###13 まとめて予選を済ませるスタイル

 

 急いでログイン。



「くっ……30分の遅刻とは」



 12時からイベントの予選は開始しているのだが、私はちょっとした急用で30分遅れて戻ってきた。

 何となく開始時間からやりたかった気分なので少し落ち込んでいる。予選は20戦のレートで決まるし、1週間の猶予もあるのだから焦る必要は皆無なのだが、今はそういう気分なのだ。


「調子に乗りすぎた……」


 現実で昼食をとった後、少し時間に余裕があったので気分転換がてら外出した。そこで謎の宗教勧誘にあったので、いかに自分が運に恵まれ、いかに贅沢な生活を送っているかを力説して、何なら私を崇めてもらってもいいとかほざいていたら遅刻してしまった。

 なにごとも自重が大切だね。



「よし、切り替えてイベントいこっと。配信は……あ、今は別世界線だから……いや、奈落だから? まあできないのには変わりないか」


 メニューからレート戦の対戦開始ボタンを押す。

 少しの待ち時間の後、対戦相手のレートとプレイヤーネームがデテンッと表示された。

 レートは2030、名前はレッカ。

 対する私はレートが多分初期値の1500だ。

 ちなみにイベントの説明を読むと、試合終了までの時間とレート差によってレート値の上昇幅が変動するらしい。


 つまり、瞬殺KOを繰り返していけば問題なかろうってこと。



 転移した先は帝国のそれより大規模なコロッセオだ。私の正面にいかにも魔法使いな少女がなぜか膝を震わせながら杖を構えていた。

 私も3号だけを抜いて構える。

 {順応神臓剣フェアイニグン・キャス}は使うのに数秒詠唱が要るのでTAタイムアタックに挑戦するには向いていないのだ。


『――試合、開始!』


「火の――」

「しっ!」



『そこまで! 勝者ミドリ!』



 開始と同時に【無間超域】でコロッセオ内全体が射程範囲になった状態で普通に叩き斬った。

 その間わずか1秒ほど。


『レートは残り4戦で更新されます』

『残り19戦対戦可能です』

『続けて対戦しますか?』


「はい」



 どうやらレートは5戦ごとに更新されるようだ。

 本戦に行けるのは最高到達レートなので、シンプルに最速で勝ち続ければ後から参加した人達にも抜かれる心配は無い。


 じゃんじゃんいこう。




 ◇ ◇ ◇ ◇



「あーあ、あっという間に終わっちゃったー」



 最初から最後まで同じ戦法で瞬殺を繰り返して20勝。それも最後の方は1秒未満の決着まで短縮できた。


「歯ごたえがない……負けを知りたい……」



 瞬殺し続けたせいで、まだログインしてから30分も経っていない。レートも最終的に予想されているボーダーの2800を上回る3782とかいう理論値じみた結果になった。自重? なにそれ美味しいの?



「はあ、残りの巨人絶滅させよ。あの人達たぶん悪いことしたからここに封印みたいにされてるだろうし、別に倒しちゃう分にはセーフなはず……」



 肩透かしを食らった分、巨人さん達にはサンドバッグになってもらおう。

 大丈夫、数も少ないからできるだけ殺さないように戦うから。



「さーて、狩りの時間ですよぉ!!」



「……あの子こわぁ」

「ほら、手を止めない。明日までに間に合わなくなる。それに食事まで気をつかって用意してくれたんだから集中してくれないかね?」


「ア、ハイ」



 ちなみに憂さ晴らしでレベルは2しか上がらなかったとさ。めでたしめでたしクソ喰らえ


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