申ねて命ず
●
本陣である
一同は額の縦皺を深くして情報収集に努めていた。
流言を整理すると次のようになる。
――――
・郷士側
女を手籠めにしようとした上士を止めようと土下座する
・上士側
郷士に襲われた上士達が行方知れずになった。今頃どこの土の下だか。
――――
どこをどうしたらこうなるのか? 伝言ゲームは、事実とは似ても似つかぬ話へと変貌させた。
入って来た話を総合すると。郷士には上士による無体な事件と伝わり、上士には郷士に因る上士傷害事件として伝わって、両者の偶発的な刃傷を発生させてしまったのだ。
「そして遂には、激高した忠次郎の身内が、怒りに任せて刃傷に及んだのやか」
山田殿はがっくりと
「そっちも幸い、一命は取り留めたみたいだけど。
今、忠次郎殿の実兄・
元から火種が有ったのだろう。しかし、余りにも早過ぎる事態の展開に、わしは作為的なものを感じずには居られない。
下手をすると上士と郷士が衝突し、
「参りましょう。我ら
奈津殿。土州ご政庁に伝令」
「はっ!」
「
「復唱! 土州騒乱を防ぐため、御親兵は直ちに出動。郷士と上士の間に入り、衝突を阻止せんとす」
「行け!」
「はっ!」
馬に乗り駆けだす奈津殿。上官であるわしの命令は直ちに実行された。
わしは、手傷を癒すために眠る忠次郎殿の介護と、強姦未遂かつ傷害現行犯に縄目の恥を与えぬ為に残す一部の兵を残して出動させる。
タタタン タタタン タタタタタッ タタタン タタタン タタタタタッ
行進の太鼓が打ち鳴らされた。太鼓に合わせ歩調を整え、歩兵二個小隊が池田の家へと進軍する。
この他、
因みに今回、騎兵は伝令を専らとして戦力には数えない事にした。
このような火器の充実した部隊は、僅か二個小隊とは言え侮り難い。否、精々が刀槍と思われる郷士や上士相手には過剰な戦力と成ろう。しかし圧倒的な武力を持ち込まねば、血を見ずして衝突を止める事など出来ないのだ。
ピィピピ ピピィピ ピッピッピッピッ ピィピピ ピピィピピッ ピィーーー!
「何事っ……なんやわれはぁっ!」
行き成り出現したわしらを見て、池田家を取り囲んでいる上士の一人が声を上げた。
何せわしらは、
戸惑う彼らにわしは告げた。極めて上から目線の上位者として。
「我らは
彼の独眼竜正宗公が母・
辺りのざわつきは波紋のように広がった。
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