【Alternative World Online】翠の天使、VR世界で徘徊中【ミドリ】

###57 ススムモノ＆職業神

　マナさんと共に戦える、それだけで死ねる。

　……いや、死んじゃだめだから表現を変えよう。

　それだけで力がいくらでも漲（みなぎ）る！

「ミドリ！　……とそちらは」

「妻です」

「マナっす」

　フェアさんがやりあってる中、ハクサイちゃんの攻撃を適宜消しながらこちらにやってきたのはふっきれた様子のアディさん。抹消（ロスト）属性は私の世界スキルで使えないはずなので別の方法があるのだろう。

　他の同盟のみんなは何故か石像のようにビクともしない。心配である。

「アディさんはそのまま可能な限り攻撃を消しておいてください！　【縮地】！」

「【追従】、【神盾（アイギス）】っす！」

「了解！　固まってる人達も安全な場所に運んでおくからこっちは心配しないでよ！」

　ありがたい。おかげで思いっきり戦える。

【縮地】で一気に距離を詰め、【紛れる者（アナリシア）】で一瞬見失ったところにハクサイちゃんを斬った。色んな属性の魔術が飛んでくるが、それらはついてきてくれたマナさんが盾で防いでくれた。

　手応えは確かにあり、相当遠くまで吹き飛んでいった。

「ミドリちゃん？　何で色々手を回してた私の方が早いの？　遅刻だよもう！」

「うっかり迷子になりましてね。それより状況は？」

「ものすごーく簡単に説明すると、ステータスに職業を持ってない人全員フリーズアンド強制ログアウト！　しかし女神フェアイニグがミドリちゃんの“縁”を辿って渡せるだけ職業を配ってた！　あの子はシステムへの超特効でしか倒せない！　おーけー？」

「なるほど、つまり貴方とその寵愛を受けた私の【総てを砕く我が覇道（イニグ・ミカエラ）】でしか倒せないと」

　そゆことー、と呑気に頷くフェアさんへ光の矢が飛んできた。

「ふぬっす！」

　しかし流石は名タンク、マナさんの神器のツタが見事にキャッチしてくれた。

　やはり通常攻撃では効かないか。

「ありがとー、マナたそ！　ミドリちゃん越しだけどよーく知ってるよ！　私は職業神フェアイニグ、気軽にフェア様って呼んでね！」

「職業神――いや、まさか！　お父様が言ってた三柱の？」

　何か知らないけどフェアさんのことは知っていたようだ。しかし私にとってはどうでもいい。

「……マナたそ？　フェア様？」

「痛い！　ミドリちゃん、今シリアスな場面だから！　アイアンクローはやめッ！　あっ、ふぎゃあー！！」

　――突然、時間が止まった。

　回復したハクサイちゃんが服についたホコリを払いながら飛んでいる。

「んー、盛り上がってるところ悪いけどあと10分もあればこの世界は消えて無くなるよ？」

「いてて……忠告ありがと、こちらとしても今の状態は続けるつもりないから、ね！」

　何故か動けるフェアさんが何も無いところをノックすると、ガラスのように砕けて止まった時間が再生した。

「というわけで時間がまずいから早く終わらせようか！　マナちゃん、今の時代は神能2つ持ちが流行りみたいだし奮発しちゃうね！」

「――これは！　職業神と戦神（アテナ）の！」

「あははは！　遊んであげるけど、余計なことはしないでねー！　【致死の針千本】！」

　神能を渡しているところにハクサイちゃんが攻撃してきたが、あらぬ方向に飛んでいった。

　地面に生えた幻の桜に立っているコガネさんの幻術だろう。

「うちらも居るの忘れられちゃあ困るなぁ！」

「そうなのだ！　【竜神拳】！」

　仲間のフォローが温かい。

　殴られて地面を抉ったハクサイちゃんは指を鳴らした。今度は隕石……というには大き過ぎる月みたいなのを降らせた。

　〈にゅおぉー！　クーシル製対空賢者の塔ビーム、発射なのです！〉

　〈――！〉

　賢者の塔から放送で愛らしい声が響き、遠くから獣の遠吠えが響いた。ファユちゃんとライラさんだ。

　同時に放たれた光線が降ってきた星を見事砕いてみせた。

「封印中見てたっすけどファユちゃん頼もしく育ったっすねー！」

「私たちの娘ですからね」

「ふーん……【星の精鋭】」

　今度は砕かれた星の欠片がゴーレムになった。軽く1000は超える数の巨体は圧巻の一言に尽きる。

　だが、そういうのが得意な人員はこちらにも居る。

「よし、調整は終わった！　サイレンくん、出撃だ！」

　〈何でぼくがこれ担当なのさ！　もうやってやるけどさ！〉

「巨大ロボット、いいですね。今度乗らせてもらいましょ」

「かっこいいっすよ！」

「ミドリちゃん！　何あれ私も欲しい！」

　〈そこの野次馬、ちゃんと戦って！　【祖の海】【流動変化】『大いなる海よ、深き海よ、祖の海よ。産み生みし生命の源流を、未来永劫、この手に』【神器解放：大海之蒼牙（メガトライデント・ネオン）】！〉

　巨大ロボットのコクピットからツッコミを入れつつ海を出現させ、彼の神器に纏わせて巨大化させた。

「私は援護射撃に回ろう。行け、岩砕き系海の男の娘アイドル号！」

　〈その名前だけはナシ！〉

　イチャイチャしながらもトライデントを投げたり銃撃したりでゴーレムに関しては任せてよさそうだ。

「やるねー。でも、こっちもたくさん用意してきたからねー、負けないよ。【全解放】」

　一体どれだけのスキル、神能を持っているのか分からないが、周囲一面にあらゆる属性の攻撃が展開された。

「神能まるごと持ち出してきたっぽいねぇ。借り物だけでどれだけ凌げるか――私ももうひとつの神能、統合神の方で頑張ろっと！」

「フォローするで〜」

「物理系は任せるのだ！」

「細かいのは私がやっておくわ」

　絨毯攻撃はフェアさん、コガネさん、ウイスタリアさん、アディさんに任せよう。

　それにしても【職業神(？)の寵愛】だったのは神能二つ持ちだったからか。

　チラッと変化してないか確認。

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　スキル

【職業神の超愛】ランク：ユニーク

　職業神に尋常ではないほど愛されている者に与えられる。神能の一部を擬似的に使える。

　・同意した者に職業を与える

　・自分の職業を変更できる(ランクアップが必要なものは不可)

　・システム権限の例外化

　スキル

【統合神の寵愛】ランク：ユニーク

　統合神に愛された者に与えられる。神能を同時に発動することが可能。他にも色んな特典も……！？

　########

　職業神はマナさんになったからめっちゃ愛されてる表記になったのはいいとして、統合神はフェアさんのか。怪しいセールス臭いのは何なのだろう。他の特典……他にも合体できるとかかな？

　まあいい。とりあえずは全力でいこう！

「「……！」」

　マナさんに視線を送って頷き合う。

　もはや私たちの間に言葉は不要。

　負けられない戦いだからこそ、鮮明に勝利を想像できる。今の私たちは誰にも止められない――！

『条件を満たしました』

『レアスキル：【不退転の覚悟】が進化します』

『完了しました』

『ユニークスキル：――――』

「【未来への渇望（フェアリング）】！」

　進化したことでクールタイムを無視できたスキルを高らかに宣言した。

『「未来」をステータスに反映します』

『「ススムモノ」の未来を反映しました』