##18 人神クーロ・レプリカ
『難易度“サンクチュアリ”、討伐目標:人神クーロ・レプリカを討伐せよ』
討伐目標となっている青年はどこか見覚えのある顔つきだ。ただ、白髪蒼眼なのもあって思い出せない。
「わ〜お、お父さんのコピーがお出ましか〜」
「ちょっとリンどういうこと?」
「ほう? 興味深いことになっておるな」
「えっ、え?」
「……納得」
各々リンさんの発言に反応を示している。
もちろん私も一瞬驚いたが、すぐに得心がいった。なぜなら、リンさんの父親は私ともガッツリ面識があって……というかリンさんと一緒に職場見学までさせてもらった。
彼の息子にして今現在クロとしてマツさんを侍らせているであろうあの人も連れていけばいいのに、サプライズだとかで彼だけには頑なに内緒にしていたんだっけ?
そんなことはどうでもいいや。ともかく、目の前の相手が相当強いの当時の映像データで察せられる。
なにせ私が何回も見た記憶を頼りに今の体術の参考にしているくらいの練度なのだ。何なら剣術も彼の動きの記憶を真似ていると言っても過言ではない。
「伏せてください!」
赤い線が一瞬見えたので警告する。近くにいた後衛のミースさんは反応できないと思って少し強引に伏せさせる。
「【断裂剣】」
……思ったより技術は無い。剣速と威力だけだ。コピーと言っても中身が入っている訳でも無く、ステータスといったデータだけなのかもしれない。
――中身が入っていればなんてのは、彼がもう既に亡くなっているから無理な話ではあるが。
「【
「この数は……!」
「儂が全部叩き斬ってみせよう。儂一人で十分じゃ」
流石に最高難易度と焦ったのは私だけだったようだ。召喚された軍団は仙老さんが受け持ってくれるらしい。
「【投擲】」
そうこうしてる間にネアさんが動いた。ポケットから取り出した石を投げつけている。
もちろんあっけなく真っ二つに斬られてしまう。
「【チェンジ】」
斬られた石とネアさんの位置が入れ替わる。そのままネアさんは相手の腕に触れた。
彼女はパッシブスキルか何かで生物を別の生物に変える能力がある。チートスキルのせいでこのレイドバトルは終了に――ならなかった。
何も起きない。
「――ッ!」
「【砂塵の棺】」
ネアさんを包むように砂が舞う。
「〖デリュ〜ジ〗」
と思ったら大量の水が砂もネアさんも押し流した。リンさんの魔術だ。【無詠唱】というユニークスキルを持っているのは話に聞いていたが実戦で見るとハチャメチャな性能なのがよく分かる。
私もアシストできればよかったが、いかんせん展開が早すぎて追いつけないのだ。どうにか私のできることを探さないといけない。
「ネアちゃん、すこし突っ込み過ぎだよ〜」
「……『人神がすべての始まり』……そういう…………」
「聞いてる〜?」
ネアさんはリンさんを完全にシカトして自分の世界に入っている。そんなやり取りをレイドボスが待ってくれるはずもなく――
「【断裂剣】」
「我は
相手の斬撃を、今度はサナさんが炎と風を纏わせた剣で防いだ。斬撃の先から新たに斬撃が生まれ、チェインと言う通り連鎖的に高威力の斬撃が相手にまとわりつく。
「――【諸行無常】」
無限の追撃が崩れるように消え去った。
相手は何も語らない。ゆえにスキルを実質的に無効化するスキルの詳細は分からない。
まだまだ相手の底が全く読めない。
「【
黒と白の翼が人神の背に現れ、彼の
「【適応】!」
「すべての者に癒しの加護を〖アラウンドリジェネレーション〗」
出遅れて私とミースさんも戦闘態勢に入る。彼女は完全に後衛で支援するタイプらしく、全体に常時回復のバフをかけてくれた。まあ相手が相手だし正直一発食らったら死ぬだろうけどね。
「――ミースさん!」
赤い線が彼女に走る。
私は剣を盾のようにしてそれを防ぐ。
「ぐっ……」
「きゃっ!」
一緒に吹き飛ばされる。
何とか相手の斬撃は防げたが、一瞬でこれはキツイ。今のうちに他の人達が攻撃してくれればいいんだけど……。
「〖エンプティ〜リップル〗!」
「我は神を殺す者〖エンチャントゴッドスレイヤー〗」
「加勢してやろう。神薙流奥義・
相手の意識がこちらに向いている隙に、リンさんの魔術とサナさんの二本の斬撃、天使を蹴散らして来た仙老さんのドデカイ斬撃が牙を剥く。
――しかし、赤い空間が視界いっぱいに広がった。
「【
すべてが真っ白になり、ほんの一瞬星々が見えたような気がした。
◇ ◇ ◇ ◇
「ゴホッゴホッ、あれ?」
「…………全滅は……避けた」
どういう仕組みか損壊の無い神殿に、私とネアさんだけが残されていた。どうやってあの爆発から守ったのかは皆目見当もつかないが、ネアさんはポロポロになって出血もかなりしている。
「【復活】」
これでレイドバトルクリア、なんて都合のいいことにもならず、敵は何も無いところから復活した。【復活】のスキルを使わせたのは大きいが、それでもあんな自爆をしてくるとは。
ここからどうやって二人で倒せばいいのだろう?
「ネアさん、相手の心臓とその辺の石ころを交換できたりしません?」
「無理……視界外…………それにあれは石像」
「心臓は無いんですか。核とかならありますかね?」
「無い」
「ならどうやって動いてるんです?」
「人神という……概念」
そうなると私の【ギャンブル】で仕留めるのも無理そうだ。ネアさんが私を助けたのは攻撃している三人は間に合わないという理由だろうけど、これじゃあ生き残っていても詰み。
やはり最高難易度というだけあって――
「ミドリ」
「え? あ、はい」
「時間は稼ぐ……何とかして」
「…………ふふふっ!」
驚いた後に思わず笑ってしまった。
「……何」
「すみません。まさかそんな無茶な頼られ方をするとは思わなくて。でも、そうですね。どうなるか私にも分かりませんけど、やれることはやりますよ」
一度試してみたかったこともありますし、と付け加えてコインを取り出す。
「輪廻ノ外法其の壱【
ネアさんが相手の全身に花を植え付ける。
「輪廻ノ外法其の弐【
更に私の周りの床を動かして守るように包んでくれた。
「輪廻ノ外法其の参【
彼女が何かに成った音が聞こえた。
「【限定神化:生】」
床であり壁でもある障害物の向こうから、
――それと同時に私はコインを弾いた。
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