第300話 ヨグ神の呪い 3


 <ノイズ>の有用性が世間一般に広がり品切れが続出したら困ると、うちの職員達にはなるべく<ノイズ>を覚えさせるようにしている。その中でも魔法が専門職のポジションのみつ子が使う<ノイズ>はパイオニアの俺のにも負けないパワーが有る。


 それを考え、蛇に対してのノイズ攻撃のメインはみつ子に任せる。俺は<ノイズ>を体にまとい突っ込んでいく。二重の布陣でのアタックだ。


 マナポーションと言えども飲めば即増える訳ではない。食道を流れ胃に入りと、その過程で少しづつ吸収されていく……らしい。しかも口にしたのは数滴だしな。戦闘中の今では殆ど気休めだ。この最後のアタックの途中で俺の意識がぶっ飛ばないようにと言う、お願いの気持ちである。



 ドゴーン! ボォワア!


 聖刻を刻んだ石と共に、みつ子の聖魔法を含んだ火球が蛇に命中する。蛇は首の一本を犠牲にするかの様に突き出し火球を向け受ける。そのまま首が弾けると共に、胴の部分に<ノイズ>がかかる。

 行けっ! みつ子の<ノイズ>で蛇の形を作っていた魔力の塊がその形を崩し、中に浮かんでいるボストークの姿が見えた。だが、見えるのはボストークの背中だ。


「くっそ。背中かよ! でも行くっ!」


 俺は瞬間的に足にだけ剛力を入れ一気に詰める。みつ子の<ノイズ>は持続的にボストークの見える場所を開け続ける。さすがだ。やりやすいぜ。


 フンッ!


 一番力の入りそうな上からの打ち下ろし。蛇は<ノイズ>で散らされながらも健全な首はまだまだ有る。俺の打ち込みに合わせ首を伸ばしてきた。俺はタイミングをきっちり見切り、触れることなく蛇の胴までかいくぐっていく。よし行ける。


 ゾッシュッ!!!


 一撃離脱。首の追撃を避けるためにボストークを斬ってすぐに離れる。すでに死んでいるため魔力的な防御はゼロに近い。首から肩口にかけて断ち切る。呪いの魔力の渦の中でボストークが首から下げていた首飾りが外れて宙を漂う。首飾りから漏れる魔力は確かに色味が違う。同時にみつ子が<ノイズ>を切り、蛇の胴が元に戻りだす。


「駄目かっ!」

「でも、今見えたねっ!」

「うん、次はあれを斬る!」


 一か八かだ。あの首飾りを斬っても駄目だったら、面舵逃げろだな。


「来るよっ!」


 蛇の方も危機感を持ち出したようだ。意思があるって事はやりにくい。ジュウジュウと<聖刻>の石畳の上を煙を上げながら滑り出し、大首を伸ばしてくる。


「きっと焦ってる」

「うん」


 蛇の攻撃を避けながらタイミングを測る。みつ子が聖魔法を混じらせた小さめの火球をたくさん作り始める。

 10個も作っただろうか、準備が整ったみつ子が声をかけてくる。


「省吾君!」

「おうよ」


 みつ子が一気に火球を飛ばす。ここまで数が有るとそこまでのコントロールは出来ないのだろう。外れるのも有るが逆に蛇には牽制になったようだ。火球のアタックに完全に蛇がのけぞる。そしてダメ押しの<ファイヤーランス>

 俺はみつ子から<ファイヤーランス>が放たれたタイミングでダッシュする。コアを守ろうとしたのだろうか、なんとか動ける最後の1首が<ファイヤーランス>に突っ込んでいき四散する。


 完璧。


 さらにみつ子の<ノイズ>で蛇の胴が散り、再び中が露わになる。有った。


 今度は首の邪魔もない。俺は一気に詰め、首飾りを真っ二つにする。



 ……。


 ……。


 ボッフ。



「やったかっ!」

「うん、やったね!!」


 コアを壊された呪力の塊は必死にその形を止めようともがいている。だが端の方から霧のように蛇の体が崩れていく。


 お。


 もしかしてこれで一気にこの呪力が大気に散っちゃえば封印しなくても良いんじゃね? みつ子もレベルを100近くまで上げなくて良くなるから助かるな。うん。


 崩れていく蛇を背に俺はみつ子の方を向き親指を突き立てる。みつ子も嬉しそうに親指を伸ばして応えた。


 ――ゾクッ。


 え?


 形を失った呪力が部屋に充満したと思うと、一気に俺に周りに集まってきた。


「んぐっ! ちょっ」

「しょう――」


 みつ子が慌てて俺の名前を叫んだが、呪力の奔流に飲み込まれ、聞こえなくなる。


『不味いな』

『選ばれたのね』


 その中でガルとメルの声が聞こえる。俺は必死に<ノイズ>を体にまとい魔力の塊を散らそうとする。<ノイズ>の障壁の隙間を侵入してきてるところはみつ子の<聖刻>がバチバチと呪力を拒絶している。少しは保つのか?


「どういうことだ!」

『お前は神の祝福を受けている』

「だから何だ!」

『コアになる資格が有るということだ』

「……はぁ???」


 くっそ、訳が分からねえぞ。チクショー。呼吸まで苦しい。どこまで<ノイズ>が使えるんだ。


 ブォアア


 ふと俺の目の前の呪力の渦が散る。みつ子か???


「省吾君大丈夫???」


 だがバチバチと<ノイズ>で散った呪力がすぐに閉じていく。みつ子の<ノイズ>は切っていない。くっそ。こいつ。だんだんと<ノイズ>に対応し始めている。

 俺は全力で<ノイズ>を展開し閉じようとする呪力を一気に押し開け、外に出ようとする。


 クラッ。


 あ……。


 魔力が……。


 俺の魔力が完全に切れた。


「省吾君っ! 省吾君っ!」


 目の前の呪力が閉じていく。必死の形相のみつ子が見えなくなっていく。俺は魔力切れの症状で意識が落ちそうになる。


 ガル……メラ……なんとか出来ねえか………。


『残念だが、お前の魔力が切れている今、どうにもできん』


 ……そうか……悪いな……。



 体に刻まれた<聖刻>もどんどんと分解されていくのを感じる。


 ……やべえ。



 ……気持ちいい。




 ※風邪っぽいから早く寝ようとしたんですけどね……脳内で小説の続きを整理しだしたら脳内が活性化しちゃって。書くまでねれない状態に。

 ということで。300話です!

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