#15 新武器GETです
路地裏から表通りに向かっている。
迷子になると期待している人も居るかもしれないが、
「来た道を戻ればいいだけですから、道案内は要りませんよ」
[イソギンチャク::フラグかな]
[カレン::大丈夫?]
[あ::結構話しながらブラブラしてたけど大丈夫?]
[階段::フラグ立ちましたね]
「今日で迷子キャラを
そもそも、構造上直進してれば表通りには着くのだから、迷子も何もない。
迷いの無い足取りで、足早に進む。
前方に明るい場所が見える。
「ほら、着きましたよ…………何コレ?」
一応表通りに出れはしたけど、目の前に広がるのは理解の及ばない光景。
「お城が、ひっくり返ってますね?」
自分でも何を言ってるのか分からないけど、本当にそのままだ。
ファンタジーのド定番の王城が、お椀をひっくり返したように綺麗に逆さまになっている。
解体作業をしているのか、足場がそれを囲うように作られている。
「えぇ…………?」
「おや、これは初めて見たのかい?」
近くに居たご老人が声を掛けてくる。
「そうです。これは何があったんですか?」
「ほんの少し前、この王都で革命が起こってのー。その時城がああなってのー。バッチリこの目で見たわい。ホッホッホ!」
「革命、ですか」
想像できるのは、被支配階級によるもの。まあ、王国の象徴である王城がこれだから、革命は成功したのだろう。
「でも、今も
「革命自体が少数精鋭で、水面下で行われたせいもあって、統率が乱れるのを恐れたんじゃろうな。たった一人の王女を残して、その方を女王と擁立した、傀儡政権じゃよ」
「詳しいようですが、関係者ですか?」
「まあ、そんなところかのー。傀儡政権とはいえ、民衆の生活は向上しているから問題は無いじゃろう。まあ、不満が全く無いわけではないがの」
「それはどんな時代、どんな統率者でもそうでしょうね」
結果として良い方向へ向かった革命なら良し。
「あの――え?」
「む? ああ、この破壊痕が気になるか」
「まあ、はい」
一体どれほどの力があればこんなことが出来るのか、地面が相当深くまで抉れている。
破壊痕は王城の近くから、王都の壁を越えて続いている。
「これも革命の時にできた傷跡じゃよ。仮の壁を作り、今も尚埋める作業が続いているがの」
「誰がこんな…………」
「さぁの。もう過ぎたことじゃし、気にしても仕方ない」
「それもそうですね」
ただ、これを
「あ、この辺のリスポーン地点って知りませんか?」
「? りすぽ?」
「あ、えーと、どういうのでしょう」
チャット欄をチラ見。
[味噌煮込みうどん::こわ]
[死::死の香りがする……]
[蜂蜜過激派切り込み隊長::リス地は変な石で伝わると思う]
[唐揚げ::伝わらないんか]
[壁::このおじいちゃん、推せる(確信)]
変な石ね。そんなので伝わる?
「変な石です」
「ああ、それならこの道沿いに行って四つ目の大通りを右に行けばよいぞ」
ご親切に地図まで出してくれた。
王都全体が正方形のような形で、いくつかの大通りと細かい道でできているみたい。
南西から北西までの直線が、私が
よく呑気にそこを歩けたねと自分を殴りたくなる。
「東付近にあるんですか」
「丁度冒険者ギルドの向かいにあるのー」
なんて便利な!
「色々ありがとうございました」
「いやいや、王都を存分に楽しめるといいのー」
「楽しみます」
ご老人と別れ、東へ向かう――
「そうだ、一つ聞きたいことがあるんじゃ」
「はい?」
呼び止められた。こんなに色々教えてくれたのだし、分かることなら答えたい。
「完璧な生物というのは、何だと思う?」
「んー、神様とかでしょうか?」
やはり年老いると考えることが増えて、哲学的な道へ走るのかな。世の哲学者たちもみんなそんな感じだからね。偏見だけど。
「どうすれば神になれると思う?」
「また、難しいですね。善行を積み重ねればいいんじゃないですかね?」
「善行で神になれると?」
この人は神様になりたいのかな?
「死後なれているかもしれませんけど、まあ判断は出来ませんね。やはりレベルアップとかでしょうか」
ゲームだし。
「レベルか。犠牲の上に成り立つ、と」
「何をするにも犠牲はつきものだと思いますからねー」
この人が何か哲学の本とか出したら、私の事も書かれるのかな。旅人の答えは~とか。
「答えてくれてありがたい。またのー」
「ええ。またどこかで」
満足した様子の老人を背に、今度こそ東へ向かう。
「そういえば、装備の更新をしたいですね」
ずっと初心者装備のまま、武器は失ってしまったし。コートは貰い物でボロボロだし。
[枝豆::確かにずっとそれだもんね]
[茶茶茶::それなら、是非王都右上端の“たんや”へお越しください!!]
[カレン::ドレスとか似合いそう]
たんや? 焼肉屋かな? まあいいや。
右上端、つまり北東付近なら通れば気付くからね。
「三つ目〜」
次の大通りの交差点を右。これはもう迷子キャラの汚名返上かな。
「ここを右ですね」
東端の大通り、到着。あとは直進してればリスポーン地点と冒険者ギルドがある。かなり分かりやすい。
最初の町なんて、町が円形だったから分かりにくかったからねー。
「あ、ここがさっき書かれてた、たんやですか」
ちゃんと大きく書いてある。
入口の横に乱雑に武器が箱に入れられている。
中を軽く覗くが、中も武器で溢れかえっている。
見た目の悪さの割に、客はかなりいる。
適当に並べられた武器の山から漁るように、見比べたりしている。
小さい時行った、買い取りのお店みたいな雰囲気だ。
「ちょっと入ってみますね」
中に入ると、モワッとした熱気が全身を襲う。
かなり近くで武器を作ってそう。
「いらっしゃい! お待ちしてました!」
元気の良い女の子が、私の方へ手を振ってくる。待たせるようなことしてないと思うんだけど……?
「何ですか?」
「わあ、本物だぁ……」
私の配信を見たことがある様子。
それはともかく、この子を近くで見ると、耳の先が若干尖っていて、体型が失礼ながら丸っこい。
これは、ゲームでよくある――
「ドワーフですか?」
「そうです! 鍛冶をしてみたくて……」
やりたいことのために種族を選ぶなんて、すごく尊敬できる。それに、羨ましい。
「茶茶茶ちゃん! 親方のおつかい忘れんなよ〜」
店の奥から、野太い声が響く。この子は茶茶茶というのか。言いにくい名前。
「あ! そうでした。えーと、これをどうぞ」
そう言ってストレージから取り出されたのは、私より少し大きいぐらいの大剣。
刀身の幅が大きく、無骨ではあるけど、銀に輝いていて高貴さも
いや、普通に無骨。
「どわっ!?」
重かったのか、茶茶茶ちゃんは取り出したまま床に落としてしまう。
あ、これ絶対重い。今の落下だけで床にひびが入ってる。
「フンゥッ!」
何とか持ち上げてみるが、予想以上に重い。
職業が大剣使いじゃなきゃ持ち上げれなかっただろう。
「これ、どうすれば」
「すご、あ、それはミドリさんに差し上げるとのことです」
「仕舞っていいんですね?」
「どうぞどうぞ」
ストレージに仕舞う。
「はあはあ、重かった。それで、いくらですか?」
「あ、無料です。親方がファンで、是非使って欲しいと」
「そうはいきませんよ。親方さんを呼んでください。直接お話します」
タダほど怖いものは無い。こういう変な
「親方は今出ていまして……」
「どれくらいで帰ってきますか?」
「どうでしょう……一、二週間くらいかと」
どこまで行ってるんだ、親方さん。
こうなったらよくあるあれにしよう。
「珍しい素材が手に入ったら融通しますので、お伝えください」
「分かりました! またお越しください!」
たんやを出て、リスポーン地点を目指す。
「まずはあれを扱えるぐらいレベル上げしなければいけませんね」
[るー::重そうだったね]
[スクープ::見たところ銀でしたし、アンデッドにも有効ですよ]
[あ::あれどうやって持ち歩くんだ?]
[芋けんぴ::もはやただの鉄塊なんよ]
[紅の園::重そうだったねー]
「アンデッドですか、覚えときます。持ち歩き方は…………考えてないでしょうね。そもそも大剣を背負ったら抜くのが大変でしょうし」
まあ、ロマン重視のプレイヤー向けの装備だろうね。
腰に提げたら重さで崩れ落ちるし、背中に背負っても言った通り抜くのに時間が掛かるから実戦向きじゃない。
「つまりストレージこそ正義なんですよー」
大剣談義をしつつ、南へ進むと変な石があった。これは確かに変な石だ。
事前情報だと、これに触れれば更新されるらしい。
――PIPI
『リスポーン地点が更新されました』
「おー、あっさりしてますね」
リスポーン地点の更新が済んだので、次は向かいの冒険者ギルドへ足を運ぶ。
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