###11 寝起きだからしょうがないよね、うん
「ふぅ」
「お疲れ様」
「ありがとうございます。タオルまで準備しているなんて流石ですね」
「いやいや、これくらいはね。これでもそこの引きこもり女神にはパナえもんって呼ばれるから当然さ」
「へぇ、のびイニグさんも中々失礼なこと言いますね」
「まったくだ。どこからか謎の圧力でもかかったらどうしてくれるのか。ま、こういうチキンレースも楽しくはあるがね」
殲滅開始からおよそ1時間弱。
15万居た兵を聖水による攻撃で5万まで減らし、その後私が4万くらい斬り伏せて残りをフェアさんが倒すといった形であらかた片付いた。
この中に親玉である冥神ハデスが居なかったのは、殺れる機会を逃したと悔やむべきか、統率者が居なくて楽に削れたと喜ぶべきか。
いずれにせよこの場に居座るのはよろしくない。
もし今ハデス率いる残りの5万の兵が戻ってきたら消耗している分こちらが不利になる。せめて奇襲の形は作りたい。
それに、パナセアさんいわくここにハデス直属の幹部的な者達が居なかったらしいのだ。
聖水も一度きりだから無理は通せない状況になっている。
「どうする? 潜むか、一度帰還するかだが……」
「目的は休憩と相手の不意をつくこと、そしてできれば戦力の増強――私に妙案があります。ある種賭けのようなものですけどやってみる価値は大きいはずです」
そうして私たちは、更に深くへ進むことにした。
「私の出番少ない……」
私が暴れたせいであまり活躍できずに拗ねた女神を引きずりながら。
◇ ◇ ◇ ◇
以前私は冥界来たことがある。
だが直接来た訳ではない。奈落を経由しているのだ。そう、だからこそ奈落へのフリーフォールスポットは把握していた。
「とまぁ、奈落に来ましたけれども」
「しー! 静かにしないと巨人達が起きちゃうでしょ……」
「なるほど、ここいる巨人は冥神の支配下にないから暴れさせるということだね?」
「え? ……あー、それもありですね。でもアイツらたぶん協力してくれませんよ?」
「ちょっと、静かになさいよ……!」
「つまり他に宛てがあるのだね?」
「はい。少し探し回る必要はありますが――」
コソコソと話しながら歩き回っていると、私が探していた人物を発見した。久しぶりに見た彼女は相も変わらず天蓋のあるベッドでスヤスヤと眠っていた。
寝癖のついた茶色の髪の女性は、【怠惰】の保有者であり、{
「とりあえずこっちの世界線でも知り合いだと思う私が起こしますので、何が起きても隠れていてくださいね」
「え? 大丈夫なの? 危ない人なの?」
「ああ。この心配性の女神は私が見張っておこう」
彼女の寝起きは機嫌が悪い記憶があったので少し離れたところで待ってもらい、私はおねむなキャシーさんの肩を揺すって起こす。
彼女の即死攻撃なら私には耐性スキルがあるからおそらく平気だ。以前は奈落に勝手にリスポーン地点が更新されていたが、今回はそれが無かった。もうこの世界にリスポーン地点自体が無くなっているのかもしれない。
それも踏まえて、あの二人には安全圏に居てもらう必要があるのだ。
「すみませーん。ミドリなんですけど少しお手伝いして欲しいことがありまして――」
「んぅ? 【怠惰のえーみん】……」
「うぐぅ!? はぁはぁ……今心臓がキュッてなりましたよ。寝ぼけて即死攻撃する人がいますか……」
「ふぁわ。【怠惰の永眠】? うん、【怠惰の永眠】」
「――ヒィッ!?」
『【即死耐性】のレベルが上がりました』
『【即死耐性】のレベルが上がりました』
『【即死耐性】のレベルが上がりました』
『【即死耐性】のレベルが上がりました』
『【即死耐性】のレベルは上限です』
『レアスキル:【即死無効】に進化しました』
『――特殊条件を達成しました』
『ユニークスキル:【
あれれ? 一応もとからスキルレベル6あって安全圏だと思ってたんだけど一気に上がったね? 意外と生き残ってるのって運が良かった感じ?
おそるおそるステータスを確認してみる。
########
プレイヤーネーム:ミドリ
種族:大天使・(色神)
職業:背水の脳筋
レベル:137
状態:良好
特性:天然・善悪
HP:27400/27400
MP:6850/6850
称号:異界人初の天使・運命の掌握者・理外の存在・格上殺し・魅入られし者・喪った者・旧魔神の親友・敗北を拒む者・元G狂信者・対面者・色の飼い主・復讐者・神殺し・空間干渉者・時をかける者・破壊壊し・真理の探究者・天賦の才・到達者・終末兵器(色)・メデテー乱獲者・死者殺し・運に愛されし者
神能:色
スキル
U:ギャンブル・職業神(?)の寵愛・超過負荷4・無間超域・獲物に朝は訪れない(一時貸与)・理想を描く剣・砂粒を掴む
R:飛翔10・神聖魔術8・縮地8・天運・天眼・天使の追悼・不退転の覚悟・祀りの花弁(不撓不屈・命の灯火・残花一閃・樹海大瀑布)・水中活動・闘力操作・魔力操作・即死無効
N:体捌き10・走術7・無酸素耐性7・苦痛耐性6・釣り作業10
職業スキル:脳筋・背水の陣・風前烈火
########
スキル
【即死無効】ランク:レア
即死攻撃を完全に無効化する。
スキル
【
常に半分未満の確率x%による事象を、100-x(%)にする。
(取得時のみ確認可能事項)
〈取得条件〉
・レベル100以上
・賭け事系スキルを所持
・確率補正系スキル未所持
・30回連続して0.01%未満の事象を引き当てる
########
????
3度見したが私の目がおかしくなった訳ではなさそうだ。取得条件から考察するに、キャシーさんの【怠惰の永眠】は1回に10度の即死攻撃判定が行われるらしい。
その1度でさえ耐性を貫通するくらいの確率、今回で言うなら99.99%以上の確率で私は死んでいた。その死亡するかの計算が合計30回行われていたことになる。
つまり宝くじで億を当てる……いや、その例えは私的には割と大したことないから…………ソシャゲのガチャで10連3回すべて最高キャラを引き当てるのと同じくらいの奇跡か。
私、よく生きてたね。
99%以上除菌のウェットティッシュで拭かれた後の雑菌の気分だ。
……まあこの際手に入れてしまったものは仕方ない。生き残ってるのも仕方ない。
問題はスキルの性能だ。
ほんとなにこれ。要するに今回みたいな0.01%の確率で生き残れる状況なら強制的に99.99%で生き残れる計算に書き換えられるということだ。
強すぎる。強すぎて逆に少ない確率の方を引きそうだ。
「あれー、こないだの天使? もう戻ってきたのー?」
「おっと。目、覚めてきました? あれからだいたい数ヶ月経ってますよ。実は地上が壊滅状態になってしまいまして。冥界の勢力を倒すために協力して欲しいんです」
「へー、失敗した? ……ま、いいよー。眠いから明後日からねー。1日だけ2度寝す――ぐぅ……」
「2度寝への執着が凄い。でも言質はとれたし十分かな」
私は成果を報告するために離れてもらっていた2人のもとへ、壊れはじめた自身のステータスから逃げるように戻っていった。
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