御前出入り2

●御前出入り2


 隊長は主だった者のみ記すと、彼我の戦力はこうである。


・赤軍 大将・祐天ゆうてん 兵294

――――

 長脇差    280

 槍        3

 半弓      10

――――


・白軍 大将・登茂恵ともえ 兵150

――――

 歩兵隊 中隊長:登茂恵

   狙撃班    3 隊長:あき クロスボゥ使用

   直隷分隊  10 隊長:登茂恵

   第一小隊  25 隊長:某

   第二小隊  25 隊長:某

   第三小隊  25 隊長:某

   抜刀隊   10 隊長:宣振まさのぶ


 騎兵隊

   騎兵分隊   2 隊長:奈津なつ 馬匹3


  工兵隊 小隊長:軍次ぐんじ

   円匙分隊  20 隊長:軍次

   鶴嘴分隊  10 隊長:三の字


  砲兵隊(施設専用隊として、直接戦闘は行わない)

   施設分隊  10 隊長:ふゆ

――――


 赤軍は人数こそ白軍の倍近くあるが、いわば豪傑の群れ。

 対して白軍は、小なりといえども軍隊としての編制が成されていた。



「「「「わぁぁぁぁぁ!」」」」

 鯨波ときの声を上げて、一斉に川へ向かって吶喊とっかんして来る赤軍に対し、川向うで待ち受ける白軍。


 前衛は勿論歩兵隊。三小隊の後方に、予備隊である直隷分隊を引き連れた登茂恵が陣取る。

 その左に工兵隊が配され、目下盛んに穴掘り作業。騎兵隊は左翼後方で待機して施設隊は白軍の最右翼の高台に。

 歩兵隊と赤軍の衝突が始まった頃。歩兵小隊のと言う幔幕に隠れ、宣振率いる抜刀隊は右翼の繁みに姿を消した。



 赤軍は強い。一個の兵士としては強い。仮令たとえ武術は知らずとも、恵まれた膂力や足腰の強さを武器に激しい打ち込みを仕掛けて来る。

 但し、あくまでも個人の力。武術としての銃剣術を磨き、隊として敵に当り、もしも乱戦に持ち込まれたとしてもツーマンセルの連携を取って闘う訓練を受けているのだ。

 目下の所、小隊長を含む歩兵三小隊七十八名で突撃して来た二百余を凌いでいる。


「まるで古代ローマとケルト人の戦いですね」

 全力を以て、個人の武勇頼りで押し寄せて来るケルト人。それに対して流れ作業のように戦うローマ人。

 そんな戦いが展開されている。


「敵はいつまでも最初の勢いを保てません。凌げば自ずと我らの勝ちです!」

 げきを飛ばし味方を鼓舞する。しかしやっぱり多勢に無勢。次第に押されて来た。

 それでも訓練の成果が発揮できており、こちらの被害は酷く少ない。


「報告! 祐天ゆうてん動かず!」

 後方のやや高台から望遠鏡を使って戦況を観察している、施設隊のふゆ殿から報告が来る。


 潮だな。


 ピィ、ピピピッ、ピピピピピィーーー! ピィ、ピピピッ、ピピピピピィーーー!


 わしは笛を吹き鳴らした。歩兵小隊の左翼から分隊戦力を引き抜いて、右翼の応援に回す。

 当然薄くなる左翼。それを右斜めに後退して凌がせる。


「良し。塹壕が機能している」

 飛び道具の少ない敵だからこそ、さほど深くない塹壕が守りの援けとなっているのだ。

 白兵戦に加わった工兵隊と言う新手に、こちらは上手く押し返している。


 いい感じに出来ている。まあこんな芸当は、今の規模だからこそ可能な話なのだが。

 ともあれ左翼に穴が出来たように見えたこの状況。


「流石に見逃がしませんね」

 嵩に掛かって左翼に敵が雪崩込んで来た。祐天の判断が早い。

 これでは今少し時間を稼がねばならないだろう。


 だからわしは、

「予備隊続けぇ!」

 と太刀を執り、群がる敵の中に飛び込んで行った。

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