親分の報告
●親分の報告
「山本様。
二条新地の親分は、庭の玉石に平伏して呼ばわった。
すると
「どうでした? 賊の話は集まったが?」
と、中間に掛ける言葉としては至極丁寧にもお国言葉で下問する。
「水戸訛りの侍ど薩摩言葉の侍が加わってるごどまでは突ぎ止めだ」
親分も同じ言葉で報告する。
「水戸が。はぁ~。御三家なのに悩ましいごどだ」
溜息と共に、藩重役のぼやきが入った。
「七条新地の女郎衆の報せによるど。勤皇を名乗る賊は、いづも天狗の面を付げだ
「鬼一……。
九郎判官義経公の師を
「へい。
「それは
彼らのお陰でどらほどお家が助げられだが」
含みを持たせる藩重役。
親分は暫く考えて、
「町家にお侍を寄越すわげにはいがねぇがら、わしが手配してよろしいが」
と確認する。
「任せる。大商いでねぇが、藩士さ掛売をしてぐれる大事な商家だ」
「畏まった」
親分の返事に藩重役は、
「仙吉。殿よりこれを下げ
そう言って、ぱっと広げた一
白地に墨で中央に、丸に三つ葉
「こだ下郎の身さ余るお心遣い、痛み入り申し上げます」
愛用の品と聞き、平伏したままの額を地面に擦り付けるように礼を言う親分。
親分は相手が立ち去るのを待って、漸く
暫くして戻って来た親分は、人の良い笑顔を向けて
「お嬢はんは勤皇を名乗る賊の事を知りたい言うとったけど、どないすん?
隠しとっても判る。どこのご家中か知らへんが、
と振って来た。
そう来たか。別式とは奥回りに仕え警護の任を担い。いざ鎌倉と言う時に武器を執って戦う女武芸者の謂いである。
取られ方としては悪くない。
「わしん見た所、歳に似合わへん腕と度胸や」
「武士の娘ですから」
「お嬢はんみたいな
ほんま、お侍言うのんはしんどいものやな」
「そうでございますか?」
「ああ。よもや伊達や酔狂で、殺しの
苦笑いするしかない。
それにしても。正式に武芸を習ったことも無い筈なのに。
わしが躾刀で使おうとした銃剣術の手を、一目で殺しの術と看破するのは大した男だ。
「今のお嬢はんにこんなん言うのんはどうか思うが、後は肝を練るだけや。
一遍捕り物を経験して置くのもええで。今夜らしいが、来るか?」
親分は、十中八九は受けるだろうと言う感じでわしに聞いた。
「捕り物か。それは面白うございますね」
当然わしが
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