第275話 村の奪還大作戦 4
フィービーがアンデッドはいつ復活するかわからないからと、集めたオークやゴブリンを山にして燃やすように提言する。燃やす段になり、フィービーが木の枝などを取ってこようとするので、みつ子の魔法だけで十分だよと止める。
え? なんて顔をするが、みつ子の火魔法と風魔法を組み合わせた巨大バーナーの魔法で一気に焼却処理を始めると、あんぐりと口を開けて見つめる。ちらっとチャイカの様子を伺うと同じような反応だ。
実際、俺達の実力を見せたほうが良いのか、隠したほうが良いのか分からない。ただ、おそらくだがあの赤銅色のオークはそれなりに重要な駒だったんじゃないかと考えている。まだまだ強いのはいると思うが、ここは更に畳み掛けるように色々と見せておくのが良いんじゃないかという判断だ。
「あ、そう言えばさ、船って見えるところで待機しているんだっけ?」
「たぶん……オゾン号の方は港が無いから接岸できないって言ってたもんね」
「これで皆村に戻ってくるならさ、呼び戻しても良さそうだな」
魔物の焼却処理はみんなに任せて、俺は港の方に行く。少し離れたところで泊まっている船に必死で手をふるがあまり反応が無い。<千里眼>で見てみるがデッキに人影が見えない。今昼飯とか食ってたりするのだろうか。
俺は、<ラウドボイス>を発動させ、出来る限りの声で「おお~~~い」と怒鳴りつける。するとすぐに人が出てきてこっちに気がついた。
「なんて声してるんだ……もしかしてラウドボイスか?」
再び港に係留した船の上から船長が濁声で聞いてくる。俺は爽やかなクリーントーンを拡声させて「そうですよ」と答えておく。船長としては珍しいものを、と答えるが、船乗りの中ではたまに<ラウドボイス>を使っているのもいるらしい。
俺はそのまま船に飛び乗り、今の状況を伝える。避難していた村人たちが今コチラに向かっていて、もう1時間もすればやってくるんじゃないかと。それと同時にアンデッドが再び村に現れる危険もあると説明する。
「アンデッドと戦ってみてどうだ?」
マーフやカミラなどの戦闘員枠の人員はそっちのほうが気になるようだ。大陸にも出現するオークやゴブリン、フォレストウルフなどのアンデッドと遭遇した話をする。そしてそいつらはおそらく通常の魔物より力などが強くなっているだろうと。
倒した当初は、アンデッド達の切り札的にあのオークを考えていたのだが、その後みつ子と話をし、みつ子がゲネブに来る前にワイバーンなどのランクの高い魔物も喪失した事件があった話をしていた。そんな大物がアンデッド化していたら……そんな事を考えるとあまり気を緩めないほうが良いのだろう。
そしてモルニア商会の話もする。なんとなく彼らが怪しいという話から今の所こちらは気が付かないふりをしているとも。やはりというかその話に一番食いついてきたのはプレジウソだった。
「プレジウソさん、ここに来た時も隣の船を気にしてみていたみたいですが。教会的になんか有ったりするんですか?」
「見ていたのか? ……そうだな」
プレジウソは少し考え込む。無口だからと言うより部外者の俺に言っても良いのかと言う逡巡なのだろう。しかし大陸から遠く離れた島で仲間の協会関係者なんて居ない。やがて、言葉を選びながらゆっくりと説明を始める。
まずこの島に着いた時に驚いたのが、隣の船にある刻印が『スラバ教団』と言われる教団のシンボルマークによく似ているという事だった。
「スラバ教団??? 初めて聞きますね」
「ゲネブの様な大陸の南の方ではほぼ駆逐されているからな。いわゆる邪教だ。ヨグ神を祀る教団だ」
「ヨグ……なるほど、アンデッドですか」
「そういう事だ」
うーん。じゃあ、プレジウソはかなり突っかかりそうな気がする。聞くと今回の同行も、アンデッドの島に行くという情報から教会からアンデッドと戦うスキルを持ってる司祭を、ということで指名もされているらしい。教会としては、スラバ教団は絶対悪の様な存在らしく、まさに悪即斬しちゃいそうな雰囲気だ。
俺としては、ちょっとづつ様子を見るつもりで居たが、宗教関係者っていうのは過激な人間も多そうだしな、いきなり全面戦争を始めそうで怖い。
「あのう、しばらく気が付かないふりというか、知らぬ顔で普通に彼らに接してもらっていいです?」
「……どういう事だ?」
「いや、まだ彼らがなんでこの島に来ているか分からないんです。ヨグを祀る教団だからこの島にヨグの遺跡があるっていうだけかも知れないですが。この島の人達にも数十年の付き合いがあるらしく、突然やって来た僕らよりも時間と信頼は向こうのほうがあるのかも知れませんし」
「……なるほど。しかし奴らを放っておく事は出来ないぞ」
「どうやら島の内地、おそらく遺跡の方だと思いますが、そちらにも教団の人間が残ってると思うんです。今日村に来て出会ったチャイカって奴は、貴重な薬草を探しに行って1人だけ無事帰れた様な事を行っていましたが、おそらく嘘だと思うんで。できれば全部いっぺんに処理しちゃいたいかなって」
「ううむ。様子を見ることに関しては了解した」
まあ、もともと一般的な日本人だった俺から見れば、教会サイドもいかがわしく感じてしまうんだよな。仏壇だってあったし、神社に初詣だって行ったけど、宗教に対してのアレルギーって日本人は割とみんな持ってるんじゃないかって。
実際みつ子や裕也といった転生者の中で、俺だけ女神様とやらに会ってないし、実在していると言われてもあまりパッと来ないんだ。
だけどまあ、そんな事は言わない。言えやしない。理屈で考えて教会サイドの方が一般的なこの世界の人間たち寄りの宗教だろうし。アンデッドを生み出した神なんて信奉する意味が分からねえ。
流石にまだ船を無人にするのに抵抗があるということで、船員たちは船に残る。その後順次交代で地上に降りる予定だ。船に慣れている男たちと言っても流石にずっと地上に降りれないのはきついのだろう。
俺は皆を引き連れ、焼却作業をしているみつ子たちの元へもどった。
「大体焼き終わった?」
「うん。もう骨も炭化しちゃってるよ。でもさあ、こんな派手に燃やしちゃって良かったのかな?」
「うん?」
「遠くから煙が上がってるのを見て、みんな村は駄目だって、オゾン号に戻っちゃったりして」
「え?……ははは……大丈夫……だと思うよ?」
実際言われるとちょっと不安になるな。
だが一時間もすると無事に村人たちが戻ってきた。
※すいません、最近遅筆で。
今日分、ようやく書けたのでアップを。ていうか。明日も大丈夫かなあ。なんて不安がっていますが、頑張れるだけ頑張りまっする。
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