#30 【AWO】大会申し込み、観光予定です【ミドリ、マナ、サイレン】

 



『スキル:【縮地】を獲得しました』




「お疲れ」


「…………もう………………ムリ……」




 過酷な特訓が終わり、這いつくばるように外に出ると、朝日が昇っていた。図らずも徹夜してしまったようだ。




「朝食の時間になるから、着替えてくる」


「付き合って下さり、ありがとうございました」


「構わない。人に教えるのも中々自分を見直す良い機会になったからな」


「そうですか……」




 気を使ってくれたのかな。別に教えなければいけない義務なんてないのに、朝まで付き合ってくれるなんて、優しすぎる。


 退出するキアーロさんを寝そべったまま見送りながら、この二日の成果を確認する。



「ステータスオープン」


######


プレイヤーネーム:ミドリ

種族:天使

職業:大剣使い

レベル:23

状態:正常

特性:天然・善人

HP:4498

MP:1150


称号:異界人初の天使・運命の掌握者・理外の存在・格上殺し・魅入られし者・喪った者



 スキル

U:ギャンブル・職業神(?)の寵愛


R:(神聖魔術3)・飛翔3・縮地1・天運・天眼・天使の追悼


N:体捌き5・走術3



職業スキル:筋力増強4・大剣術3


######



 スキル

【神聖魔術】ランク:レア レベル:3

 神聖なる力で回復から攻撃までこなす。


 〖使用可能な魔術〗

 ・セイクリッドリカバリー

 ・ディバインウォームス

 ・フォンドプロテクション


 魔術

 〖フォンドプロテクション〗

 対象者に強固な防壁を張る。

 詠唱:「女神ヘカテーよ、我が祈祷の声に応じ、弱き者を守りたまえ」

 消費MP:200




 スキル

【縮地】ランク:レア レベル:1

 瞬間的に超高速で移動する。正面に敵がいると、一瞬見失わせることができる。

 CTクールタイム:30分




 スキル

【走術】ランク:ノーマル レベル:3

 走り上手になる。走ることに補正がかかる。

 アーツ:ダッシュ・持久走・疾走


 アーツ

【持久走】

 走っても疲れにくくなる。

 CT:180秒


 アーツ

【疾走】

 高速で行きたい方向へ走る。

 CT:300秒


######


 増えたりしたスキルは、こんなところかな。HPが若干減ってるのは体力が切れてるからなんだろう。そこら辺の仕組みはよく分からないけど。


 順調に育ってるってことで、画面を閉じ、疲労で重くなった体を何とか起こす。



「お腹空いたぁ……」



 壁にもたれかかりながら、食堂へ足を引きずって行く。



 途中、ここの使用人の方とすれ違ったが、奇異の視線を浴びてしまった。

 向こうは無表情を装っていたけど、遭遇した時にギョッとした目で見られたのはバッチリ私の目に映っている。



「おはようございます」



「うむ」

「ああ」

「おはようっす!」

「お゛あ゛お゛ぉー」



 私が最後だったようだ。皆食べ終わってる様子。

 一人声がすごい掠れてる人がいるけど、触れない方がいいのかな?


 いや、気になるなー。



「サイレンさん、声どうしたんですか?」


「ね゛ぶそぐで…………」


「夜更かしは良くないですよー」




 寝不足なんて、健康に悪いし、お肌にも悪い。乙女の天敵だ。サイレンさんが乙女なのかはともかくとして。



「ミドリさんも寝てないっすよね?」


「え」


「隈がすごいっす」


「あ、ほ、ほら、最近の流行のメイクなんですよ。決して寝不足とかでは……」



「そうなんすか! マナもやりたいっす!」



 何この子。ちょろ過ぎてかわいい。



「そろそろ食べたらどうだ」


「あ、はい。いただきます」



 リヴェレルさんに促されたので、大人しく着席して、食事を始める。



 献立は、貴族らしく……とはいかず、質素に、フランスパンとコーンスープ、ウインナーだ。

 昨日の夕食は、サラダ大盛りに小さなステーキと、ヘルシーだった。


 つまり、このご家庭は浪費せずに、質素かつ健康な食事を心掛けているのだろう。武士かな?




「ごちそうさまでした」




 腹ペコだったからか、あっという間に食べきってしまった。私が移動してる間に着替えと食事を済ませたであろうキアーロさんの足元にも及ばないけど。




「少し部屋に行くので、出立の準備をしておいてください」



 それだけ言い残して、早々に立ち去る。

 まだ現実で朝食食べてないから駆け足で。



 ベットにダイブし、ログアウト。






 ◇ ◇ ◇ ◇






「お待たせしました」


 現実でも朝の支度をして、みんなと合流。

 お屋敷の玄関で待ってくれていたようだ。




「行きましょうか。本当にお二人にはお世話になりました」

「なったっす!」

「ありがとうございました」




 三人揃ってお礼を告げ、深々とお辞儀をする。



「ああ。またどこかで」

「こちらも学ばせてもらったことはあるから、元気にな」




 キアーロさんのそれはお世辞か本音か判断できない。けど、その表情から健康を祈る気持ちは本物だと伝わってくる。



 ゆっくりと、帝国の首都である帝都に向かって東へ歩く。




「サイレンさんは、今後その槍を使っていくんですか?」



 訓練の時から槍の練習をしていたサイレンさんは、もらったであろう槍を背負っている。



「そのつもり。一番自分に合ったから」


「それなら良かったです」



 変にパーティーの構成を気にしてやりたいことを曲げられていたら申し訳ないからね。



「ミドリさん、配信って始めてるっすか?」


「あー……忘れてました」



 個人宅なので屋敷での配信は遠慮していたが、もう普通の道だから問題ないのか。だいたい一日ぶりかな。




「では、始めますね」



 いつも通り告知と開始ボタンを、押す。




「おはようございます」





[唐揚げ::おはミドリ〜]

[紅の園::おはミドリ〜]

[カレン::おはミドリ〜]

[隠された靴下::きちゃ]

[壁::おはミドリ〜]

[あ::ひさミドリ〜]

[蜂蜜過激派切り込み隊長::おはミドリ〜]




「おはっす!」

「おはよう」





[死体蹴りされたい::おはっす〜]

[蜂蜜穏健派下っ端::おはっす!]

[セナ::おはっす?]

[テキーラうまうま::おはよう]

[天変地異::おは]

[ヲタクの友::おはっす!]

[酢昆布::おはよー]

[神社応援::おはっす]






「サイレンさんも何か挨拶を決めないと、今の時代アイデンティティが無いと消えていくんですよ」


「適当言わんでよ、何か考えとくけど」



「あいでんって何すか?」


「強さです」


「なるほどっす!」




「テンション大丈夫?」



 夜更かしテンションかもしれない。途中で力尽きないといいなー。


 他愛もない話をしながら、のんびり進む。




「そうです、そろそろパーティー名を決めたいんでした」


「どした? 急に」

「?」



「普段は使わないので問題ないんですけど……」


「ならいいじゃん」

「マナは欲しいっす」



「配信のタイトルで全員分の名前を書くのがめんどくさいんですよ」



「おい」

「マナは強そうなやつがいいっす」





[マントヒヒヒ::草]

[階段::草]

[芋けんぴ::素直過ぎて草]

[あ::おいw]

[不腐夫::そんぐらい頑張ってもろて]




「そういう訳で、名前を決めたいんですが、何やらクランとかいう機能もあるらしいじゃないですか」



 ソシャゲとかでよくある、数人から数十人程で組むチームのようなものと同じ認識らしい。




「あるね」

「あるっすね」



 マナさん、これも知ってるのか。プレイヤーだけじゃないのだろうか?



「いっそのこと、組んじゃいません?」


「いいんじゃない?」

「賛成っす!」



「という訳で、パーティー名とクラン名は統一で今から決めていきましょう」



「そこは統一するんだ……」


「めんどくさいので」



「あ、うん……」



 書き分けたりする必要があるかもで、ややこしくなるのは避けたい。



「〘強い人達〙とかどうっすか!?」


「却下です」

「安直すぎ」



「ひぇ……」


「サイレンさん! もっと優しく言ってください! 泣きそうじゃないですか!」

「ブーメラン炸裂さくれつなんよ」



 可哀想は可愛いとは、よく言ったものだ。



「〘トップアイドル、サイレン様とその他〙とかどうでしょう?」


「流石に怒るよ?」

「…………っひぃ、面白い、っす……きゃはは!!」



 マナさんが何故かツボった。

 なんて可愛らしい生き物なんだ……!




「二人ともふざけ過ぎ」


「マナのは、真面目っす……ぶふっ、アイドル、サイレン…………っく!!!」

「私も真面目ですよ。やはりアイドルですし、センターに持ってきた方が良いかと思いまして」




「はっ倒すぞ?」



 怖い怖い。

 面白いからコレでいきたいんだけど、どうだろう?


 視聴さんの反応によってはごり押せるかもしれない。チェック。




[カレン::隈すごいし、徹夜した?]

[壁::テンションやばくて草]

[枝豆::雑すぎておもろい]

[天麩羅::マナちゃんのはガチっぽいんだよなぁ……]

[隠された靴下::ネーミングセンスよ]



 ギリギリいけるかな?


「視聴者の皆さんは私の案を推してくれてますよ?」


「なら共有してみて」


「へ?」


「近くの人に共有できるはずだから」



 確かにメニューにそんなボタンがある。

 共有先を決めて、チャット欄を共有できるようだ。




「よ、よよ、よく知ってましたね……」


「説明書は読み込むタイプだから」



 そんなことまで書いてあるのか……。ネットの情報しか調べてなかった。





[あ::あーあ]

[ゴリッラ::俺らのせいにしないで]

[死体蹴りされたい::一瞬でバレる嘘つくやん]

[紅の園::追い込まれたね]

[天変地異::モロバレで草]




「あー、どうやら視聴者さん達が手のひらドリルしているので、やめときますね。サイレンさんは何か案、ありますか?」




「露骨に逸らして…………うーん、まずは共通点から考えるのもいいかも」


「おー、良いっすねー」



「人員が増えた場合、変わってきません?」


「なるほど。でもそこまで考えたら何も出てこないよ?」



 確かに。どうしたものか…………。


「例が欲しいっすね」


「そうですね。皆さん、有名なクランの名前を挙げていってください」





[セナ::剣&竜]

[あ::大連合]

[芋けんぴ::Bright Bravers]

[壁::大連合]

[ゴリッラ::じょんすみす]

[隠された靴下::大連合とか]




「なるほど……。大連合とやらが一番強いのでしょうかね」



 確かに下調べの時にどこかで見た覚えがある。





[天変地異::強さは最強ではない]

[あ::規模が大きいのと、フットワークが軽いだけ]

[燻製肉::最強は未知のクラン、フロントラインとか言うところ]

[蜂蜜過激派切り込み隊長::フロントライン、剣&竜、Bright Bravers、の三強]



「違うんですか。フロントライン、剣&竜、Bright Bravers、とやらが強いそうですよ」



「強さは別にいいんだけど」

「かっこいい名前っすね〜」



「サイレンさんだけ、まだ案を出していないのですが、出てきそうですか?」




「〘オデッセイ〙とかどう?」





 ……へぇ?



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