温泉に入った様な声を漏らす。
毛穴を開かせ、老廃物を揉みだす施術が始まると、さっきまでの渋々な姿は何処にも無い。
丁寧に下地を作り、地肌をしっとりとした感じに仕上げた後は、されるがままの姑殿。
「姑殿は、基黄の肌味にございますれば、お年を召しても可愛らしき
実際の化粧はお春に任せ、わしは何をしているのかを説明して行く。
「仕上がりました。鏡をご覧下さい」
姑殿の息が止まる。ここから先はいつか来た道。
「えぇ~~~~~っ!」
姑殿の悲鳴に、わしは勝利を確信した。
お春の施した化粧で、くすみや
「お義母様と呼ぶがは、心苦しゅうなった。お姉さまとお呼びせんと叱られそうや」
乙女殿が、見た目の若返りに狼狽している姑殿の心の内に打ち掛かった。
見え透いたお世辞だと撥ねつけようとしても、鏡に映るのは在りし日の姿。
お春の施した化粧により、目元の皺がカバーされた。これだけでも
そしてそんな姑殿に止めを刺したのが赦太郎殿。
「あーうえ(母上)! ばんばが! ばんばが、おねぇになった!」
嘘ではない。姑殿は還暦前後と伺うのに、鼻両脇から口角外側に現れる
「そ、そうやか?」
零れる笑みが、更に姑殿を若く見せた。
飾る程の語彙を持たぬ赦太郎殿。その回らぬ舌が紡ぎ出す言葉の一句一句から、驚きと嬉しさが弾けている。
それ故姑殿も、これは紛れも無く追従の影無き
「如何でございますか?」
「狐に包まれた。ええや、わしが狐になった気分や」
「全てお
今までお気付きに為られませんでしたが、お婆様の内には
嫁殿の
子は親の背を見て倣います故、嫁殿の
身にある物を
お婆様もそうお思いに為りませぬか?」
問いに、場の空気が姑殿の首を縦に振らせる。そこへわしは追撃を仕掛け、勝利の確定と戦果拡大を図った。
「
しかし嫁殿はあまり化粧を気にせぬお方。『わしは使わんきに』と仰られました。
されど支給を
宜しければお婆様がお使いになられては如何でございましょうか?」
「わしが使うてええのかにゃあ」
などと口にはしているが、声の調子からして極めて乗り気なのは間違いない。
「お使い下さいませ。嫁殿が御親兵の予備隊士を続ける限り、定期的に届けられて溜まってしまいます。
支給される化粧の品は、古く成れば台無しに為りまする。その前に使い切らねば勿体無うございます」
「そうじゃのぉ。勿体無い。使わんと勿体無いがよな。
要らん言うたせいで、こがにええ物が皆に配られ無うなったら、
わしはにっこりと、乙女殿に微笑んだ。
今回は
虎より強い
さて。姑殿の余りの化け振りに驚いたのは、何も当人ばかりではない。
酒の回った状態で、前世平成の化粧術の
「これが岡上の婆様やか?」
「横に並ぶと、孫が息子に見えるぜよ」
と何度も目を擦り、指で眉毛に唾を付ける者が続出。
やや遅れて、予め聞かされていなかった予備隊士採用の女性陣は、
「「「うわぁー!」」」
と、真昼間でも近所迷惑な程の大歓声を上げた。
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