#???? Alternative World Online
「こんにちはー」
「ミドリはんやっは〜」
〈――!〉
「くかぁ……」
クーシルでの大立ち回りからかれこれ1年ちょい経った。今日は大学の三限が休講だったため平日から早めにログインできている。出迎えてくれたのはブラッシング中のコガネさん、ブラッシングされ中のライラさん、ドカ食い気絶中っぽいウイスタリアさんだ。
あれから私たちは再興された一番最初の街に拠点を設けた。目的は邪神狩りだがそろそろ居を構えようと新居を購入したのである。邪神狩りにはマナさんとシンクロした状態で転移すればいいので交通の便も悪くない。
「パナセアさんとサイレンさんは……この時間だと大学ですかね」
「せやなぁ。先生と生徒の禁断の恋ってやつやなー」
「漫画でも大学でそのシチュエーションはなかなか無さそうですけどね」
「そういやサイレンはんがこないだ“今度プロボーズする”て言うとったで」
「はやっ!? まあ、あんまりもたもたしてるとパナセアさんの適齢期がね……」
「せやんなぁ……」
この話はやめよう。知られたらパナセアさんにガチギレされる。
「ゴホンッ、アディさんは今日もソフィさんのとこへ?」
「せやでー。〘ツィファー〙撤廃で忙しいみたいやな」
親子仲がよろしいならよし。
それで肝心の――
「マナさんとファユちゃん、ついでにニャルさんはもう先に
「んや、さっきリンはんが“マスコットになって〜”て冒険者ギルドに連れてったで」
同じ講義だったから一緒に帰ったんだけどログインするの早いな。仕方ない、迎えに行くとしよう。
「じゃあちょっと行ってきますね」
「あいあい、いってらー」
私はウイスタリアさんの寝顔をスクショでおさめてから外に出た。
「あ、迷子に――ま、なんとかなるやろ」
出る時にコガネさんが何か言っていたような気がしたが、聞き取れなかった。こっちに来てまで言うことではないようなので別に大丈夫だろう。
そのまま冒険者ギルドまで向かう。
「…………迷子になりましたね」
何度も行ってるから平気だと思ったが、いつも誰かしらと一緒だったんだ。一人でたどり着けるわけがない。どうしよう――
「――見て見て、見習い天使だって! これ絶対レアな種族じゃん!」
「いいなぁ……だがしかーし! こちらとて防人だよ! レア職業!」
明らかに初心者装備な女の子二人組が目に入った。そういえば今日は新規さん参入の日か。
初々しくてかわいい。
天使は私以来の2番目だろうか。
そしてもう片方の子が自慢していた職業、あれはマナさんがもういっそのことと全世界の人々に配ってデフォルトで貰えることになったものだ。
ちょうど初ログインして友人と待ち合わせしたところだろうか。私も初心者のふりをすればそこら辺のプレイヤーに冒険者ギルドまで案内してくれたりするかな……?
いや、既存プレイヤーには結構顔が割れてるし――
「それはさておき、待ってる間に冒険者ギルドへの行き方を親切なプレイヤーの人に教えてもらったから早く行こ!」
「お、助かりますなー。さっすが我が永遠の親友、ミラさま〜!」
初心者のフリして混ざりに行こうと思ったが、せっかくの友人との時間を邪魔しても悪いので後ろから
幸い【
それから仲良し二人組の雑談を後方先輩面ストーカーとして楽しみながらついて行った。
しばらく歩くとよく見た冒険者ギルドの建物が見えてきた。
人混みに紛れるようにそっと二人組のもとから離れる――直前に空間の歪みを感じ取った。気配的にネアさん達が戦ってる邪神が逃げてきたとかだろう。転移先を神能でずらして私の手元に差し替えた。
出てきたSAN値チェックが入りそうな流体を握り潰す。感知されない効果と瞬殺でこの地の危機は誰にも気付かれていないはず。ネアさん達に連絡しておこう。
「――ん?」
「ミラどしたん?」
「いや、なんか私の【
「ユニークスキル!? めっちゃいいじゃん! どういう効果?」
「よく分からないんだけど異常を知らせてくれるみたい」
「異常ねぇ……」
私は感知されないのできっと邪神の方にその判定がいったのだろう。連絡しつつそう考えて彼女達のもとを離れた。
しかし、ふむ――天使か。面白そうだし彼女に祝福をプレゼントしておく。
「え、なんか文字化けで読めない祝福のスキルが手に入っちゃった」
「うえええ!? 急に!? 今!?」
これでも天使の皮を被った邪神だからね。驚いてくれてなにより。
それよりマナさんとファユちゃんは――いた。謎のマスコットの着ぐるみを着て新規のプレイヤーと握手している。
私も並んで握手してもらおうかとも思ったが、よく考えたら常日頃ベタベタしてるしわざわざ並ぶ必要も無いのに気付いた。
「子供もいるようですし少し待ちましょうかねー」
〈はぁ……遅いよ。おかげでもみくちゃにされたんだけど〉
かわいいと弄ばれていたニャルさんが分身してこちらに退避してきた。
一緒に
〈……嬉しそうだけど何かいいことでもあった?〉
「そりゃあ2人の頑張る姿が見れますからね」
〈それ以外にも何かあったでしょ〉
「お、よく分かりましたね。また新しい異界人が増えて嬉しいんですよ」
〈ふーん? でも弱い人間が増えても君たちには関係ないんじゃない?〉
そりゃあレベル差もあるしそう簡単に関係ができるとは思っていない。
しかし、しかしだ。
「ニャルさん、この狭い世界では色んな人の物語が交差するものなんですよ。力とかそういうのは関係ありません。想い一つで関わってきます」
〈ほほーう〉
「それに――開かれた
この異世界、Alternative World Onlineにはチュートリアルもクエストもストーリーも存在しない完全に自由な場所だ。
これからも、私たちは様々な試練を共に乗り越え、色んな出会いや別れを繰り返すのだろう。
――きっと、誰にも予測できない私たちの冒険は続く。何だか「俺たちの冒険はこれからだ!」と叫びたくなったがちょっと違う気がしたので抑えて、こちらに駆け寄ってくるマナさんとファユちゃんを受け止めた。変な疲労でヘトヘトらしい。
「うん、やっぱり冒険だけじゃなくてこういう日常もずっと続いて欲しいですね」
「急にどうしたっすか?」
「ママ、突拍子のなさはいつも通りなのですよ」
〈それには僕も同意ー〉
「気にしないでください。そういえばニャルさん、タコ系の邪神って居ますよね?」
〈いくつか心当たりはあるよー〉
「よし、では今日はタコパにしましょう! 2人が頑張って働いたご褒美です!」
「「おー!!」」
〈……僕も働いたんだけど〉
器具はパナセアさんに頼めばなんとかなるし、私たちは食材の準備をしよう。
「じゃ、行きましょうか」
「っすね」
「なのです!」
〈スルーかい。まあいいけどさ〉
私とマナさんの間にファユちゃんといった構図で手を繋ぎ、私の頭にニャルさんを乗せてタコ狩りに出発した。
私には仲間が居る。
絶対的な迷子であろうと共に歩ける人たちがいれば、きっともう迷うことなどないのだ――――
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
ご愛読ありがとうございました!
ぜひぜひ、星で評価してくださると幸いです!
感想やレビューの方も気が向いたらよろしくです!
以下は宣伝と余談です。
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《宣伝》
このあとがきを書いているのは一か月ほど前なのですが、新作を書いていると思うので私のプロフィールからでもいいので是非読んでみてください。軽い紹介だけしておきます。
☆タイトル:『正統派女装メイドが“Original Trajectory Online”で理想のお嬢様を育成するようです!』
⇒タイトルの通りVRMMORPGものです。本作とは違ってゲーム要素満載でシリアス少なめの予定です。ゲーム初心者の主人公なので丁寧な解説を入れます。突飛でロマン満載のゲーム攻略な作品ですのでVRMMO好きな方は特におすすめの一品(?)
☆タイトル:『神算鬼謀は中二色〈000.ダンジョンが現れたのでやりたいことリスト100選を成し遂げる。手段も犠牲も問わない〉』
⇒個人的に最近ハマってる現代ファンタジーものです。中二病をこじらせた主人公がラスボスやラノベ主人公、勇者の師匠ポジションを演じて世界を振り回すマッチポンプ物語。ぶっとんだものが好きな方には特におすすめ。男主人公でハーレム要素があるといえばあるので苦手な人以外はぜひ。
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《余談》
当初の予定ではαテストのストーリーも書こうと思っていたのですが本作に盛り込んだのでいっかなと思いAWOシリーズとしてはこれで終わりです。
一応クロやネアが活躍する物語もあるのでおすすめしたいのですが、ぶっちゃけそちらはじめての作品なので文章が拙すぎて読んでいられません。面倒なので書き直しませんけどね。気が向いたらそちらもぜひ。これ宣伝ではと思ったあなた、その通りです。つい勢いで。
あと、どうせ最後だからの精神でぶっちゃけますが、我ながらうちのミドリは【天眼】や【不退転の覚悟】でイラスト・映像映えしそうなので書籍化してほしいと思っています。人を選ぶ作品だという自覚はありますのであまり強くは言えませんが! じゃんじゃん広めてくれると作者は狂喜乱舞します(強)!
追伸――誰かフルダイブ技術と本当の意味でのAIを作ってくれ。
【Alternative World Online】翠の天使、VR世界で徘徊中【ミドリ】 弍射 都 @yomusenn210
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