第180話 旅から帰宅して
次の日、朝食を頂いていると、まだチソットさんは嬉しそうに電話の話をしている。でも電気じゃないしなあ。龍脈を使うから龍話とか? まあ壊れたと言うが過去に遠くの人と話せるアーティファクトが有ったような話を以前ジロー屋のオヤジから聞いてる。それと同じ様な名前になるんだろうけど。
どういう仕組みか分からないがチャンネルは割と簡単に増やせそうな話だった。コレが色んな所に増えたら混線したりで面倒くさそうだが、なんとかなるのかな? 現状の型でチャンネルを変えて特定の5チャンネルで通話ができるようにして5個セットで広めるのか、それとも日本の電話の様に電話に不特定多数にかけられるようにするのか、そこら辺が悩むところなのかな? 戦後の昔の電話は中継基地に電話をしてオペレーターに相手の番号を伝え、そこから決められた相手に繋げてもらうっていうシステムだったような気がするんだが。そうなると電電公社的な会社にしていかないと厳しいよな。
いずれにしてもコレをビジネスとしてやっていくとなるとチソットさん1人じゃ厳しいのか。
昨日1分か2分使っただけでも魔石ボックスの魔石5個を使い果たしてしまう事を考えると中々一般的にはランニングコストが高くて広まらない気はする。国の領主や大商会、ギルドなどの公的な機関でまずは使う感じになるのだろうか。
自分がやるわけじゃないが色々考えていると楽しくなってくる。
チソットさんの家を出るときに、俺とみつ子で持っていた魔石は全て置いてきた。色々実験とかもするだろうしな。なんだかんだで100個近くあったのでチソットさんは慌てていたが、自分も楽しみだからと半ば強引に渡した。
ゲネブに向かいながら指折り数えているとみつ子が「どうしたの?」と聞いてくる。
「んと、多分明日くらいでモーザがワンクール終わるから、1日休んで次の日からのクールは2ペアでまた行けるかなって思って」
「おお、省吾君働く気満々ですね。いい傾向だと思います」
「1人育てるのに一週間は必要だと考えると、どんどんやらないと違うことが出来ないんだもん」
「まあねえ。転生者にしては地味な仕事していますよね」
「なんかビッグな事してえぜ!」
「成り上がりですか? じゃあまずは私との結婚かな?」
「え??? ああ……とりあえずゲネブ帰ったら家来る?」
「うふふ。良いのかな? 宿代もケチれるしね」
そう言えば、あのアパート。女性を連れ込んでも怒られないのかな?
本気で走ればもしかしたら1日でゲネブについたかもしれないが、それなりのペースで途中で1泊野営を挟み、次の日の昼過ぎくらいにはゲネブの外塀が見え始める。
「ちょっと開いちゃったから、中に入る前にロシナンテの顔見てきて良い?」
「良いよ。まだ明るいし急ぎの用事もないしね」
相変わらずアホヅラのロシナンテにしばらく顔をベロベロされると満足したようで、ゲネブの街に入っていく。いやあ。やっぱホームだな。
帰った足でそのままジロー屋に行く。エルフの集落で買った乾燥機の様な魔道具をお土産にと思うんだ。いつでも天気が快晴とは限らないからこういうのがあれば屋内でケルプの乾燥とかも出来るのかな? なんて考えたんだが。
みつ子は例によってロシナンテの唾液でベトベトになったと事務所で顔を洗いに行くと上がっていった。道中昼飯を軽く食べたのでジローは夕食でもとお土産を渡したら俺も事務所に上がっていく。
「まだモーザ君たち帰ってきてないみたいね」
「流石にもう少ししてからだろう。時間も有るしフォルの手紙を届けに行きたいんだけどみっちゃんも来る?」
「うん、行く」
フォル宅に行くと、スフェールさんは娘と2人で何か作っていた。焼き菓子だろうか。なんとなく子供とそういうのが出来る余裕が出てきているようでこっちとしても嬉しい。
「これ、フォルから預かった手紙です。4月くらいにゲネブのブライト商会が毎年エルフの集落まで隊商を出すんです。その帰りに同行して帰ると言う予定だと聞きました」
「ああ、フォルは元気でしたか?」
「はい、エルフの集落で良い師匠に恵まれているようで、楽しそうにしていましたよ」
「そうですか。良かった」
「スフェールさんもお仕事はどうですか? 大変じゃないです?」
「クレイジーミートの方はとても楽しく働かせていただいております。ショーゴさんには感謝してもしきれません」
「いえいえ、スフェールさんが頑張ってるからこそですよ」
「ありがとうございます」
なんとなくスフェールさんも手紙を読みたいだろうしな。目の前で読んで泣かれてもリアクションに困りそうなので、また顔出しますねとフォル宅を後にした。
フォルの手紙を渡すと少しホッとするな。やっぱ人様のお子様を預かっていると責任も発生するしな。
皆が帰ってくるまでもう少し時間がありそうだったので、ランゲ商会の家具屋に行き爺さんにあの部屋でみつ子との同棲をしても良いか聞きに行く。爺さんは驚きながらも住むのは問題ないぞと言ってくれる。
「ただ、コレを寝室の壁に貼っておいてもらっていいかの?」
「なんですかこれ?」
「壁の防音性能を高める魔道具じゃ。ま。2人とも若いしな。一応じゃ」
「ははは……」
流石にみつ子も顔を赤くして苦笑いしている。
その後、みつ子との同棲に必要そうな物を買い、頼んでおいたみつ子のサンダルなどを受け取ったりと時間をつぶす。大聖堂に寄って帰ってきたのを伝えようと思ったがそこまでは時間がないか。明日にでも顔を出せば良いかな。
事務所に戻ると、既にモーザ達が帰ってきていた。氷室のコアなど事務所に置いたままにしておいたので帰ってきたことに気づいて待っていたようだ。俺たちの顔をみてスティーブが4人分お茶を入れてくれる。
「おう、おかえり」
「ただいま、だいぶ旅行気分で楽しませてもらったわ」
「だろうな、フォルはどうだった?」
「いい感じで修行しているって話だけど、4月くらいに帰ってくるって言ってたぜ」
「そうか。まあ、ようやく全員集まる目処がたったな」
うん、やばい。コイツラにお土産無いわ。この世界にお土産文化が有るのかはわからんが、とりあえず俺の笑顔が一番のお土産だと信じよう。
「今日でレベリングが終了の日だっけ?」
「おう、無事に終わったぜ」
「ありがとな。明日にでもブラン司祭に帰宅報告してこないとな」
それからしばらく旅の話をするが、長くなりそうだからと皆でクレイジーミートに行き、だいぶ遅くまで盛り上がる。仲間ってやつは何よりも捨てがたい。明日は休みということでモーザも少し飲みすぎるくらい飲んでいた。
「さあ、お姫様。狭い家ですが」
「あらまあ。ふふふ。」
ヨーロッパのアンティークなアパルトメントの様なモダンな雰囲気がある我が家はなにげに自信があるんだ。きっとみつ子も気に入ってくれるだろう。ベッドはホテルのダブルベットのサイズはないが、セミダブルくらいの大きさは有るのでなんとか寝れるだろうし、十分に2人でもやっていけると思うんだな。
「これがサクラなのね」と具合良さげに俺のお気に入りのソファーにみつ子が座っている。
「うん、良いじゃない。窓からの景色も好きよ。気に入ったわ」
「良かった。まあとりあえずよろしくね」
「うん。一緒に異世界ライフを楽しもうね」
「おう」
転生した異世界で。少しずつ彩りのある環境が整いつつ有る。
まだわからないことも多いけど。出来るだけ楽しみたいものだな。
※ありがとうございます。コレで第5章ゲネブの省吾~謎の玉編~は終了となります。次回より第6章ゲネブの省吾~続謎の玉編~ 始まります。
え? 章タイトル適当ですか? ごめんなさい。
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