#獣たちの出会いと日常#
コガネとメロスは、魔大陸でメロスが宙を舞っていたところをキャッチしたのが出会いだった。
しかし、お互いのそれ以前のことはここでは関係の無い話。
――これは、コガネとメロスが公国のシンパルクに到達した後の話である。
◆ ◆ ◆ ◆
――ミドリが初ログインしたのと同時期。
「はぁはぁ……」
〈馬鹿なの? 普通泳いで迂回する場面だったじゃない〉
「やって、濡れるのは……勘弁やさかい…………」
あまり褒められたやり方ではないルートでここまでやってきたコガネ達は、息も絶え絶えに森の深くまで逃げ込んでいた。全て正面から蹴散らすのも不可能ではないが、長期的な視点で敵が増えすぎるのを避けたのである。
「ん? そこに誰かおる?」
〈――――〉
コガネは木陰に隠れているチワワを見つけた。
その小さな体躯に似合わず、警戒の念を込めて毛を逆立てている。
「メロスはん、何て言うてるかわかる?」
〈分からないわ。でも、攻撃はしないで〉
「流石にチワワに攻撃するほど余裕
〈それはよかった〉
〈――〉
距離をとってるチワワにコガネは、そっと近寄って優しく抱き上げた。
その行動にチワワは一瞬ギョッとしたが、すぐに温もりに包まれて眠ってしまった。
「やっぱし疲れとったんやな。結構汚れとるし、どっかで洗うたげたいなぁ。メロスはん、この辺で寝泊まりできそうなとこと、体洗える場所、あったりしいひん?」
〈無茶言うわね。ちゃんと
「もちろんや【幻影・透過】」
〈【巨大化】…………うん、両方あるわ。怪しげな木造の家と、その近くに水源ね。結構奥の方だから歩くけど〉
「隠れなあかんし、ちょうどええなぁ。行こか?」
名も無きチワワを抱えながら森の奥へ入っていく。
◇ ◇ ◇ ◇
「拠点も見つけられたし、久しぶりの水浴びも済んだし、この子の名前決めなね」
〈――――〉
この中で唯一の雄であるメロスが水浴びをしている間に、大事なことを決めようとしていた。
しかし、当のチワワは首を傾げている。
「ん~、君には強さをつけてほしいさかいなぁ。チワワでもこの世界では平等に殺されてまうし。となると……」
〈――〉
吠えることも、念話が通じるわけでもない。それでもチワワは力強く目で何かを訴えた。コガネも何となく感じ取れたのか、少し驚いてから妖艶に微笑んだ。
「ええねぇ。やる気満々って感じでええわぁ。なら君は――」
〈――〉
「――ライラ。強う勇敢な猟犬から借ってなぁ。名前負けしいひんように気張ってな」
〈――――!〉
◇ ◇ ◇ ◇
「そろそろ生活も安定してきたし、町で稼いでこよかなぁ」
森林の空き家を発見してからおよそ一週間が経過した頃。
コガネは、狩りだけの生活では限界が来るのを危惧してそう呟いた。
〈――〉
〈近くの人間の町に? あんた喧嘩売らない?〉
「……うちを何やと思てるんや」
〈血気盛んな噓つき〉
〈――――〉
「悲しいわぁ。でもほんまに気を付けるさかい平気やて」
〈せめて目立たないようにするのよ〉
〈――〉
居間の椅子から立ち上がり、机に置いてあったフードのあるコートを身にまとう。さらに軽くスキルを発動。最後に鏡を確認してから自慢げに二匹に尋ねる。
「どや。バッチリやろ?」
〈まあ怪しいけどないよりはマシかもね。前壊滅させた異界人の集団でも、暗かったのもあるし特徴が見えなければいいんじゃない?〉
〈――!〉
「おーおーメロスはんは難しいこと言いはるなぁ。ライラはんなんて、似合うてる、
〈――――!〉
「ほら言うとるって」
〈はいはい、ちゃんと約束通りライラの訓練はしとくから。安心してちゃっちゃといってらっしゃいな〉
〈――〉
「メロスはんはうちに冷たいなぁ。ほな、いってきますぅ」
〈――〉
◆ ◆ ◆ ◆
日常に特別な刺激は無いが、それぞれの人生ならぬ獣生の中でも幸せな日々が続いている。
それは、コガネがあっという間に冒険者ランクをBランクにしても、ミドリ達と出会っても変わらない。
――このままみんな幸せに平和な時間を共にする。
少なくとも
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