##25 カミウツモノ
『「カミウツモノ」の可能性の反映に成功しました』
カミウツモノ? 神を討つ者ってことだろうか?
何か強引な気がしないでもない。飛んだ腕の復活を確認して――
「……っ!」
絶対知らないのに、どこか懐かしい記憶が流れこんでくる。
――見えたのは涙を流しながら哀しそうに笑っている女神のフェアイニグさんだった。その姿に
でも、手遅れなのだ。だって殺したのは
「うっ……」
記憶の流入が止まらない。
次に見えたのはマナさんだ。真剣な面持ちで、武器を構えて
それでも、マナさんが
場面が飛ぶと、
「おぇ……うっ、ゴホッ! おええ――」
意識がハッキリとしない。
吐き出す。
気持ち悪い全部を口から嘔吐として吐き出す。
「何回目だ?」
「な、にが……」
「それを使ったのは何回目だ」
「……ご、かろく」
隙だらけの私に攻撃はせずに、何故か問いをなげかけてきた。まだ頭がごわごわしていて口も上手く回らないのに。
「やはりな」
「はぁふぅ、何を言ってるんですか」
「――お前、職業神フェアイニグから寵愛を貰っただろう?」
「まあ、はい」
話が読めない。確かにフェアさんの寵愛は授かっているが、それと今苦しんでいる原因の【不退転の覚悟】は関係無いはずだ。
なのに何が――
「そのスキルはヤツが寄越したものだ。有り得る可能性の先を選び取り、その先にいる自分を取り込む埒外の力――それ故に自我の崩壊を引き起こす」
「貴方は一体……?」
「お前と同じスキルを持っていた、ヤツの寵愛を貰って騙された被害者だ」
被害者ねぇ……。
確かに自我が崩壊するっていうのは恐ろしいけど、あのおバカそうな女神さんがそんな頭使うようなことするのだろうか。普通に説明し忘れたか、そもそもデメリットを知らない可能性もあるのだ。
「何にせよ、そんな理由で霧を出している貴方と肩を組むつもりはありません」
「そうか……残念だよ。お前は異界人だから、ここで俺に殺されてもまた別の戦いでそのスキルを使うだろう。今のお前の姿が、進んだ先の姿にならないといいな」
この先私が“カミウツモノ”の
「【適応】」
両手で剣を構える。
剣はいつにも増して鈍く暗い光を放つ。
「ヤツは俺を、僕を見捨てた。人を見捨てた。僕の民を見捨てた。俺を止めなかった……」
男は冷たい目で床を見据える。
彼の精一杯の軽蔑や侮辱を込めた態度は、親にわがままを言う子供のそれのように私の目には映った。
自我の崩壊によって一人称も変わるくらい何度も何度も【不退転の覚悟】を使ったのだろう。いつの時代の人間かは知らないが、過酷な人生を歩んでいるのはよく伝わった。
だからこそ、これ以上過ちを犯す前に私が倒す。
「ステータスオープン」
########
プレイヤーネーム:ミドリ
種族:堕天使
レベル:245
状態:最上の殺意
特性:誤った正義
HP:49000
MP:12250
称号:異界人初の天使・運命の掌握者・理外の存在・格上殺し・敗北を拒む者・元G狂信者・対面者・神滅堕天使
スキル
U:ギャンブル・超過負荷10・神滅世界・対神の邪眼
R:(飛翔9)・(神聖魔術6)・縮地10・天運・(天眼)・(天使の追悼)・祀りの花弁(不撓不屈・無瑕仇刃・竜掌・命の灯火)
N:体捌き10・走術10
########
スキル
【
己に尋常ではない負荷をかけて種族の力を最大限以上に引き出す。自身のエネルギーを自由自在に放出・操作できる。
CT:5日
スキル
【神滅世界】ランク:ユニーク
神への殺意で作られた狩場。そこに入った神はどれほど強力で
CT:1日
スキル
【対神の邪眼】ランク:ユニーク
神を見ている間、自身の身体能力を超強化し、相手の神に脆弱状態と衰弱状態を付与する。
【祀りの花弁】ランク:レア
離れていても、その心は一つ。
「別れ」の際にスキルをランダムで一つコピーする。プレイヤーは対象外。五つまで。
・不撓不屈
・無瑕仇刃
・竜掌
・命の灯火
・――
スキル
【無瑕仇刃】ランク:レア
大切な人を奪った仇を討つための刃。斬られた者は死より辛い痛みを味わう。
スキル
【竜掌】ランク:レア
高位の竜の打撃技。その威力は山をも動かすとも言われている。
スキル
【
生命を火に変える。小さな火ではあるが、欠片程度でもあらゆるものを消し炭にするほどの火力を持つ。また、同系統のスキルと合わせると相乗効果が生まれる。
詠唱:『紅く輝け』
########
相手から動く様子は無かったので、しっかりとステータスを確認。
【祀りの花弁】の内訳については記憶の流入によって大体把握していたが、それでもあまり見ていて気分の良いものではない。
大切な人も、今後出会う人も、これから仲を深める人も、みんな失った証拠がそこにはあるのだ。
「【疾走】」
目を背けて走る。
それはありえる
現実とは別物なのだ。そうさせないための力だと、私は信じている。
「安直だぞ後輩」
私と似た道を進んだ先達が風の渦を放つ。
やはり風の神の神能を持っているのだろう。であれば、引いたのがこれで当たりだった。
「そっちこそ油断大敵ですよ、先輩」
パッシブで発動している【対神邪眼】によって風の力が弱まる。小さくなった風の渦を剣で切り裂いて突破した。
「ほう、やるな。【聖剣の舞】」
光り輝く剣が百本単位で出現する。
一斉に私へ迫るそれらは、一本だけでも世界を救えるような強さを孕んでいて――それ故に私は腹が立った。
「【
赤と黒のエネルギーが全身から滲み出てくる。
レベル10で完全に自在に使えるとのことなので、相手と同じ数のエネルギーの剣を創り出す。
「はああああ!!」
飛び交う聖剣を相殺するように射出し、私は突撃を続ける。
――間合いに入った。
エネルギーを剣にも込め、禍々しいオーラを纏わせた斬撃を放つ。
「【豪剣】」
剣と剣が衝突して火花を散らす。
私も必死に押し切ろうとするが、相手も手強く交差している位置は依然変わらない。
一度退いてからまた剣を構える。
と、出方に迷っていたら相手が仕掛けてきた。剣をこちらに向けて、その先から巨大な嵐が吹き出す。
「ふっ!」
エネルギーを剣に纏わせて風を斬り払う。
――振り終わりの動作の隙に相手が詰めて来た。
風の吹き荒れる剣が私に迫る。
「【縮地】!」
敢えて敵の少し横に移動して、間合いの範囲内でかつ隙を補う。それから数合剣を交え、激しい攻防を繰り広げていく。
「【風神化】【黒嵐世界】」
しびれを切らした相手が風になった。
言葉通り、風。
しかしてそれは神である。ならば、私のすることは一つ。
「【神滅世界】」
相手の“世界”を丸ごと打ち消して、神が存在することを許さない世界が広がった。
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