第274話 村の奪還大作戦 3
<前書きとして>
すんません。前回の投稿分ですが、フィービーが村に残っているのに陰のように無登場になってしまっていたので加筆修正いたしました。4~500文字ほど増えております。ご了承ください。
◇◇◇
「おいおい……嘘だろ?」
もう5年以上も前だが、今でもはっきり覚えている。俺たちがオークの集落を潰しに行った時に出会った親玉。ゲネブの警護団員は、ユニーク個体か、もしかしたらオーガとハイオークとの混血なのかもしれない等と話していたが。他に居るオークたちと明らかに強さの度合いが違った。
5年前は、こいつがガルを思いっきり斬りつけ、衝撃で感電して動けない所を俺がトドメを指したのだが……あの時どうしたっけ? 燃やしたんじゃなかったか?
……いや。珍しい個体だからと、ゲネブの研究所で研究すると持っていったのか。
思い出してきた……そして、数日後に遺体が盗まれた。
「なんで、お前……生きて……いないのか?」
『ソウダ。オ前ニ、俺ハ、殺サレタ』
「そんな事もあったなあ」
『今日ハ、オ前ガ、俺ニ、殺サレル』
「へえ」
いや、だけど。どうしてこんな遠くの島に居るんだ? それを聞こうとするが、コイツはノンビリと会話をするつもりは無いらしい。口元に薄っすらと笑みを浮かべて切りかかってくる。それを受けながら尚もオークに尋ねる。
「だから、どうしてお前がこの島に居るんだよっ」
『オ前ヲ殺スタメダ!』
「くっそ。訳わからねえ!」
「ショーゴ!!! そいつだっ! そいつが族長を!」
ミドーの横でこちらを見たフィービーが声を上げる。なるほど。コイツは強かったもんな。なんとなく族長のレベルも頭の中でイメージする。
実際、勇者スキルもレベルが上っているのに、ヤツとの力比べにはやや分が悪い感じがする。やはりアンデッド化で底力がアップしてるのだろう。だが差はわずかだ。対応できないレベルではない。
フン。
剣を受けながらガルを差し向ける。こうして切り合いながらもガルを警戒しているのか上からの斬撃が異様に少ない。相当に警戒しているのだろう、案の定ガルを近くに動かすとオークは過剰に避ける。やはりこいつに対するトラウマみたいなのはありそうだ。
くっくっく。今度は俺のほうが口元に笑みを浮かべてブンブンとガルとメラをけしかける。
『クッ……』
途端に俺から距離を取り、「ウォオオ!!!」とオークは怒りを露わにする。あの頃と違って好きなように動かせるんだ。話しかければ応えるしな。……起きていればだが。
俺がオークの親玉と遊んでいる間にも、ミドー達は残りの雑魚オークの始末を終えていた。戦い終わった後に、俺に手を貸すか聞いてくる。
「いや。大丈夫だ。こいつはもう1人で十分戦える」
『……舐メルナ!』
「本当さ。あれから5年経ってるんだぜ? お前はアンデッド化して少しは力が増したくらいだろ? 俺は日々進化してるんだぜ』
『貴様……』
「よーし、じゃあ。この珠は使わないでやるよ。怖いんだろ? この龍珠が」
俺は龍珠を俺の後ろの方にぐぐっと移動させながらオークに向かってニヤリと笑いかける。オークは黙ったまま俺の龍珠を見つめる。
「きっちり勝っておきたい」んだよ
『……後悔スルナヨ』
全力で行く。オークの真っ赤な目と一瞬の交錯。こんな目が赤かっただろうか。アンデッド化してからなのか。やつは俺の意思が本気なのか確認するかのように俺の目をぐっと見つめる。
1秒の寸暇。
突如、俺とオークの剣が乱舞する。俺はオークの剣筋をすべて見極め対処していく。そしてそこに剣聖から奪った剣技を織り交ぜていく。
やはりというか、アンデッドの体内には血は巡っていないようだ。そして感覚神経も無いのだろう。それゆえに。飛び交う剣の嵐の中で、オークは自分の不利を知るのに幾らかの時間が必要になった。
防いだつもりの剣がオークの皮を斬り、筋を斬り、骨を断つ。やがて言うことを聞かなくなった四肢に愕然としながらも敗北を受け入れていた。
『何故ダ……』
「相手が悪かった。そういうことじゃないのか?」
『何故……我ハ、蘇ッタノダ』
「それは、知らない。蘇らせたのは人か? 魔物か? それかもっと上の?」
『人ダ……』
「そうか……それは――」
もう一声、そう思い質問を投げかけようとした時、突然糸が切れたようにガクリとオークは崩れ落ちる。目からも色がなくなったように、入っていたものが抜け出たようにも感じられた。
「へっ」
既にオークは事切れていた。いや。アンデッドに事切れるとかあるのか? だがもはや永遠に口を開くことは無いだろう。
……
「隠れていなかったんですか?」
振り向くと、チャイカが建物の影からこちらを見ていた。
途中から感知に引っかかっては居たのだが……。
「あ、い、いや。俺も手伝えることが……あればと思ったんだ」
「……そうですか」
「そ、それにしても、凄いじゃないか。あのオークが何も出来ずに……」
「あのオーク? 知ってるオークなんですか?」
「いやいや。知らないが……見るからに強そうだったじゃないか」
「う~ん。まあ、他のオークよりは強そうでしたけどね大したこと無いですよ。見てたと思いますが」
「そっそうなのか? それにしても……何か喋っていたのか?」
「え? オークですよ? 会話なんて出来るわけないじゃないですか。何を言ってるんすか」
「……そうだな」
感知で動きを見ていたが、コイツが、何かをしたようにも感じたがそこまで派手な動きなどは無かった……確証もない。疑わしきは罰せずはこの世界でもスタンダードなのか?
だがやはり油断はしないようにするべきだろうな。俺がオークと喋っていたのも見られた。あとで皆にも伝えておこう。逆にコイツラも、俺達に対してかなりの警戒をするだろう。何を考え、何をしたいのか。じっくりと見極めないとな。
三十分でオゾン号まで帰ったと考えると更にそこから村人が来るのに3時間ほどか、まだまだ村人が帰ってくるまで2時間以上はかかりそうだ。
10匹以上居たアンデッドと、族長を瀕死の状態にまで追い込んだ親玉オークをあっさりと始末したのを見て、180度態度が軟化したフィービーに村の情報などを聞いて時間をつぶすことにした。
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