#3 冤罪です
連行されて通されたのは応接室と書いてあった部屋。テーブルを挟んでソファーが二つ。ソファーを作るのって中世ぐらいからでもできるのかな?
やっぱり魔法とかスキルで作ってるんだろうか?
「準備してくるので、大人しく待っててください」
「わかりました」
ソファーに深く腰をかけ、足を組む。なぜかため息を吐きながら出ていく受付嬢さんを流し目に、メニューを
[味噌煮込みうどん::偉そうで草]
[お神::除王様器質があるね]
[カレン::何してるの?]
[壁::ソファーあるんだ……]
[病み病み病み病み::初見です]
[蜂蜜穏健派下っ端::図々しくてすき]
[芋けんぴ::プロフィール変わったな]
チャットでも気づいた人がいるようだ。このコメントの人達、有能だし、供給が少ないからやってあげるという意思表示。
「この配信のサムネイルと、アカウントのアイコン等、ちゃんとしたやつに変えました」
サムネイル、つまり配信の顔といえる画像は今足組んでるのを写真で撮って使った。初期装備がボロボロの布切れみたいな服だからカッコつかないけど。
アイコンはもちろん顔どアップ。アップしすぎて目しか見えないようにした。オシャレなはず。
「先に宣言しますが、基本的に配信は続ける予定です。宿等は配信終わらせてから取ったり戻ったりします」
周りに誰もいないうちに言っておく。
[枝豆:¥500:ありがとう!]
[階段::たすかる]
[スクープ:¥50000:何かあったら手伝います]
[芋けんぴ::やったー!!!!]
[あ::時間とかは?]
[紅の園::初見です]
[ベス::ありがてぇ]
[唐揚げ:¥600:毎日あげちゃう]
[検非違使::たすかる]
[壁::たすかる]
[蜂蜜過激派切り込み隊長::たすかる]
[天麩羅::初見です]
[隠された靴下:¥3900:]
[燻製肉::たすかる]
供給が少ないせいで、需要がとんでもないことになってるみたい。
配信時間は、今は夏休みの後半だから午前は空いてて、夕方まではリハビリがあるから……
「配信時間はとりあえず、基本的に朝から昼、夜から深夜までの予定です」
[あ::了解]
[味噌煮込みうどん::夜勤だから午前来まーす]
[芋けんぴ::把握]
「まあ、夏休みの間はって感じですけどね。変更とかゲリラとかは告知しますので」
このゲームのアプリで、持ってない人も入れれて、アカウントを作って色々できる優れもの。配信を見るのも、SNSとしても、フレンド登録もできる。この配信を見るのもそのアプリ越しだ。
[隠された靴下::フォローした]
[カレン::分かりました!]
[蜂蜜穏健派下っ端::フォローしました]
[お神::アイコンの目、鬱くしい]
[芋けんぴ::いつでもおk]
[油揚げ::もうフォロワー2万行ってて草]
「え、そんなにですか?」
通知切っていたけど、視聴者数と噛み合わなくない?
フォロワー、20326人。視聴者数、約2.5万人。
噛み合ってたなー。
「いや、えぇ……」
物珍しいのは分かるけど、そんなに?
「お待たせしました……どうかしました?」
「いえ、少し外の風景を眺めてまして」
「窓の外、洗濯物しか映ってませんけど」
「……」
[竹籠::草]
[丸呑み権兵衛::草]
[階段::草]
[おへそ::草]
何か上手くいかない呪いにでもかかってるのだろうか?
「…………とりあえず、こちらの魔道具に触れてください」
差し出されたのは灰色の箱。
「魔道具ですか?」
「ああ、異界人だと知らない方もいらっしゃいますね。説明は面倒なので、簡単に言うと、便利な道具です」
雑すぎる。あとで視聴者さんに聞こ。
言われた通り、箱に手を置く。
「何も起きませんよ?」
「問題ないみたい……何で一人で喋ってたんですか?」
「独り言が多いんですよ」
「そうなんですね、紛らわしい」
受付嬢さん、可愛い系だから我慢してたけど、もうやめた。
「大切な時間も奪われて、謝罪も無しなんて……ヨヨヨ…………」
「す、すみません!」
もうひと押し。
「依頼の一つぐらいできてた時間なのに……」
「え、あ……えーと」
チラッと上目遣いで覗きながら、続く言葉を待つ。クレーマーの対応に慣れてなさそうなのは、新人なんだろう。
「はあ、分かりました……。薬草採取の依頼分の貢献度を足しておきます」
「そんな……ありがとうございます」
若干ピキってる気がしないでもないが、勝ち取ったり!
[病み病み病み病み::草]
[芋けんぴ:¥10000:釈放おめ]
[壁::最低で草]
[唐揚げ::うわ]
[あ::がめつい]
[味噌煮込みうどん::受付嬢さんキレそう]
冤罪の対価だし、これぐらいしてもらわなきゃ。
まだお昼には早いし、依頼受けようかねー。
「依頼受けたいんですけど、どうすればいいんでしょう?」
「まず戻ってから説明します」
イライラして早足の受付嬢さんに置いていかれないように、少し早足で追従していく。
「ボードがあるので、そこから依頼書を
人がそこそこ集まっているボードに向かう。受付嬢さんは受付に戻ったから一人で。
「君、初心者だよね? よかったらパーティーどうだい?」
目がキラキラしてて、作り物っぽさが出てる男の人が話しかけてくる。現実準拠にしないとこんな風になるのか。よかったー。
「ねえ、どうだい?」
「誕生日パーティーでしたっけ?」
完全に聞いてなかった。なんて言ってたっけ?
「いや、一緒に組んで依頼を受けないかって」
なるほど。
「いくら貰えるんですか?」
「え?」
何を言ってるか理解出来てない様子だけど、何が分からないのか。
「いえ、女性を侍らせようとしてるカスにしか見えませんので」
「え……」
[蜂蜜穏健派下っ端::ナイス!]
[枝豆::ナンパ拒否たすかる]
[死体蹴りされたい::貴方にフラれたい]
[検非違使::罵られたい]
少しチャット欄をチラ見。変態しかいないのかな?
「これ何か分かりますよね? 貴方の痴態が世界中に公開されてるんですよ」
「げっ! 配信者かよ!」
軽く脅すとそれだけ言い残して去っていった。
「この依頼にしましょう」
適当にナンパ男をあしらってる間に、ざっと見て良さげなのを見つけていた。
依頼の紙切れをボードから外して、受付に持っていく。
「いちいち揉めないと気が済まないんですか?」
お叱りを受けちゃった。でも私は悪くない、はず。
「お構いなく。これ、お願いします」
Fランクで受けれるのが少ない中、唯一の討伐系の依頼だ。
「分かりました。あ、教官制度がありますが、どうします?」
印鑑を押して依頼書をしまってから聞いてくる。
「教官制度って何ですか?」
「戦ったことの無い素人のためにそこそこ強くて教えるのが上手い冒険者が一緒に着いて行って教える制度です」
かなりプレイヤー向けの制度だ。貰えるものは貰っとく精神で
「お願いします」
「分かりました。少し待っていてください」
そう言って奥に引っ込んだ。今のうちにストレージの方を整理しよー。
メニューからストレージ画面を開き、確認。所持金は50000
Gの相場は分からない。今度市場で確認しなきゃ。
あとは初心者武器セットがある。選択すると選べるような画面が出た。
短剣から盾、手裏剣まで色々なものがある。
「火力が正義ですよね」
大剣を選択。手元に大剣が出てくる。残念なことに既に刃こぼれしている。
初心者だからってボロボロのを持たせていいわけではないでしょうに。
付属の鞘のようなもので背負う。想像以上に重いが、その分威力が出るはず。
「お連れしました」
「よろしくな! 嬢ちゃん!」
気の良さそうなガタイのいいおじさん、偶然なのか大剣を背負っている。
「よろしくお願いします」
お辞儀をすると軽く会釈をしてくれる。
「東門から出てすぐの平原に行くぜ」
「はい」
着いてこいと言わんばかりに、ゆったりとした足取りで歩き始める。配慮に感謝しながら大きな背中に着いて行く。
「獲物は噛みちぎり狼だったな?」
「そうです」
他にFの討伐依頼は無かったからね。大剣の距離ならおそらく噛みつかれることも無いだろう。
[芋けんぴ::戦闘やった!]
[ごみ::wkwk]
[カレン::大剣で大丈夫?]
[環境副大臣::イッヌかわいそす]
そういえば痛覚設定があったはず。下げとこ。最低の50%。MAXの100%なんてしてる人いるんだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます