##27 夢の中?
目が覚めると私は現実の自室に居た。
昨日はゲーム内で寝落ちしてそのまま強制的にログアウトしたのだろう。
いつも通りのルーチンをこなして、昼ごはんを食べてからログインした。
◇ ◇ ◇ ◇
「んん〜と? うぇあ、あむあい?」
見知らぬ場所。どこかメルヘンチックなパステル色の空に、随分と簡略化された物のデザイン。
また眠っているのかと思って頬をつねる。
「痛……くない、つまり夢? でもメニュー画面あるしログインしてきたのは間違いないし、とりあえずはメッセージで連絡を――」
――送れない。
『現在地からは一部機能が封印されています』と表示されて使えない。奈落と同じような場所なのだろうか。
「ひとまず周囲のクリアリングからしますかねー」
アクシデントにも慣れたもので、さっさと切り替えてブラブラと歩き始めた。
ゲーム内なら月に放り出されても何とかなるかもしれないくらいには適応能力が高くなっている気がする。
「おー、水は……ゴクッ、普通と。あれ? ん? あらららー?」
近くに川らしきものがあったので飲んでみたけど普通に美味しい。しかし、それ以上に気になる情報が見つかった。
――水面に映る私の姿である。
「幼女、だと!?」
これはつまり、この場所の何かすごいパワーで幼女にしたということなのだろう。
つまり、ここの住人はロリコンであり、「お前もロリになるんだよー! そして自分もロリになるんだよー!」スタイルの地産地消型で、需供バランスの安定した地域であると言える。QED。
――なんてふざけた考えは置いといて、どうしても叫びたいことがあった。
「私かわいいいいいい!!」
なんと親切なことに堕天使の黒い翼を出してくれていて、さらに着ていたのがシンプルな初期装備というのもあってブカブカな服を着る可愛い幼女と化しているのだ。
我ながら最高。
幼少期モテまくってたのもこうして見れば納得がいく。
しばらくの自撮りスクショタイムをとってから、散策を続ける。フリー素材のような木々を歩いていると、懐中時計を手にしたこと以外はごく普通のうさぎを見つけた。
「うさーぎ」
「え、うさぎ?」
「うっさーぎ」
「うさぎがうさぎって喋った!?」
衝撃の事実。うさぎの鳴き声は「うさーぎ」らしい。
……な訳ないでしょ。
「ちょっと待ってください! 先住民の方ですか? 他にどなたか――」
私がロリに変えられたのと同じようにうさぎに変えられた人の可能性を信じて話しかけるも、あっという間に走って逃げていった。
私も流石にここでずっと彷徨うのも嫌なので追いかける。正直もう迷子になりかかっていたから助けて欲しいのだ。
「ひぃ、ふぅ、ちょっと……うさぎさーん!」
「うっさぎー!」
うさぎさんが速くて追いつけない。それに幼女化した弊害なのか体力が減っているような気がする。
――てかあのうさぎ煽ってない?
こっちチラチラ見てるんだけど。
「このうさぎさんめ! 丸焼きにしてやりますよ! ……いや流石にこの姿でそれは色々とマズイかも」
一人で勝手に自身の発言を考え直していると、うさぎはスッとどこかへ消えてしまった。
いや、消えてはいない。小さな穴に入っていたようだ。
私はブレーキをかけて穴のすぐ手前で止まり――止ま、止ま……止まれなかった。
幼児の体がまだ馴染んでいないのもあって制御に失敗したのである。
「うあああれぇええああぁあ!!!??」
小さな体でコロコロと穴の中を転がっていく。思いきり吐きたいくらいには酔っている。
永遠とも一瞬とも分からなくなるような時間の後、私は地面に転がり落ちた。
「痛ッた!」
受け身をとったはいいものの、やはり痛いものは痛い。おしりをさすりながら、私は状況を確認する。
さっき居た場所とは少し雰囲気が違って虫の居所が悪い感じだ。見た目には表れていない部分から何か良くないものを感じとれる。
「うさぎさんもどこか行っちゃったし、また迷子の迷子のミドリちゃんになっちゃう…………」
どうしたものかと思案していると、草むらから小さな足音が聞こえた。
「あなた、だぁれ?」
金髪蒼眼のお人形のような
「かわ……えーと、私はミドリって言います」
「ミドリちゃん?」
「そうです。でも、この見た目でも一応お姉ちゃんですからね? ミドリお姉ちゃんって呼んでいいんですよ?」
「ミドリちゃん! よろしくね! あ、ダメだった。わたしおうぞくだからちゃんとご挨拶しないと!」
ガン無視かい。
幼女は王族というだけあって気品のある振る舞いに切り替え、ドレスの裾をつまんで年不相応な綺麗なお辞儀を見せてくれた。
「わたしはアリシア・レ・ドルフィエです! ドルフィエおーこくのだい2おうじょです!」
かわいい。
「かわいい」
「へ?」
「いえ、発作ですのでお気になさらず」
危ない危ない。思わず心の中の言葉と発した言葉がシンクロしてしまった。下手なこと口に出さないようにしないと。
――それにしても、ドルフィエねえ。つい昨日戦ったばかりの私の先輩と同じファミリーネームなのは偶然ではないのだろう。まだ、かつてあった王国の問題は解決していないということか。
乗り掛かった舟だし、最後まで漕ぐとしよう。何より、こんなかわいい子を放っておいては危険が危ないし。
「ところで、アリシアちゃんはここらへん詳しかったりします?」
「んーん! なんかわかんないかも」
「じゃあ一緒にお散歩しましょうか」
「うん! お散歩!」
お散歩という名目で、何かここから出る手がかりを探しに出発する。今の私は幼女、隣にいるのも幼女。しっかりおててを繋いで怪しげな森を進んでいく。
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