第258話 ぶらり王都
翌日の朝、みつ子はまだ帰ってきておらず、3人で飯を食いながら予定を詰める。フルリエとゾディアックは2人で「フリーズ」の練習などを兼ねて王都の外に出るようだ。
王都の近くにはダンジョンは無く、最寄りのダンジョンと言ってもゲネブで言えばスス村のダンジョン位の距離は在る。日帰りで行ける場所じゃない。そのため普通にフィールドの魔物を狩るようだが、ここら辺はどういった魔物が居るのだろう。ちょっと冒険者ギルドで調べてから行くようだ。
さて、俺は特にやることがないのでアルストロメリアの……いや。パンテールは怖いから無しだな。とりあえず裕也の工房でも覗いてみるか……。
工房に行くと、煙突からは今日も煙が上がっている。覗くと今日は助手をしてる子供が2人いた。1人は前回も居たジャグだけど、まあきっと地元の子供なんだろうな。
「おう。来たな」
「ああ……こないだより弟子が増えたな」
「ん? ああ、ジャグは知ってるな? こいつはスンキだ。まあ俺が仕事をやってるとたまに顔だしてくるんだ」
「そっか、よろしくな。裕也の……うーん。友達?」
まあ、裕也と比べだいぶ若い見た目の俺が「友達なんだ」なんて言っても、は? って感じかもしれないけどな。とりあえずジャグは以前も俺たちの会話を聞いてるからそうなんだろうなと思うだろうが。
裕也は手を動かしながらも、昨日のハヤトとの話を聞いてくる。だけど横に一般人が2人居ると、話しちゃ駄目な気がするんだよなあ……。
「まあ、後でまた夕食でも喰いに行ってもいいか? その時でも話すわ」
「ん? ……そうか。まあハヤトが絡んでるからな、それが良いかもな」
一昨日、昨日と裕也が作った物などを受け取る。と言っても、修理したモーザの短槍と、ナイフを2本。1本は剣聖との戦いで防御用に使ったナイフだ。だいぶ傷んでしまったので直しを頼んでいたのだが、いい感じだ。そしてもう1本は勢いで作ったらしいが、ククリナイフの様な内反りの湾曲が特徴的なナイフだ。
「ククリってやつか。かっこいいな。うん。この世界じゃこの形あまり見ないよな」
「無いわけじゃないぞ。まあウチの国じゃ殆ど見かけないけどな」
そして、俺は王都のジローを味わってみたいなと、裕也におすすめの店を教わり、工房を出て街の中をブラブラ散歩することにした。
うん。さすが年配の裕也が勧めるだけはある。ジローというより普通の中華そばって感じだな。だんだん年をとってくるとコッテリしらラーメンよりたまにこんなアッサリした物を食べたくなるんだ。
そうか、こういう店もあるのか。恐らく鶏系の出汁を丁寧に煮込んだあっさりスープだ。麺も青竹打ちの様に縮れた麺がいい感じだ……。もう、これはラーメンって呼んであげたい。メニュー表にある「ジロー」の文字には違和感しか感じない。
ラーメンを堪能していると、新しく入ってきた客が何やら興奮したように店長と話している。
「いまさ、竜騎士見たんだよ、噂の」
「竜騎士って……ゲネブのか?」
「そうそう。ちょっと人が集まっていたから見てみたらさ、城壁の外のギルドの出張所の前にデカイドラゴンが居たんだよ」
「まじか……それが竜騎士の?」
「ああ、しかもドラゴンの背中にワイバーンくくりつけてあってさ、半端ねえよ!」
お、おう。目立ってるなモーザ。でも帰ってきたのか。
「すいません、ギルド出張所って何処にあるんですか?」
「ん? おお、君も黒目黒髪か。そりゃなおさら竜騎士は見てみたいよな。ドラゴンが居たのは南門だ。ほら。受け取り所の」
「受け取り所?」
なんでも王都では、狩った魔物を城壁内に持ち込むのは基本禁止になっているらしい。血が滴って道が汚れたりとかは在るからまあ、有り得る話だな。そして、その代わりに南と北の2箇所の門の外に魔物の死骸の受け取りと、解体所を兼ねたような施設があるらしい。
俺は礼を言ってその受け取り所に行ってみることにした。
話的に城門を出てすぐの所にあるのかと思ったが、だいぶ外周の壁に近い方にあった。そう言えば外周の中もかなり街っぽく成っているから王都を楽しむならこっち側も散歩するのも楽しいかもしれない。庶民向けのジャンクな屋台とかも城壁の外にしかないしな。
現地では既にハーレーからの荷降ろしも終わっており、邪魔にならないようにと小さくなったハーレーがポツンと取り残されていた。
「ん? 3人は中か?」
「お。ショーゴでねえか。おでは少し腹がへってるんだで」
「あー。まあそれは……ああ。ちょっと待ってろ」
来る途中に果物などが置いてある露店が有ったのを思い出し、一度買いに戻る。遠巻きに見ていた人が、普通にハーレーと会話をしている風の俺を見て「やっぱ黒目黒髪は言葉が通じるんじゃねえか!」なんてざわめいていた。
買ってきた果物を手に少し悩む。ここはサービス精神を出してやるか。
ハーレーから少し離れたところからハーレーに向かって果物を放り投げる。
パクッ
危なげなく口でキャッチするハーレーに歓声が湧く。
ふふふ。
俺は調子に乗って次々に際どい所を狙い放り投げていくが、ハーレーはそのすべてをキャッチする。これは……案外たのしいかもしれない。その度に上がる歓声もちょっと刺激的だ。
「たくっ……騒がしいと思って覗いてみれば……なにやってるんだ」
「あっ。ははは。客が居たからさ」
「客って……」
何やら外が騒がしいと出てきたモーザに見られてしまう。
その後、3人に国王からの依頼の話をする。ハーレーなら何ヶ月でも小さくなれるようなので船も問題ないとモーザは言うが、端から自分の参加は悩むつもりはないらしい。ミドーもジンも不思議なくらい依頼を受けることに抵抗が無さそうだ。俺やみつ子、モーザに対する信頼が半端ないのかもしれないな。
ウチはどんな依頼でも報酬は会社が受け取って、給料として定額支給をしているのだが、ブルーノもこの話は知らないだろうしな、ワイバーンの依頼料や買取料は3人で分けて使って良いよと言っておく。フルリエがフリーズのスクロールを買った話をすると、そのお金で3人で何かオーブかスクロールを探してみると意気込んでいた。
「いいか、ジン。それでもモーザはどんな高いものでもあれば全部使っちまうんだ。歯止めがかからねえんだ。ちゃんとそこら辺はお前が見ててセーブしてくれよ。商人の血を引くお前に期待してるから」
「え? ちょっと。ショーゴさん。無理ですよ。僕なんてまだまだ新人なんだから」
「うちは新人とか関係ないから。ちゃんと財布の紐は握っとけ」
「は、はあ……」
そう言えば、アンデッドってゾンビとか感染するイメージが在るんだけど、あれって毒なのか? 呪いか? よくわからないがそういうのに効きそうな耐性のオーブなどがあれば経費で買うから抑えるように言っておいた。
とりあえず後はみつ子だな。夜にはホテルに戻ってくるだろう。俺は裕也の工房に戻ることにした。
※話がすすまねえw いつものことだけど。
明日はもしかしたら落としちゃうかも。今日は家族サービス頑張るので。
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