###55 ここが私の居場所だから
「うぅ……ぐすんっ」
「ふぅ、スッキリしましたー」
「ひどい! 鬼! 大天使! ミドリちゃん!」
「あんまり貶されてる感じしませんねそれ」
謎の苦しい待機時間はあったものの、リスポーン自体はできたようでちゃんとデスペナで身体能力が著しく低下している。なぜ通常のリスポーン地点ではなくこの恒例の謎空間で復活したのかは分からない。
何はともあれ、色々と吐き出してスッキリした。
……絶賛泣きながら着替えているフェアさんには申し訳ないけどね。
「それにしてもさっきの夢みたいなのは何だったんでしょう?」
「夢? それのせいでいきなり吐かれたの私?」
「す、すみません。なんか光とか布とか触手に襲われそうなところを虹に助けられる悪夢を見まして」
「……なるほど。確かにミドリちゃんの体ってめちゃくちゃ良いものねー」
「セクハラですか? 今の時代同性でもセクハラになりますよ?」
「違うって! 邪神が体を乗っ取ろうとしてるくらいには良い依代なのよ。なんなら私も割と――」
「えーと、現地人の通報ってどうやるんでしょう?」
「セクハラじゃないって!」
この人もさては邪神なのではなかろうか。まったく、私の体を乗っ取って何をするつもりなのやら。
「コホンッ! つまり抹消の攻撃で一時的に肉体から乖離した魂に干渉したということなの。あ、でも」
「でも?」
「もしかしたら私が無理矢理この空間に連れてきたからその隙に?」
「……」
ほほーん?
「ちょ、違う違う! わざとじゃないから! それにほら、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ?」
「まあその通りですね。さっさと要件をどうぞ」
「――大天使ミドリよ!」
「そういうのはいいんで、はよ」
というか大天使と言えば、起きる直前に種族がどうたらアナウンスが聞こえたな。フェアさんが空気読んでとか喚いているうちにサラッと確認しておく。
########
プレイヤーネーム:ミドリ
種族:迷える終焉の極天使(邪神)
職業:背水の脳筋
レベル:295
状態:平常
特性:天然・善悪・迷子
HP:59000/59000
MP:147500/147500
称号:異界人初の天使・運命の掌握者・理外の存在・格上殺し・魅入られし者・喪った者・旧魔神の親友・敗北を拒む者・元G狂信者・対面者・色の飼い主・復讐者・神殺し・空間干渉者・時をかける者・破壊壊し・真理の探究者・天賦の才・到達者・終末兵器(色)・メデテー乱獲者・死者殺し・運に愛されし者・巨人殺し・並行世界の救世主・厄災の友・爆ぜ職人・絶対的迷子ちゃん・史上初の到達者・翠の天使
神能:色・空間
スキル
U:ギャンブル・職業神(?)の寵愛・超過負荷10・無間超域・獲物に朝は訪れない(一時貸与)・理想を描く剣・砂粒を掴む・終焉の天災眼・変幻自在の神の加護:緋彗・迷子不可避・原点真世界・紛れる者
R:飛翔10・神聖魔術8・縮地10・天運・天使の追悼・不退転の覚悟・祀りの花弁(不撓不屈・命の灯火・残花一閃・樹海大瀑布)・水中活動・闘力操作・魔力操作・即死無効・神力操作
N:体捌き10・走術7・無酸素耐性8・苦痛耐性10・釣り作業10・打撃耐性8・最大MP上昇10・継続戦闘9
職業スキル:背水の陣・風前烈火
########
スキル
【
あらゆる方向感覚が狂う。
――迷子も愛らしい個性だよ!
スキル
【原点真世界】ランク:ユニーク
自身を中心とした最大半径2000kmに世界を展開させる。世界内の自身と、仲間と認識する者の全パラメータを20倍にし、一度だけ任意のタイミングで復活が可能になる。さらに世界内の不死・不滅・抹消属性をかき消す。
――すべてはありのままに。
効果時間:3時間
スキル
【
いかなる方法でも感知されなくなる。自身の種族は元となる種族(大天使)だと思われる。
――これは、自らを邪の神に到達させながら共存と繁栄を望む者に贈られる祝福である。
########
なんこれ。
いつの間にか私は邪の神、オリジナルの邪神になっていたらしい。しかもバレないように工作してくれているみたいだ。世界スキルも習得できたが――
「ぬぅあにが【
「うわ!? 急に何!?」
何このデメリットしかないユニークスキルは?
誰だこんなものを寄越したやつは。まあ種族名の迷える終焉の極天使とかはかっこいいから許してやらんでもない。
というか邪神になったのならいずれニャルさんともバトることになりそうだ。
「失礼しました。私のことはお構いなく」
「そう? 確かにミドリちゃんの奇行はいつも通りだけど……」
「ん? 通常運転?」
「言ってない! 言ってないよー!」
「で、本題の方は?」
「そうだった! 何から説明したものか……んー、簡単に言うとミドリちゃんに
――最後、ねぇ?
「パンドラちゃんから話は聞いてるみたいだしざっくりでいっか。昔むかしの話、管理AIをマナちゃんが作る際に一緒に居たソフィちゃんは自身の欠片を一度だけ仕込みました」
「{無垢の魂玉}ですか」
「そう、そんなソフィちゃんの微かに眠っている世界を終わらせる意志を移した子が舞い降りるの」
珍しく真面目な表情で私を見やるフェアさん。
「あの子、
「なぜ運営が黙認しちゃってるんです? 流石にそこは止めるべきでしょうに」
「運営としては基本的にこっちの世界に干渉せず、こっちのことはこっちで解決させるスタンスなのよ。それがシステム的な手段の問題でもね」
「……なるほど、システムによるものは超特効がある貴方が居るから自分たちでやれというわけですか」
運営としては正直この世界が終わろうが発展しようがどうでもいいのだろう。バイトに行った身だから分かるが、この世界は他の色んなフルダイブのVRゲームの前身として実験的に開かれている節がある。つまりはそういうことなのだろう。
「正直な話、私では届かない気がするのよねー。結構用意周到みたいだし色々と小細工を弄してるみたいだから」
「それで私に助力を、と」
「ごめんね、無茶言って」
「いえ、運営の思惑はどうあれ――マナさんが居るここが私の居場所だから、絶対に守ってみせますよ」
ヘマをする気は無いが、あまりに理不尽で強引な幕引きを用意しようものなら、最悪現実世界で殴りこみも厭わないくらいだ。
「ありがと! こっちでも助力を得られるように手は尽くしておくから、先に〘オデッセイ〙の子たちと合流して賢者の塔へ行っててくれる?」
「ええ、任せてください」
時間は刻一刻と迫っている。さっさと退散……する前にこれは言っておかなきゃ。
「フェアさんフェアさん」
「はいはいフェアさんよ?」
「なに覚悟決めた感じ出してるんですか気持ち悪い。マナさんのついでに世界は守りますし、そのついでに貴方も守りますよ。散々お世話になりましたからね」
「気持ち悪いは酷い! ……でもその、心配してくれてありがと」
あれ? 何この女神、いつからツンデレ属性を足したのだろうか。
「……気持ち悪っ」
「また言った!?」
涙目でショックを受けているフェアさんの肩にポンと手を乗せる。
「では先に行ってるので待ってますよ」
「ええ、私の有史以来初の出陣をしかと見てちょうだいね!」
互いに笑顔を浮かべて、私は一足先に転移した。
謎空間から出るイメージで転移すると、本来のリスポーン地点である噴水の広場に出た。
目の前には、今にもリスポーン地点を破壊しようとしている悪魔のプレイヤーがいた。
「はい処刑っと」
「は――」
進化したおかげでデスペナもものともせずクソ悪魔を殴り殺せた。
すぐにリスポーンした悪魔が攻撃しようと気色悪い笑みを浮かべるが、奴の足元に変な魔法陣が現れた。
「どこのどいつだよ! 確かにまた死んだから賢者との契約は切れちまったけど、今悪魔召喚すんじゃね――」
なんか喚いて消えていった。
リスポーン地点を破壊しようとしていたが、私の目の前から消えたのならよしとしよう。こちらとら暇ではないのだ。
さっさとみんなの元へ転移してっと。
「とう! ……あれ?」
最初にコガネさんのもとへ行こうとしたのだが、なぜか私は見覚えのあるお茶の間にいた。
「ミドリ!?」
「ミドリお姉ちゃんだー!」
「あ、葉小紅さんに――うぇ!? もしかして家族会議中でしたか!? てかここ、三本皇国ですか?」
「そうだけど……」
「失礼しました!」
七草家、しかも剣神さんやらフィアさん、それになんかかっこいいお姉さんも居るお茶の間に転移してしまった。すぐにクーシルに戻るよう転移した。
「ぶぉっ!? ふごごっ!」
なぜかよく分からない海底神殿に転移したようだ。神の気配がするが、今はそれどころではない。
さっきからおかしい。狙った所に転移ができないのだ。
何度か転移を繰り返し、数十回目でようやくクーシルのそこら辺のビルの中に転移できた。壁に埋まってはいるが、クーシルに来れたのだからヨシ!
埋まった壁を力づくで抜け出して改めてステータスを見て原因に気付いた。
「くっ……忌々しい【
間違いなくこいつのせいだろう。
迷子から卒業できたと思ったのにふざけないで欲しい。
こうなったら仕方ない。原点回帰で解決するしかないようだ。
私はメニュー画面を慣れた手つきで開いた。
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