第12話 魔法ゲットだぜ
鞄の改造をしている間に服を買ってくれると言うので、遠慮せず服屋についていく。
とはいっても狭い村だ。服屋は雑貨屋の隣りにあった。
俺はと言えば、だんだんとヒモ生活に慣れてきてる気がする。駄目スキルとか発生しないか心配になる。ステータスに<寄生虫Lv3>とかあったらまじで凹みそうだ。
服屋の印象は……何と言うか巣鴨の商店街にあるお年寄り向けの店?と言えばなんとなく想像出来るだろうか。
無造作に積まれている商品の中から、ロンTというかスモックみたいな上着と下着を何着か買い。ズボン……と店の人は言っていたが生地の厚いステテコの様な物も購入。裕也たちもなんか買うのかな?と思っていたが服を見もしてない……「私たちは必要あればゲネブの街でブランド物買うわ」……そんな感じか?
服も買ったし……こんな村では何気にやることが無くなる。
まだ30分経ってないんじゃないかな。
「う~ん。なんかスクロールあるか見てみるか」
何??? 裕也が教会に行ってみようと提案する。お? おお! まさかいきなり魔法生活始まっちゃうのかYO!
こういう時の答えは常に決まってる。「YES」だ。
「ううう嬉しいけどっ!おっお高いんでしょ?」
「きもいわ!」
「キモイ言うな。パトロン。」
「パトロン言うな。ただの投資だ。返せよ」
ふふ……知ってますよ。
現代版あしながおじさんは大抵ツンデレで「投資だ」って言い訳を言うんですよ。
うんうん。裕也さん。俺解っちまった。あんただ。あんただよ。
俺のチートはあんたそのものさ!
裕也様取り敢えずはお前の嫁を
「エリシアはやらん」
なっ!!! 読心スキル!!!
狼狽えフラつきながら付いて行くと、すぐに教会らしき建物の前につく。司祭が回復魔法を使えるということで、村の診療所を兼ねているらしいのだが、ほぼ民家だった。
まだ20代っぽい司祭の人に裕也がスクロールがあるか尋ねると、生活魔法くらいしか無いですよと言いながら建物の奥に入っていき、しばらくして3つほど羊皮紙の様な紙を丸めたものを持ってきた。
スクロールをテーブルに置くと一つづつ確かめていく。付箋のような物が張ってあって魔法の名前と値段が書いてあるようだ。
「えっと。これは光源ですね。説明はいります?」
「いや、大丈夫だ」
「はい。もう一つが……ノイズですか。多分僕が赴任した頃から売れないでずっとありますよね、これ。良ければ半額でいいですよ。後は……ブランクですね。クラス1です」
裕也は少し思案して、光源とノイズを購入した。
「ここで使っちゃった方がいいかい?」
「はい、お願いします」
「ほれ、まず光源からだな。省吾使ってみろ」
ほほう……説明も無しに渡してきやがった。
こっちを見る裕也の目も、期待感にあふれてやがる。
俺はスクロールを渡されてしばし逡巡する。そして高々と上に持ち上げ……叫んだ。
「いでよ光源! そして世界を照らし給え!」
ブッッッ!
司祭が吹き出した。
ハヤトも一緒にケタケタと笑っている。
よしっ! それだけで俺は救われる。
「ぎゃははは。省吾お前サイコー」
腹を抱えて笑ってる裕也をエリシアさんがたしなめる。
「あなたちゃんと使い方教えてあげなさい。ショーゴさんも悪ノリしないの。スクロールはね、開くと魔法陣が書いてあるでしょ? そこに手を置いて魔力を流すと起動するのよ。そのまま魔力を流した人を認識してその人に魔法が入り込んで行く感じね」
「はい。申し訳ないっす。やってみますね」
机の上に広げたスクロールに手をおいて、言われたように魔力を流してみる。しばらくするとボーっと魔法陣が淡い光を放ったと思うとシュッっと消えてしまった。それと同時に俺の中に何かが入ってくるのを感じる。
おおお?
何ていうか頭の中に光源の魔法があるのを感じる。手とかが神経が繋がっていて何も考えずに動くように、頭の中に居る魔法が神経で繋がってるように自然に使えるような、そんな感じだった。
試しに使ってみると。目の前に光の玉が発生する。ゴブリンの巣で裕也が出したのと同じものだった。
「おお。魔法だ。こないだゴブリンの巣で裕也が出してたのより明るいんじゃないか?」
「バカ言うな、あれはゴブリンに気が付かれないように光量を調節してたんだ。本気出せば〇陽拳が出来るくらい明るいわっ」
「マジか……戦闘にも使えるなそれ」
「まあ、レベルを上げないとそこまでは出来ないがな」
「ところで、もう一つのノイズってなんだ?」
裕也に尋ねると、司祭が答えてくれた。
「それは、付与された相手が雑音のような耳障りな音が聞こえるんです。デバブの一種だろうと言われています。あまり使う人も居ないので情報も少ないんですよ。属性は無属性と言われていますがそれもちゃんと検証されている訳じゃないんです」
「え、デバフなら一応戦闘に使えるんですか?」
「そこも冒険者で使っている人を聞いたことが無いのでなんとも言えないんですが、使われ方としては農夫が畑を荒らす魔物を追い払うのにまれに購入する方が居ます。動物系の魔物だと割りと効果はあるみたいで……ただ安いスクロールと言ってもそれなりにはしますし、キャパも使ってしまうのでやっぱり人気はないですね。龍脈の無いようなところで開墾した農民で、冒険者も雇えない人とかがたまに選ぶ位ではないでしょうか……」
聞くほどに、使わなそうな予感がしてしまう。
半額って言ってもそれなりにするんじゃないの?
裕也のほうを見て聞く。
「これ、ご購入しちゃって大丈夫なのか?」
「魔法の攻撃が弱くて剣で戦うなら、これで一瞬でも相手の隙を作れるんじゃないのか? 強い相手であるほどその一瞬の隙を作る為に剣士ってのは苦労するんだ。どうせ器に空きがあるなら入れておいて無駄ってことはないだろう」
「なるほど……納得だ」
そうして、俺はノイズの魔法も手に入れた。
すると、司祭がノートとペンを持ってきて、取得スキルと取得者の名前を書くという。
なるほど、こうやって魔法を使える人間を管理してるのか……国も。
使い終わったスクロールは本部に送ってまた再利用するらしく回収された。
そうこうしている間に、時間も経ったし次元鞄を受け取って昼飯食おうと言う話になった。
「うわ、これ完成度高いじゃないですか。しかもこれ伸縮性あっていい感じに固定されますね!」
出来上がった次元鞄(改)は思いのほか具合がよくなった。ベルト側から10㎝ほど革の紐が付いていて先に金属のアタッチメントが付いている。本体側の革紐はゴムほどでは無いが多少伸び縮みする革素材が使われており、先にベルト側のアタッチメントに固定できる金具が付いている。つけた感じはしっかりと体に抱きつく感じで飛び跳ねても鞄は揺れない。
裕也が、金具だってこれは安いものじゃないし、サービスはまずいだろうと追加料金を払おうとするが、おばちゃんは頑として受け取らない。
しばらくやり取りをしていたが、裕也が折れる。改めておばちゃんにお礼を言って店を出た。
昼飯に連れて行かれた店は、昨晩飲んだ居酒屋だった。
「あれ?ここのマスター昼も営業してるのか?」
「お、気が付いたか。違うんだ、この村はそんなに豊かって訳でもないからな、昼だけとか夜だけとかで店舗を構えるのも無駄なんだ。朝と昼はマスターの妹夫婦が食堂をやってる。まあ地方の村に行けばよくある営業形態だぞ」
裕也が薦めるだけあって料理はなかなか旨い。裕也宅の料理は裕也の好みの味付けなのかな?と考えていたが、どうやらこの世界の味付けは元々日本人にもイケる味のようだった。長粒種ではあったが米もあるのはやはりありがたく思う。
昼飯が終わるといよいよダンジョンに向かう。
ハヤトは勉強に連れて行かれた。
村には、寺子屋のように私設の塾を開いている先生がいて、ハヤトも定期的に勉強に来ているらしいのだが、今回の合宿中は毎日行くと言うことだ。ハヤトが旅行気分ではしゃいでいるのを見ていただけにチョッとだけ可哀想になった。
最後までダンジョンに着いて行きたいとゴネていたが最後はエリシアさんの一喝で抵抗むなしく連行されていた……日本でもありそうな風景だな。
半べそかいてるハヤトに、のど飴を一つあげた。
ハヤトよ。雄々しく生きろよ。
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