###37 結成、第四班!
ハイライトの無い完全に死んだ目の少女がこちらに歩いてきた。流石にこちらは3人揃ってるから譲歩してくれたようだ。少し近寄り難い雰囲気を漂わせていたが、意外と優しい人なのかもしれない。
「はじめまして、一応ホームルームで隣の席ですが、改めまして。先日編入してきたミドリと言います」
「ウイスタリアなのだ!」
「ネルバなのです!」
「――私はソフィア・アディ。ソフィアは被りが多いからアディとでも呼んで」
彼女はボブくらいの短さの黒髪を後ろで切りそろえており、前髪はほとんどなく目の横にサラッとかけ、横髪は耳を出す形でスタイリングしている。耳にはシンプルながらオシャレなイヤリングを付けている。
制服は私とウイスタリアさんの青緑色とは色違いで黒色である。今更だがネルバさんのもピンク色だ。
改造制服が流行りなのだろうか。
「制服が気になる? 装備スキルと同じ要領で【色彩変更】で変えられるからやってみたら?」
ぶっきらぼうながらしっかり教えてくれるあたり人の良さが出ている。デレの少ないツンデレかな。
「【色彩変更】、薄緑色」
「【色彩変更】、灰色なのだ!」
白の部分が多い制服なのでどの色でも合うため、髪色に合わせて爽やかな感じにした。
ウイスタリアさんも白銀色の髪に合っていてオシャレな着こなしだ。
「教えていただきありがとうございます、アディさん」
「ほめてつかわす! むふん」
「別に大したことでもないわ。それよりダンジョンに行くみたいだけど何ができるの?」
「私は前衛の回復ですかね」
「殴り合いなのだ!」
「後方から支援と爆撃なのです!」
「じゃあ私は中衛でサポートに回るからその方向で」
サクッと役割分担が決まった。
次は課外学習の行き先と受ける依頼を決めることに。
「何か希望は?」
「大図書館、中央省庁、精霊領域……精霊? なんだか面白そうですね」
「どこでもいいのだ」
「ネルバも仕事柄行かない精霊領域とかがいいのです」
「精霊領域で決定と。依頼は――これとかどう?」
精霊領域の依頼一覧からアディさんが指したのは、前提条件としてレベル100以上が1人以上いる場合のみ受注可能なものだった。つまり少なくともアディさんのレベルは100以上なのだろう。
内容は……「遺跡の異変調査」、余程の難易度なのだろうか。
「いいですね、歯ごたえがありそうです」
「なんでもいいぞー」
「精霊由来の掘り出し物があれば尚よしなのです」
「ちなみに私は105、みんなは?」
「143なのだ!」
「82なのです」
「199です」
やはりクーシルの人はレベルが高いのか。ダンジョンがあるからレベリングを行っているとかなのかな?
「問題無さそうね。難易度が高いほど講評も良くなるしこれで決定で」
「OKです。ところで精霊領域ってどんな場所なんですか?」
私の質問にネルバさんが自慢げに語りだした。身振り手振り交えて説明していて愛らしい。
「精霊領域とは、その名の通り精霊族が集まって暮らしている場所なのです。〘ツィファー〙の“薄命”、フィア様が管理されていて心安らぐ地として旅行で人気の場所なのです」
おー、憩いの地的な場所みたいだ。
メルヘンチックでとても楽しそうである。
まあ依頼を受けるからあんまりゆっくりできそうではないけれども。またマナさんを取り戻したら一緒にハネムーンに行けばいいし。なんならファユちゃんも連れて家族旅行もいいかも。
私がそんな妄想を繰り広げていると、思い出したかのように制服のポケットからゴソゴソと何かを取り出した。
動物のデフォルメの形の付いた指輪である。
ライオン、ニワトリ、ヒヨコ、ちょうちょだ。何このチョイス。
「これは{絆の指輪}?」
「{絆の指輪}ってなんなのだ?」
「デザインは可愛いですけど魔道具ですか?」
「ふふん! これは自作の{絆の指輪}、みたいなやつなのです! 性能は主に魔力を注いで所有者同士での念話通信が可能なのです」
それは便利だ。いつでもどこでも念話なら静かに通信できるから尚いい。静かな場所でも気にせず連絡できるのは素晴らしい。なんならこれを対賢者同盟で使いたいがプレイヤー間なら通話機能でことが済みそうだよね。現地人、ウイスタリアさんしか居ないし。
「もらい! 一番強そうなやつなのだ!」
「なら蝶をもらうわ」
「私は雷を降らすタイプのニワトリと縁がありますしそれにします」
「残りのヒヨコはネルバのものなのですね! えへへ、親子みたいなのですね」
「確かに! さては狙いましたね!」
「うぇっ!? ち、ち、違うのですよ!!」
愛いやつめ。私と親子プレイがしたいからと迂遠なやり方をしおってからに! このロリっ子め! かわいいかよ!
「まあ冗談はともかく、わざわざありがとうございます。あれ? もしかしてこうなることを先読みとかしてました?」
「占い師なのだ?」
「この時期にこの授業では班決めをやるってのはみんな噂で知ってるから不思議なことでもないわ。知らないのは編入してきたアンタらくらい」
「なのです」
あ、結構有名な話なのね。単独行動が多そうなアディさんが知っているくらいには知れ渡っているなら今日のためにあらかじめ準備していてもおかしくない。ネルバさん、用意周到で有能だ。
若くして博士号を持ってるだけある。
それぞれ指輪をはめていっているので、私もに左手の中指にはめる。指輪って指ごとに意味があった気がするけど生憎と詳しくは知らないのでテキトーだ。
「えへへ、おそろいなのです!」
ネルバさんが人差し指に指輪を付けた左手を4人の中央に出す。私もそれに続けて手を添える。
「これぞチームって感じがしますね」
するとウイスタリアさんものって手を突きつける。彼女は右手の人差し指に付けている。
「たまにはこういうのもいいのだ」
3人の拳が集まり、流れ的にアディさんの方に視線が集まる。これぞ同調圧力。集団行動の恐ろしい性質の片鱗が垣間見えている。
アディさんはため息を盛大に吐いてから、中指に指輪を付けた右手を差し出した。目線を逸らして照れている様子。
「柄じゃないんだけど」
4人の中心で指輪が互いに当たる。
まるで動物が身を寄せあっているようだ。
「ネルバたちは仲間なのです! これからどんな試練が待ち受けようと力を合わせて乗り越えるのです!」
「おー!」
ネルバさんが「えいえいおー」の要領で手を高く掲げたので私も真似して手を振り上げる。
「? おー?」
ウイスタリアさんもよく分からないまま真似し――
「お、おー……」
渋々アディさんもノってくれた。
その後先生に行き先等をまとめた紙を提出し、授業としては終わりなので一緒に下校することになった。
今日はみんな二限終わり、ネルバさんも教授としての仕事が無い日らしいのでお昼ご飯ついでに遊びに行くことにした。主にネルバさん主導で。アディさんもハイテンションなネルバさんを拒めず引っ張られている。
行き先は……近くのショッピングモールらしい。
いいね、とても青春っぽい。折角だし配信しよっかな。たまにはJK天使の日常をお届けしてあげよう。
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