望んだ褒美
●望んだ褒美
畏まって親父殿の命令を承ると、
「
親父殿は、内々に話があるらしい。
天守に上り人払いをする。
居るのは親父殿と
奥の親父殿の左右に、政殿と向かい合わせでわしは座る。
「大儀であった。
あれは政庁の都合で決めたことで、幸が望んだものでは無いからな。
別に望みを叶えよう」
「何事でも宜しいのですか?」
確認すると、
「良いと言いたいところだが、藩の財政は厳しい。子供でも、女は金が掛かることは知っておる。
だがな。亀之助のお陰で多少は持ち直したのだが、あまり無理は出来ぬのだ」
と釘を刺された。
「あ、いえ。舘とか呉服とか、そのような物ではございません。
この目で
つまり旅がしたいと申し出た。
都会へのあこがれは、何時の時代も変わらぬものだから、子供らしく夢を口に出してみる。
「うーむ。ご公儀のお膝元は入り鉄砲に出女と申してな、行きは良いが帰りがちと面倒だ。
行きたいのか?」
あれ? 言ってみるものだな。
通るのか? こんな願い。
「はい。父上のお許しが出るのでしたら」
あくまでもわしは、許されるのならばと言う態度を取る。
「うむ。内々に参るとしても道中の事だ。誰を供に参るのだ?」
「
「言っておくが、才覚を認めたとは言えあの者は他国人。忍び旅する姫を託す程の信用は無い。
誰ぞ然るべき家中の者を付けねば為らぬ。
すると政殿は、
「姫様に付けるとなると中々にでございますな。
しかしながら然るべき家の者は藩の要職にあり、その子弟は学びの最中か、ご
それさえ解決すれば、通りそうな成り行きだ。
ならばとわしは勝負に出る。
「世継ぎの兄上様の奥番頭・小左衛門が一子、
先頃、実家に顔を見せに戻ったと聞いております」
わしがこう言うと親父殿は、
「
と政殿に問い質した。
「はっ。何やら思う事があって、勝手に舞い戻った
政殿が言い難そうに口にすると、親父殿は口元を緩ませる。
「そうか。勝手にか。おおかた
あれ? と思いわしは聞く。
「父上。寅とは?」
「寅はうちの兵学師範である。
大樹公の腹心を
国を憂いての事だけに、余としては庇いたいのだが、頑固で中々言う事を聞かん。
とうとう庇いきれなくなったと言う事か。
「
和助が戻っておるのなら、師匠の影供をさせて遣りたいのだが」
「あくまでも、姫のお忍びの旅に同行させる。と言う名目でございますな?」
政殿の言葉に、親父殿は頷いた。
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