##47 【AWO雑談】今日は早く寝ると言いましたね? あれは嘘です【ミドリ】
「どうも。夜更かしはお肌に悪いと声高に宣言します。新参美容系チャンネルのミドリです」
[天麩羅::もはや誰?]
[紅の園::あ、チャンネル間違えましたー]
[風船パル〜ん::深夜にそんなチャンネルは配信しない]
[風邪の又二郎::二回行動サンクス]
[リボン::ちゃんと寝て]
[単芝::口上w]
時刻は深夜の4時。
夕方早めに寝たらこの時間に目が覚めてしまったのだ。今から寝れる気もしないので、今に至るというわけである。
「今から外へ行ってもいいんですけど、私も寝起きですのでのんびり雑談でもしようと思ってます」
趣旨を説明しながら部屋備え付けの小さな机に向かう。
「学校の課題の写真をインポートしてきたのでそれを解きながら適当に喋るので、皆さんも気になる質問とか話題だけ書き込んで一緒に作業しましょう」
メニューのアルバムから先程移した画像を広げて、メモ機能も開いておく。コメント欄も横に置いておいて最適な環境を整えた。
「さて、みなさん。NG無しで質問やら話題やらを投げてください。まあ拾うかは別ですけど」
[究極社畜体::いくつですか]
[あ::死ぬのってどんな感じ?]
[セナ::いつも楽しませてもらってます。ありがとう、これからも応援してます!]
[ところてんどこやねん::ライブ初見です]
「年齢は18です。課題の数を聞いてるのなら過去問一年分だけです」
たぶん年齢を聞いているとは思うが、もしかしたら課題の数を聞いてる可能性も拭いきれないので一応それも答えておく。
「死ぬのは……死に方によりますかねー。痛ければ痛いですし、リスポーンした時はそこそこ気持ち悪くなります。慣れればマシでしょうけどね」
個人差もありそうなところ。
私も最初は吐いたけど、次第に慣れて復活時のステータスダウンっぽいやつで体の感覚がズレるくらいしか影響はなくなっている。
まあだからといってホイホイ死にたくはないのだけど。
「次は、お、いいですね。応援してくれてありがとうございます。これからも楽しんでって下さーい」
というかこれ、コメントの流れが速いから流れていっちゃう。いつもなら気にならないけど、面白い質問とか逃していないといいなぁ……。
そんなことを考えながら、最初の国語の問題を進める。定石通り、パラグラフリーディングで内容は把握したから序盤の方を解いていく。
[味噌煮込みうどん::今日のリアル昼ごはん]
[天々::おすすめのジュース]
「昼ごはんはなんでしたっけ? 覚えてないです。おすすめのジュースは水道水です。節約になりますよ、知りませんけど」
最初に説明した通り、適当に返していから問題は無いはずだ。チラッと見た感じコメントのみなさんは草を植えていらっしゃる。燃やしてやろうか。
[灯台もと太陽::なんか名言言ってください]
「名言ですか、了解です。――雨が降っている時、地面に水が浸透するように、人の涙も地面に染み込みます」
[あ::染み込みます(物理)]
[テキーラガブ飲み::心とかにも浸透するかと思ったわ]
[靴紐のはしっこ::今そういう描写の文読んでる?]
[カレン::深いようで浅い名言だなぁ……]
[だるまさん::途中まで感動したのに。返して]
名言BOTとも呼ばれるこの私になんて失礼な。国語の問題で主人公が泣いてたからそれに流されたのは拒めないけれど、ぱっと聞いた感じ名言でしょうに。
[たけし::昨日彼氏と別れました。慰めてほしい]
「えーと、彼氏と別れた? そうですか。出会いあればなんとやらですよ。私とマナさんは別れあってもまた出会う、ですから別ですけどね」
そもそもこの人の名前からしてセンスの問題もありそう。いや、男の方でもおかしくないか。まあどっちでもいいや。
[壁::バンジージャンプって楽しいのかな?]
「バンジージャンプは私もしたことないですけど楽しいと思いますよ。あ、でも私みたいに空飛んだことのある人は何とも思わないかもですねー」
もちろんそんな人なかなかいないだろう。飛行機の運転手とかもそうなのかな?
[コタツを三大欲求に入れるべき委員会::#鎖骨の扉 でトレンド入りしてましたよ]
「え、トレンド入りですか? 扉って……ああ、性癖が開いたとかそういうのですか。それはどうも。ちなみに私はかわいらしい幼――少女が好みです」
[野球部の田中::お、おう]
[コサイコ::今幼女って言おうとしなか(r]
[芋けんぴ::知ってる]
[焼き鳥::聞いてないよ]
「いやいや、今のは性癖トークの流れでしょう。なんでそっちが引いてるんですか。鎖骨なんてただの浮き彫りになった骨ですし、私の方が引きたいんですけど」
[蜂蜜過激派特攻隊長::全国の鎖骨フェチの民を敵に回す発言はやめたほうが……]
[鏡の鏡::わかってないな。鎖骨は首元で一番際立つ部位な上、人によって堀の深さも違って趣深いし、鎖骨の芸術的なカーブは歴史上全人類を魅了してやまないんだよ。そこら辺で見えていてもなんの問題も無い場所だからこそ、格別のエロスも秘めているのもいい点。それに加えて、光源によっても影の乗り方も変わるしどんなに見ても飽きないんだ。その点ミドリさんの鎖骨はビーナスの再来と言ってもいいほどの蠱惑的な形状だったし、鎖骨滑らか派閥的には一生拝みたいほどのこりの無さだったよ]
怪文書こわ。
これが受験に出たら受験生みんな涙目だよ。
「せ、性癖の話はどこに地雷があるか分かりませんしこの辺にしておきましょう。やっぱり性癖は自由にあるべしですからね! 自分の性癖を恥じずに生きていきましょ」
さて、話題転換もできたところで国語を採点まで終わらせた。私の集中力的に次の数学で終わりにしておこう。
「他の面白い話題カモンヌ!」
[すすすす::どこ住み?]
[人生絶望::黒歴史教えて]
「住所は貴方の心の中♪ どうも、増殖系アイドル堕天使のミドリです。よろしくお願いします。えーと、黒歴史はいまさっき作りました。お納めください」
スムーズな進行、問題もスルスル解いていけている。じゃんじゃんいこう。
[ハンチャーハンハン::好きな音楽]
「うーん、色々ありますけどやっぱりあれですかね。何か人生転がって大変なことになるけど新たな出会いがある、みたいな感じのやつです」
[枝豆::おー、オシャレそうな曲や]
[階段::わからん]
[燻製肉::歌詞とか覚えてない?]
「歌詞はどんぐりころころ〜とかそんな感じのやつです」
[病み病み病み病み::著作権配慮かな?]
[ピコピコさん::じゃあどんぐりころころじゃん]
[らびゅー::なら別に人生転がってないやろ。本体が転がってるだけでは?]
[たくあん::むしろよくそれでエモい解釈できたな]
そんなこんなで、数学もあとは丸つけだけ。
「次でラストにします。とびっきりのお願いしまーす」
[スクープ::攻略サイトに載ってないような情報教えてください!]
「あら、スクープさん。お久しぶりです。初公開情報ですか……」
王国で記者をやってるプレイヤーで、一緒に走り回った仲だ。是非ともお答えしたい。
しかし、何が既出なのかも最近確認してないから分からない。適当にそれらしいものを出しておこうかな。
「んー、現地人である帝国の皇帝さんが言ってた話ですけど、レベルの上限が種族ごとにあるらしいですね。一応その上限を突破する方法もあるらしいですけど」
魔大陸へ行く船旅で過去の話と一緒に聞いたんだっけ?
「あとは……そう! かなり昔、南側に大陸があったみたいですけど、今はなんやかんやあって空の、地上からは見えない高さのところに浮かんでいるみたいですよ」
こうやって聞くと、あまりにも荒唐無稽か。一応補足しておこう。
「証言はたんまりあるのでおそらく事実でしょうね。私もそこを目的地としているのでいずれ配信でお見せしたいなと思ってます」
もう一個くらい何か絞り出しておこうかな。もしかしたら既出だったかもだし。
「あとあと、これは個人的な報告かもですけど――昨日の修行で水の中を歩けるようになりましたし、空中もほんの少しなら踏めましたし、なんなら目と空間認識能力の及ぶ範囲までなら攻撃が伸びるようになりました!」
もともと視界だけだと思っていたが、痛覚設定をいじったおかげで視界とほぼ同じくらいの範囲カバーできるようになった。そのため、攻撃範囲が後ろ向きの攻撃でも伸びるようになったのだ。
「自力でできるようになれましたし、みなさんも頑張ればできるかもですよー!」
[見本市::忍者ってすごいんやなー(小並感)]
[カレン::たぶん難しいと思う]
[鏡の鏡::ついに人間やめたんか……あ、堕天使だったか]
[あ::妖怪退治に行った先で迷子になって妖怪になったって話?]
[壁::情報量の洪水が発生してます]
やる気のない方々ばかりだ。人生、意外とどうにでもなるし何でもできるものだというのに。
現実問題、仙老さんもあの意味の分からない剣術をリアルでも使えるみたいだし人間に限界は無いと思う。
「さ、いい感じの情報も出しましたし、今回はこの辺りで終わりましょうかね。またお祭りが始まる頃には始めますので、まだ寝てない人は今すぐ寝てくださいな」
私は久しぶりにソシャゲでもやろう。
たまには気分転換がてら別ゲーをやるのも楽しいからね。
「じゃあ、また後でー。堕天使じゃんけん、じゃんけんぽん!」
唐突にじゃんけんを始め、私は敢えての――
「私はグーサインを出しました。慌てて画面の前でじゃんけんを始めた素直な貴方、今からトライアスロンをしてSNSに投稿しましょう。ハッシュタグ純粋ゆえのトライアスロン、でお願いします」
まあ別に私は見ないんだけど。
「さいならー」
勢いのまま配信を閉じる。
その後、解答のメモをアルバムに保存してスマホに共有っと。
「よーし、別ゲーやるぞー」
布団に飛び込んでそのままログアウトした。
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