###5 【AWO】虹になったぜ【レインボーミドリ】
「さて」
色神の神能を入手してから1日が経った。
あれからレイさんの神殿で色々試して、その後港町行きの乗り合い馬車に遭遇したので好意で乗せてもらった。そして気付けば盗賊のアジトで拘束されていたので騙されたのだと分かって殲滅してやった。
その縛り上げた盗賊の山を背に、私は配信を開始していた。
「皆さんこんにちは。最近は塩コショウを多めにかけて食べるのがマイブーム、レインボーミドリです。今日は王国領の港町――ケネルへ向かいます」
[階段::こんミド!]
[セナ::絶対健康に悪いやーつ]
[無子::虹色なのか緑色なのか]
[唐揚げ::見た目はいつも通りな気がするが]
[キオユッチ::塩コショウは万能調味料、はっきり分かんだね]
[あ::向かうってまた迷子になるのでは? 仲間はどうしたよ]
「仲間たちとはケネルで合流する予定なんですよ。ちなみに先に言っておきますと迷子にはなりませんよ。私、レインボーなったので」
残念ながら今回は期待には応えられない。
私にはとっておきの策があるのだ。
「【飛翔】!」
高過ぎない程度に飛び上がり、頑張って目を凝らす。遠くで僅かに海が見える。海岸線に沿って視線を動かしていくと、かろうじて建物の影が見えた。
「あっちですねー。いでよ、虹の道!」
【飛翔】では効果時間的に休み休み飛ぶ必要がある。だが、神能なら無制限に自身の手足のように扱えるのだ。
[枝豆::!?]
[燻製肉::なにそれすごい]
[ベルルル::かっこよ]
[壁::何そのスキル!?]
[蜂蜜過激派特攻隊長::スキル? 発動のエフェクトが無かった気がしますが]
[紅の園::綺麗……]
足裏から虹を出しながら、私はサーフボードのようにして空を滑る。
空気抵抗をおさえるため、虹色のヘアゴムを生成して髪を束ね、目の乾燥対策にもゴーグルのようなものもパッと作って装備してね。
私は今、虹になっている。
「んんぅ! 気持ちぃ〜!!」
[セナ::おー!!]
[味噌煮込みうどん::キメてて草]
[あ::万能すぎひん?]
[ミンミンみかん::気持ちよそさそー]
[燃え袖::サーファー魂目覚めた?]
[ピッ::虹に乗ってる????]
[コラコーラ::説明はよ]
「えー? しょうがないですねー。これはスキルではなく、由縁あって頂いた神の力です。神能っていうそうですよ。普通のアクティブ系のスキルとは違っていちいち発動させようとしなくても、自分の体のように動かせます」
なお、現実の私は事故の後遺症で下半身は動かない模様。何だか悲しくなってきた。た人からしたら笑えない話なので口には出さないけれども。
ちなみに
ネアさんの生物を何か好き放題作り替えるスキル、あれは発動の口上とかしていなかったから普通ではないのだ。神能……ではないと思うけどどうなんだろう?
そんなことを考えながら虹の上をスイスイ進んでいると、下から凄い勢いで何かが飛んできた。
鋭い
「ちょ! あぶっ、危ないですねっ! ぬうん! 駆け抜けますよー!!」
真下から一直線に飛来する鳥を躱しつつ速度を上げる。
少しずつ鳥の数が減ってきたことから、もうじきこの鉄砲玉アホ鳥の生息圏を抜けるはず。
え? 名前は今適当につけましたが何か。
「バーカバーカ! 突撃しか頭にない脳筋鳥ー! お前のかあちゃんゴーリラ! ……あれ? それなら胎生だからゴリラが産まれてきますよね? 正しくは“お前のとおちゃんゴーリラ”でしょうか? そもそも卵生の生物と交配でき――いや、これはいわゆる異種〇とかいう話題ですしセンシティブ判定になるのでは? BANされませんかね?」
[ピコピコさん::色んな意味でこわいって]
[天々::さては深夜テンションか?]
[唐揚げ::マジで虹キメてるだろこれ]
[階段::お、おう]
[紅の園::唐突な急ブレーキに視聴者は置いてけぼりですよ]
[メール::しょ、初見です……(ドン引き)]
[枝豆::鳥の代わりに謝るから許してクレメンス]
「よく分かりましたね。昨日この力を手にして色々試すうちに朝になっちゃってまして。仮眠の2時間しか眠れませんでした」
何せ憧れのレイさんの力だ。それはもう擦り切れるくらい練習しましたとも。
「とりあえず進みましょう。あんな突撃無脳鳥に用はありま――」
「とりぃ!」
私の前に、大きな鳥が現れた。
灰色にところどころ緑色の模様が入ったフォルムからして、先程の脳筋鳥どもの親玉だとは思うが……
「なにこの間抜け」
「とり!!」
[壁::鳴き声の癖が強い]
[あ::これはマヌケ認定も致し方なし]
[蜂蜜過激派特攻隊長::気を付けてください! そいつ森に棲む風の災獣です!]
[ベルルル::なんかかわいい]
[ミニサイズ::図体の割りに残念な子感が凄いね]
[スコ::もしかしてさっきの鳥達のお母さんなのでは?]
「こいつが風の災獣ですか? まさかー。さっきのやつらのゴリラ呼ばわりを気にした親が来たただけですよきっと。親フラってやつです」
[メール::謝れば許してくれるかな?]
[ノキノキ::親フラではないんよ]
[あ::親フラではないと思う]
[蜂蜜過激派特攻隊長::ガチの災獣なんです……]
[天井::ごめんなさいしよ、ね?]
災獣ねー。くくり的には出会った当初のどらごんもそう呼ばれてたし、今の私からしたらそこまで脅威ではないからなー。
「――――!」
「うわ、危ないですね! って蜘蛛!? ムリムリ、蜘蛛だけは勘弁してくださいよ! 『
空中で虹に乗って留まっているというのに、どこかから蜘蛛が噛みちぎろうと強襲してきた。【天眼】の赤い線で見えていたので当たるわけがないけど。
そして、私は嫌悪感から反射的に臨戦態勢に入る。
「――!」
「とりぃ!」
「なるほどなるほど。大方ここがこの二匹のナワバリのちょうど境目で、同時に侵入者を排除しに来たってとこですかね。その様子ですとそっちも仲はよろしくないようで助かりますよ」
[ペーター::1対1対1か]
[レバニラ::大丈夫?]
[階段::やっておしまい!]
[蜂蜜過激派特攻隊長::その蜘蛛、影の災獣です!]
また災獣ね。
「ここは何ですか、森の災獣育成保育園ですか。私のロリ認定は人型じゃないと出しませんよ」
軽口を叩きながらも、私は{
「――」
「おっと、転移系のスキル……いえ、
「【とりぃぃ】!」
「こっちは切れ味抜群の風の刃と。並の人間だったら瞬殺できる性能はしてますね。ま、私は大天使なので関係ありませんけど!」
私は闘力を剣に纏わせて、風の刃と蜘蛛の牙を弾く。
彼我の実力差を理解しているのか、あるいは本能なのか、2対1の状況に持ち込んできたようだ。
蜘蛛は鳥の影に潜って私の足裏から出てきたから、影の中を表面積、体積関係なしに移動できるスキルを持っているのは確かだ。鳥は子分と違って距離をとって封殺する戦闘スタイル。
どちらも私にとっては相性が良い。
鳥は射程を伸ばす【無間超域】で、蜘蛛は【天眼】で問題なく捉えられる。
確実に一撃で仕留められるのだ。
「――!」
「【とりぃ】!」
「空中戦だから手数が少ないのか、まだ小手調べの段階だからか知りませんけどワンパターンですよ。さようなら、【間斬りの太刀】」
正面の鳥と背後に回った蜘蛛を直線上になるように体を傾け、2本の剣で空間を断つ回転斬りを放った。
カウンターは綺麗に決まり、鳥と蜘蛛は真っ二つになって地上へ落下していった。
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
「お、レベルが2個も上がりましたよ。実力の割りに経験値ウマウマですね」
[紅の園::技の冴えが仕上がってる?]
[あ::つっよ]
[唐揚げ::前回の世界樹のときが特殊過ぎる相手だったから薄れてたけど、普通の相手なら余裕で勝てちゃうんだったわこの大天使さん]
[蜂蜜過激派特攻隊長::それぞれ結構な数のプレイヤーの討伐隊(レイド規模)が返り討ちにあった相手なんだけどな……おかしいな……]
[ヲタクの友::さては深夜テンションなのはPvPの練習してるのでは?]
「そうそう、昨晩はこの虹の練習をして仮眠の夢の中で実戦シミュレーションしてましたからね。これぞホントの睡眠学習ってね!」
[枝豆::ハイハイスゴイスゴイ]
[壁::さてはPvP対策なんてしてないな?]
[みとぅ::睡眠学習って万能なんだなぁ……]
[セナ::夢まで戦ってるのは嫌じゃない?]
[レバニラ::強いのにテキトーな戦闘狂ってことじゃん……]
「PvPですか……まあなんとかなるでしょ」
実戦経験の数と質で言えば他のプレイヤーより上をいってると思うし、対人戦なんてちょくちょくやってるから今更戦い方を変える必要も無いだろう。
次のイベントに思いを馳せながら、港町ケネルへの短い虹色の
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