四つの瀬戸
●四つの
細々とした後の事を、
「急ぎ
今回は幸いわしらが居合わせたおかげで、応戦に加わった書記官殿1名の浅手で終わった。
しかし、一つ間違えれば死者が出てもおかしくはなかった。とオールコック殿は言う。
「いざと言う時。言葉が通じぬ護衛では心許無い。それに八島の護衛は私達の身を案ずる余り、
仕方ない。八島では、敵の
「しかし、国内に外国の軍を置くのは、些か拙うございます。
私は取り決めの権を持ちませぬ故、あくまでも私見に過ぎませぬが、若しも行うならば……」
わしはここで言葉を区切り、翻訳された言葉がオールコック殿に伝わるまで待つ。
そして、わしなりのプランを提示した。
「長崎の出島の如く、外国人にとっては租界で八島の者から見ればゲットーの形を取らねば成りませぬ。
互いに不幸な事故を避けるために」
「互いに
「はい。勿論それはエゲレスの費用で行う事になるかと」
「当面はそれで構わぬと思います。しかし、この地にエゲレス艦隊を置くことは、貴国の為にもなる事なのですよ」
オールコック殿はエゲレスの外交官だ。故に本国エゲレスの国益を第一とする。
究極的には東洋の小さな島国など、聖書ヨナ書の唐胡麻のように一夜にして滅んでも構わないのだ。
しかし、八島がエゲレスにとって利用価値があるのならば話は別である。
「これをご覧下さい」
オールコック殿は地図を広げた。些か精度を欠くが、前世のわしが見知った地形が目の前にある。
これはメルカトル図法で描かれた、北はカムチャッカ、南はフィリピンに到る東洋の地図だ。
「シーボルト博士が持ち帰った地図により、八島の地形は精密に描かれております」
そう断ったオールコック殿は、地図を回して大陸側をわしの手前に持って来た。
「この蝦夷地の北の端から、蝦夷地。そして八島から八島の薩摩の植民地・大琉球。
そして土地こそ大きいが清国より化外の地と呼ばれている小琉球。
これらを結ぶ列島の線が、八島に特殊な立場を与えています。
これらを大陸側から見ると、大洋への出口を塞ぐ堤にて、大陸側の国が海洋を目出す為には、
必ず八島と関わって行かねばならないのです。
もしこの四か所。
また、ここ
八島と仲良くするか、さもなくば土地を奪って我がものとしない限り。自国の船を安全に行き来することが適わないことでしょう。
殊に、馬関瀬戸の
砲台を築けば八島の大砲でも楽々届く上、両岸から八島の弓で火矢を遠矢で射掛ければ確実に到達する距離にあり、八島と交易する国々にとって、航海短縮と安全を担保する為には捨て置けぬ場所です。
これはトモエにとっても無関係な話では無いと思います」
オールコック殿は口の端を吊り上げた。どうやら、今世のわしの出自を調べ上げているようだ。
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