快男子
●
「お
腰を落とし突き出した左手を広げ、わしに仁義を切り始めた親分殿の兄弟分。
子分らしき、大小二人の男が左手の親指を握り込んで控えていた。
でっかい方は仏像のような優しい顔。身の丈六尺(180センチ)を超え、屈まねば鴨居に頭をぶつけそうな大男。
小さい方は険こそあるが眉秀でたる美丈夫で、身の丈は四尺八寸(145センチ)程と小柄であった。
「恐れ入ります。私はここの親分殿のお顔を立てて、そちら様の手打ちの儀に応じました者に過ぎませぬ。
ご丁寧なご挨拶を頂いても、猫に小判の諺通りにございます」
「おっと。そうだったな。これは俺が
俺は
「清水……長五郎……。あ! あの有名な
前世の事であるが、ラジオ浪曲で聞いた
次郎長殿は嬉しさにはしゃぐわしに、暫くぽかんとしていたが、やがて気を取り直すと、
「確かにそう呼ばれちゃいるが、堅気のあんたがなぜ知ってなさる」
と聞いて来た。その顔は先程より少しばかり綻んでいる所を見ると。満更悪い気はしていないらしい。
「こほん。こっちのでっきゃーのが、元は尾張の廻船問屋の
で、こっちの
映画の石松は片目を眼帯で覆っているが。目の前にいる石松の目は二つとも光を映しており、大政は武家の出では無く商人の息子だった。
「それでは、石松殿があの森の石松にございますか?」
嬉しそうに言うと、
「石松。女に名前を憶えられているなんて、お
と
「独眼竜との威名も聞き及びましたが」
わしが次郎長伝の知識を口にすると、
「ん。ああ。そりゃ豚松のことだら。
俺の子分で
次郎長殿が教えてくれた。
「そうでしたか。松繋がりでお話が混ざっていたのですね」
「それでも
「天下の次郎長一家を知らないのはもぐりにございます」
機嫌良く、鼻高々になって行く次郎長一家。
「ああ。そして政五郎殿が大政殿なのでございますね」
わしが憧れの目で見詰めると、
「大政?」
首を傾げた次郎長殿は、
「確かに大男だで、熊よりそっちの方がいい
おい熊。今から大政に
「大政……」
言われて大政殿も、満更ではない顔をしている。
あれ? 大政の呼び名が無かった? もしかして……。
「あのう。一家に政の字が着く方は他に……」
「
するとこの世界には小政が居ないことになる。やはり前世とは違う歴史なのだろうな。
後で思えば、舞い上がってしまったわしは、色々仕出かしてしまったのかも知れない。
「それにしても。なんでぇ。登茂恵様も
役者じゃねぇのが変わってるがよ」
親分殿はケラケラと笑った。
「ほいで、今度の意趣
一同が打ち解けた後。親分殿の一声で、話は襲撃者への対応に移った。
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