##嵐剣VSフルアーマー竜神##
ミドリとスノアを先に行かせて、盲目の老剣士と相対するウイスタリア、どらごん、不公平。
セヌスは突如展開された闘技場を警戒しながら剣を構えた。
それに合わせてウイスタリアとどらごんは竜の姿となる。
〈やるぞ、どらごん!〉
〈どらごん!〉
竜の姿で、2体は拳を重ねた。
〈――【神格化】〉
〈【
それぞれが同時に竜神になるスキルを使った。
本来種族に由来する神はその種族で最も優秀とされる者のみが神格化する権利を得られる。
例えばミドリが共に戦った鬼神、酒呑童子も復活したことにより序列が変わり、もともと鬼神となれたマツからその権能が移ったように。
この世界における
複数並ぶという奇跡のような状況だから為せる技、それこそがウイスタリアの言った“とっておき”である。
〈【
どらごんは神格を持ったままウイスタリアの鎧となった。黒竜を渋い樹木の鎧が覆う。
単純に竜神2体だけであればセヌスも辛うじて対抗できた。しかし、武具化したことによる相乗効果は計り知れないものであった。
「これはこれは……全盛期でも手を焼く相手ですな。
〈ごちゃごちゃめんどくさいやつなのだ! ぶっ潰してやるぞ!〉
「はあ、神々の戦いとか正気じゃねえだろ……ちょっかいかけるだけかけるがあんま期待すんなよ、竜のおふたりさんよぉ!」
「さてはて、この朽ちかけの肉体はどこまで保つか――【魂縛解除】【嵐剣】」
木剣が嵐に変わり、そのままウイスタリアを呑み込む。しかし、今の彼女は嵐程度ではビクともしない。殺気のこもった腕の一振りをお見舞いする。
「……受け流すだけでも骨が折れそうですな。しかし、
返しの太刀で鎧に傷がつく。
反撃はそれだけではなく、一瞬の隙も見せない連撃を嵐を振るって続ける。
流石の鎧も再生が追いつかず、ウイスタリアも嵐のノックバックを連続で受けてまともな反撃に出れずにいた。
「俺を忘れられちゃあ寂しいな! 食らいやがれってんだ!」
闘力を纏わせた拳がセヌスの頬を撃ち抜く。
だが、少しのダメージも入っていない。闘力も魔力も神力の下位互換なのだ、神力を常時纏っているセヌスに効き目がないのは当然である。
「ふむ、この場では力量不足かと」
「んなこと俺が1番分かってんだ。アンタも武の神様なら分かんだろ! 漢の意地ってやつがよお!」
たとえ扱う力が弱くとも、不公平は己が拳を神力で壊されながらも押し切ろうと噛み締めた。
その行動は十分な時間を稼いだ。
――ウイスタリアが神力を掌握し、圧倒的なパワーを人型に凝縮できるようになるまでの時間を。
「【人化】、【本能覚醒】、【称号発露:竜神姫】」
真剣な表情のウイスタリアは純白になった髪をたなびかせながら、大自然の
「遅せぇっての。あとはやれるんだろ?」
「ああ、よくぞ耐え忍んだ。我に全て任せておくがよい」
「――ゆくぞ、武神」
「これがあるから戦いはやめられない――」
一般人からしたら数秒、神の2人にとっては自身の手札を全て切るには十分な時間。
交戦の余波だけで不公平の作り出した闘技場は消し飛び、彼自身も死にはしないものの遙か後方へ吹き飛ばされている。
激しい熱、光、衝撃が収まり、砂埃も少しずつ晴れてきた。
最後に立っていたのは――――
「体が重いのだぞ……」
〈どらごん……〉
訂正しよう。
寝転がって意識を保っていたのは、ウイスタリアとどらごんであった。
セヌスは竜神姫のたっぷり神力の入った【真・竜神拳】をまともに食らって気絶している。
この戦いの勝者は、目論見通りウイスタリアたちなのだった――
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