第6章『獣天決戦』

#成り#


 プレイヤーによる祭り、イベントが行われた地にて――


 〈どらごん……!〉



 その植物は屍を貪っていた。

 親の危機が近づいているのを本能的に悟り、助けられる力を求めて。


 海を渡るのは時間がかかったが、それでもたどり着いた。

 どらごんがそう話す所以――ある種の憧れの存在を取り込める。



 〈どら……ごん〉



 屍は竜神を冠する世界屈指の強者。

 その肉体が機能しなくなっても、簡単にものにできるような存在ではない。


 逆にその体を奪おうと力が逆流してくる。


 〈――ごん〉



 小さな植物だったどらごんは、まさに竜の神という名に恥じない立派な体躯と化していく。

 それは果たして吸収の結果なのか、あるいは……



 〈――――ん〉


 どらごんの意識が薄れていく。



 《いつかドラゴンみたいにかっこよく強くなるんですよ。それで、誰かを守ってあげてくださいね》



 竜神に意識を喰われる間際、自身の植えられた記憶がよぎる。


 遠い遠い記憶。

 誰かが希望を残した優しさにあふれた記録。

 その植物が“どらごん”となったルーツである。



 ――自分にできることは限られている。

 だからこそ、それだけは成し遂げないといけない。




 〈どらぁごんっ!!!!〉




 竜の姿のまま、どらごんは意識を保った。

 そして、行きとは違って猛スピードで低空を駆ける。

 美しい植物の竜が薄暗い空で映えている。



 その翼に決意を宿し、水面を切り裂いて、大切な者のために竜は魂を燃やす――





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