###12 最高効率レベリングin the NARAKU!

 

 今日も今日とて元気にログイン。

 ……したら奈落とかいう暗い場所でテンションが低下。更に私のお腹を枕にしやがってるフェアさんのヨダレが服についているのを見て、テンションが底をついた。


「起きなさいぐうたら女神」

「……ふぇえ、もう食べられないよ…………」


「何がふぇえですか。夢の中でも食べて、昨日より太ったんじゃないですか?」

「――嘘! 太った!? 私太った!?」



「ひきこもりなんですから脂肪を見せる相手もいないでしょうに。あ、おはようございます」

「朝から口悪くない!? 私ミドリちゃんに何かしたっけ?」



「……」


 私は服についたヨダレを無言で指す。

 最初はそれがどうしたかと言わんばかりに首を傾げていたが、目が覚めてきたのかようやくそれが誰の何なのかに気が付いたようだ。


「そういうことね! ごめんってば」


 謝りながら、フェアさんは指で小さな水の塊を作り、ヨダレがついていた部分に浸透させた。

 すると、まるでクリーニングにでも出したかのように細かい汚れごと綺麗になった。



「許します。……でもそれ神能ですか? 貴方職業の神とかいうニートに与えちゃマズイ役職じゃありませんでしたっけ?」


「あ、そっか。そう見えるようにしてたんだっけ。ん〜、まあ他所の世界線の私が言っちゃうのも興醒めだからそっちの私に聞いて欲しいかな」



 妙なところで真面目な神だ。

 これ以上食い下がっても吐くつもりはないようだし、今回はスルーすることにした。



「おはよう、朝から元気だね。あまり騒ぐと巨人ともおはようすることになるから気を付けてくれ」


「あ、パナセアさん。おはようございます。騒がしくしちゃってすみませんね。主にフェアさんが」

「おはよー……あれ? 今サラッと私のせいにしなかったこの天使?」



 気の所為気の所為と適当にはぐらかしつつ、携帯食(マンガ肉)を食べながら今日の予定について詰めることにした。




「一応冥界の方にはいくつかカメラと盗聴器を仕掛けておいたが、一度見張りのケルベロスが異変を地上に伝えに行ったっきり動きは無いね。兵の数もあるから早くても帰還してくるのは明日だと思うよ」


「じゃあ今日1日暇になるのね。編み物でもしようかしら」


「私は元の世界線でのプレイヤーイベントが……あれ? 参加できますよね? えーっと、あ、できそうです。メッセージ機能は使えないのにこういうところはやらせてくれるんですね……」


 まあ予選で仲間ともブロックが違うから当たらないし、コンタクトは取れないということを考えれば妥当な制限基準か。



「昼から始まるイベントのレート上げを回すので、それまで巨人でも狩ってレベリングしましょうかねー」


「昨日あんなに戦ったのにまだ戦い足りないのね。よそのミドリちゃんこわ」

「私はできるだけ準備をしよう。聖水の――」



「あ、ミドリちゃん。私も巨人狩りに参加してもいい?」

「いや、今パナセアさんが聖水がどうたら言ってましたしそっちに必要になるのでは?」


「ああ、急いで作ればもう一発分は作れるはずだ。構わないね? 我らが唯一の主神さん?」


「うっ……はい」


「……尻に敷かれてやんの。聖水サーバーさん頑張ってくださいねー」



「ちょっとそこ! 女神に向かってなんて不敬なこと言うのよ! バチ当たり! 堕天しちゃえ!」



 既に1回したことあるんだよねー。

 過酷な労働に連行されるフェアさんに合掌してから、私は巨人溢れる危険地帯に単身で乗り込んでいった。




 ◇ ◇ ◇ ◇



「どっせい! ほいさ! とんこつラーメン!」



 ――斬る。



「よいや! もつ鍋!」



 ――斬りまくる。

『レベルが上がりました』



 私は次々と襲いかかってくる巨人を斬って斬って斬りまくってレベルを上げていた。

 終盤はかなり慣れてきて適当に声を上げながら1体につき2、3回で仕留められるようになってとても楽しかった。



「よし、そろそろ休憩と昼食にしましょうかねー」


 パナセアさんとフェアさんの作業組はとても話しかけられるような空気ではないため、お肉を軽く火魔法で焼いてストレージに入れてある塩コショウをかけてお皿に乗せて集中を阻害しない場所に置いておいた。

 私は自分用のそれを食べながら、4時間の成果を見ることにする。



ふへーはふほーふんステータスオープン


 ########


 プレイヤーネーム:ミドリ

 種族:大天使・(色神)

 職業:火魔法料理家

 レベル:181

 状態:良好

 特性:天然・善悪

 HP:172/36200

 MP:14/90500


 称号:異界人初の天使・運命の掌握者・理外の存在・格上殺し・魅入られし者・喪った者・旧魔神の親友・敗北を拒む者・元G狂信者・対面者・色の飼い主・復讐者・神殺し・空間干渉者・時をかける者・破壊壊し・真理の探究者・天賦の才・到達者・終末兵器(色)・メデテー乱獲者・死者殺し・運に愛されし者・巨人殺し


 神能:色


 スキル

 U:ギャンブル・職業神(?)の寵愛・超過負荷10・無間超域・獲物に朝は訪れない(一時貸与)・理想を描く剣・砂粒を掴む


 R:飛翔10・神聖魔術8・縮地9・天運・天眼・天使の追悼・不退転の覚悟・祀りの花弁(不撓不屈・命の灯火・残花一閃・樹海大瀑布)・水中活動・闘力操作・魔力操作・即死無効・世界の種


 N:体捌き10・走術7・無酸素耐性7・苦痛耐性6・釣り作業10・打撃耐性3・最大MP上昇10・継続戦闘4


 職業スキル:火魔法10・料理6・コックの矜恃



 ########


 スキル

超過負荷オーバードライブ】ランク:ユニーク レベル:10

 己に尋常ではない負荷をかけて種族の力を最大限以上に引き出す。自身のエネルギーを自由自在に放出・操作できる。

 CT:5日



 スキル

【世界の種】ランク:レア

 ――資格は揃った。

 真の意味で自分の在り方を見つけた時、この種は芽吹くだろう。




 スキル

【打撃耐性】ランク:ノーマル レベル:3

 打撃に対する耐性をスキルレベルに合わせて獲得。


 スキル

【最大MP上昇】ランク:ノーマル レベル:10

「素の最大MP×スキルレベル」にする。


 スキル

【継続戦闘】ランク:ノーマル レベル:4

 戦い続ければ続けるほどスキルレベルに応じて全ステータスが微UP。

 戦闘時の疲労が同様に軽減される。




 ########


 まあ、はい。

超過負荷オーバードライブ】と【魔力操作】でハチャメチャに暴れた結果がこれですよ。

 でも4時間でこの上がり幅ってことは、多分巨人自体が経験値が大きい種族の特性なのだろう。

 おかげで私のMPがもう少しで6桁に到達しそうだ。


 惜しむらくは、結構効率良く倒して回ったから巨人がもう絶滅寸前なことだろう。


 たぶんあと十数匹しかいない。このレベリングスポットを独占するのは気が引けるので、また増えることを祈って少しだけ残してあるのだ。



「ごちそうさまでした。……ご飯的にも経験値的にも」




 腹ごなしを終えた私は、イベントの予選に間に合うように早めの昼ごはんをとりにログアウトするのだった――






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