第169話 謎の玉 再び

 森での確認業務(リフレッシュ合宿)は結局3泊になってしまったが、昼前にはゲネブに帰ってきて解散した。各自なんだかんだいって疲れているだろうと、皆そのまま帰宅し早めに寝るようにと。明日の日の出に間に合うようにと言い含める。


 俺も今日はこのままゆっくりと過ごすことにした。


 ……こういう時って<良き眠り>スキルがやや邪魔っけに感じる。昼から寝てしまったために夜に眠れなくなる。魔法の練習でもするか……




 その後は特に問題なく日々が過ぎていく。なんとなくパワーレベリングがメインの職場に成りつつ有る……。


 11月も終わろうとするある日の朝の事である。




「マジか……」


 俺は布団の上に寝転がり、呆然と上を見上げていた。


 金色のガルの横に、少し小さめの赤い珠が浮いているのだ。

 ガルと同じ用に光沢の有るガラス玉のようなものの中に、真っ赤な火の様な物が内包されている感じなのか?


 ……いや、予想してなかったわけじゃない。雷魔法の後に火の基礎魔法をスクロールで覚えようとした時に失敗している。ガルが雷の龍珠であるのなら、火の龍珠も発生しておかしくないはずだとは考えていたが……。


 やっぱこれ、触ると熱い系かな? そんな事を考えながら動かそうとするが、ちょっと動かしにくい。ガルを動かす練習をしていて大分動くようになってきた感が有ったが初めのときのようにもどかしいんだ。


 ガルと赤いやつを比べるとガルのほうがやや大きい事を考えると、もしかしてこいつら成長するのか? なんて思う。





「いいな~。 私も欲しい!」

「欲しいの??? まじで?」

「だってなんとなく主人公っぽいじゃん? しかも勇者でしょ?」

「お? ……ふむ。じゃあみっちゃんがヒロイン?」

「おおお~」


 なんとなくバカップル的なやり取りをモーザとスティーブが冷めた目で見てる。今回もモーザは興味深げにちょっと触っていたが、やはり熱いらしい。火だな。


 今朝頭の中を見てみたが、はやり正体不明の塊は更に小さくなっていた、後1つくらいこの珠の種がある感じだ。だけど……何の魔法だろうか。


「いちゃついてる所悪いけど、今朝親父から変な話を聞いたんだ」

「ん? 変な話?」

「少し前らしいんだが、あのオークの死体が博物館から消えたらしい」

「は? まさか生きていたのか?」

「いや、どうやら外から侵入した形跡が有ったらしいから、誰かが盗んだと言う見方らしいんだが」

「……まじか。なんだ?」


 その話を聞いていたみつ子が少し考えながら言う。


「なんか、そんな話王都でもあったんだよ。だから私達も高ランクの魔物を狩ってきた時は現地である程度さばいて持って帰るようにって王都のギルドで言われたの」

「さばけば取られないって事は、完全に体がそのままの魔物が狙われるのか? 希少な魔物の剥製でも集めてるやつが居るのか?」

「さあ……私も通達を聞いたくらいだから良くわからないんだけど、そういう金持ちとか居るのかなあ?」

「ううむ……まあお金は既に貰ってるからうちは良いけどな……っと時間やべ。じゃあみっちゃんとスティーブはそっちの方よろしくな

「はーい。任せて。ねっスティーブくん」


 今日は、リンク、オーヴィ、モナが受けた依頼先がもっと人手が欲しいということでサクラ商事を紹介してくれた仕事があるのだ。みつ子とスティーブにはそっちに行ってもらうことになっている。なんでもクルミの様な硬い木の実を割って中の実を取り出す仕事らしい。



 久しぶりに、俺とモーザの2人だけのレベリングだ。少し遅れたせいで先に西門に来ていた司祭たちに挨拶をし本日の業務が始まる。


「むむ? 玉が増えたか?」

「あっああ……なんでしょうね。それより今日は回復居ないんで頑張ってくださいね」

「ああ、こないだの件が有るから7日目だしな、もう大丈夫だ」

「お、いい感じですね、ちょっと痩せたんじゃないですか?」

「むっ! そうか?」

「……たぶん」


 オークが現れた時の司祭は初日はノーカウントと言うことで、それから3日のサイクルを2回こなし、合計7日間のレベリングを行っている。今日が最終日と言うことで、レベルもあがり、体力も魔力量も増えている。それを考えるとみつ子の回復無しでも大丈夫だろう。あんな事が有ったのでもう止めて違う司祭が来るのかな? ってのも有ったが2人とも頑張って今日まで続けてくれた。



 問題なくこの日も終える。なんだかんだあったけど無事に太っちょ司祭も最後まで頑張ってくれたので良かった。これで2人分完了しまた入金される。


 司祭と分かれるときに、ちょっと気になっていたことを聞いてみた。


「すいません。神話で巨人と戦う龍が居るって話があるって聞いたんですが」

「おお、教会に興味を持ってくれたか」

「あ、はい。まあ、それで。その龍って5体いるって話でしたが、どんな龍なんですか?」

「ふむ。業務外だが特別に教えてやろう。教会に伝わる神話によるとだな。雷龍。炎龍。水龍。黒龍。光龍の5体だな」

「なるほど……」

「ふぉっふぉっふぉ。君も若い男の子だな。龍の話に興味があるのか?」

「そっそうですね。カッコいいなって」

「時間が有るときに教会に来ると良い。他にもいろいろな話を聞けて勉強になるぞ」

「そうですね、また時間が有るときにでも……」




 そうか。龍珠が龍にまつわるものなら、その5種類のうちの3つなんだろうな。雷、炎はあるってことであとは、残りの3つか……光龍は、俺が光魔法を普通に覚えられているから違うよな。てことは、水か、黒……ん? 黒ってなんだ?


 ……ていうか。あれ? そう言えばフェニード狩りの時に出会ったドラゴンのロッソは3体の龍が死んで、残り2体って言ってたよな……。


 ううむ。


 ……いやいやいやいや……まさか……なあ。





※少しわかりにくいようですので解説入れます。脳内設定ですが。

 山脈の向こうでは5体の龍を将として、多数の竜が戦ってるイメージです。

 ロッソは火竜で、「竜」です。よろしくお願いいたします。

 

 対するも古の巨人と、それに率いられる巨人族が居る。そんなイメージです。

 古の巨人に関しては人数などもまだあまり考えてないですw


 別に書いた創世神話の方でそこら辺の簡単な設定を作ってあるだけですが。参考になれば。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る