#第四回イベント “恐怖戦争”中編#
ミドリがゴロゴロしながらリストを眺めている頃、〘オデッセイ〙の二人はゴキブリの燃えカスが散乱している場所に到着していた。
「うわぁ……これミドっさんがやったのかな?」
「ふむ、これはゴキブリの残骸だ。間違いなくミドリくんの仕業だろうね」
パナセアは
「虫は苦手なのかね?」
「え゛……まあ、うん」
「ならばここでリタイアを推奨するよ」
「いやいや! 全然大丈夫だから!」
男として不甲斐ないと思ったのか、頑なにリタイアを拒んでいる。パナセアはお構い無しに説得にかかる。
「これからゴキブリと底なし沼があるらしいじゃないか。私は飛ぶ機能があるから何とかなるが、君を虫から庇いながら飛行できるほどまだ空中のコントロールには慣れていない。あまりこういう言い方は良くないが、今回のステージでは足でまといだ」
「…………そう、だね。ミドっさんもリタイアしてたし、ぼくもここでリタイアしとくよ」
サイレンはそう言って優しく笑みを浮かべ、光に飲まれて消えていく。
「サイレンくんは作り笑いが下手だし、私は言葉選びが下手だな……」
一人残されたパナセアが、小さく呟きながら足を進める。ゆっくりと階段を下り、指先の豆電球のようなライトで辺りを照らしてみる。
「ここではないのか」
底なし沼もゴキブリも居らず、少し緊張を解くパナセア。彼女の頭上で何かの音がする。
「あれは?」
妙に大きな
◇ ◇ ◇ ◇
時には浮いて迫ってくる大量のおかめを銃で撃ち抜き、時には体を乗っ取る幽霊を強靭な自我で乗っ取り返したりすること45分弱。パナセアは何も苦戦することなく最深部に辿り着いた。
「もっとSAN値を削るようなのが出現すると期待していた。少々残念だな」
強者にしか許されない発言をしながら、片手間に迫り来る謎生物を撃って突破する。大きな扉の前にパネルがあるの確認し、一瞬の思考の後に動かし始める。
「これはこう。確かこうだったかな」
すると、大きな扉がゆっくりと開き始めた。
最後の関門にして、もう一度他の階でフロア全体の構造を確認するのが定石のはずの厄介なパズルを、持ち前の記憶力と高IQで突破したのだ。
「箱?」
扉の先には、どこかの聖堂の吹き抜けのような場所であった。部屋の中心に台座が鎮座しており、その上に豪華な宝箱のようなものが。
「…………罠にしか思えないな」
明らかに開けるであろう状況を疑う。
「今は置いておこう」
部屋に出口が無いことに気付き、部屋を調べ始めた。が、
「これを開けなければ完全攻略は不可能、ということか」
あらかた調べ終わったところで、観念して宝箱のようなものの前に行く。宝箱のようなものは、今すぐ開けて欲しいと言わんばかりに光り輝いている。
「吉と出るか凶と出るか、ふぅぅー」
警戒心を引き上げ、威嚇する猫のように真剣な面持ちで箱を開ける。
瞬間、部屋が水没した。
「なっ!? 【形態変化】、球体モード!」
腰まで一気に増えたことで慌ててスキルを使って守りを固める。パナセアは人型から隙間の無い、綺麗な金属の球体になって外界から身を守っている。
部屋は遂に半分まで水没し、球体は完全に底に沈む。水量が増えなくなった途端、異常な程の雲が生じ、雷を、竜巻を撒き散らす。
入ってきた大きな扉は消え、パナセアは外に出ることなく部屋中を球体のまま流され続ける。
「……」
打開策を考え始める。
あの箱を閉じれば終わるかもしれないが攻略になるのか、そもそもこんなのは普通の人間プレイヤーだと詰みではないか、と。
「……ん」
巡らせた思考は、最終的に待つしかないという結論に落ち着いたようだ。
待つこと数分、突如として嵐が止み、雲も水も消失した。
「【形態変化】、人間モード」
元の姿に戻り、部屋を見渡すが変化は無い。次に箱の中身を見てみると――
「クリアか」
箱の中から光が吹き出し、パナセアを包み込んだ。
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