第18話 ダンジョン3層

 3層に向かう階段はギリギリ2人で並んで通れるくらいの幅だった。だからといって裕也と肩を並べて降りたりはしないが。まあそういうニーズがあるなら……いやいや普通にキモいだろ?


 3層は見た感じ、2層と同じ様な雰囲気で幅5メートル程の洞窟が続いていた。


 ……。


「あまり変わんないねえ」

「まあ違うダンジョンに行ったわけじゃないからなあ」


 少し進んで見るが魔物の気配がしない。


「3層出来たばかりでまだ魔物がポップしてなかったり」

「そんな事は無いだろ?……お?……ゲフンゲフン」

「……居たんだな……この先か?」


 あくまでも自分で魔物を見つけられるようになれって事ですな。

 曲がりくねった角をそっと覗きながら進んでいくと先に3体のストーンドールの姿が見えた。なんだ、出るモンスターも代わり映え無いねえ……先手必勝とばかりに剣に魔力を流し込みながら走り出す。


「おい、気をつけろよ」

「どこに気をつける要素があるんだよ……へ?」


 近づいていく俺に気がついたストーンドールの1体がこちらの方に手を伸ばす。なんだ? 今までに見たことのない動きだ。


 その瞬間。砲弾のように握りこぶし大の石が飛び出してきた。


 ちょっ……うぉい!


 とっさに持っていた剣で石の礫を弾く。あまりの威力に手がビリビリと痺れる。


「ぐぉお。しびれる……」

「だから気をつけろって言ったろ。弾く時はもっと角度つけて力をいなすんだ」

「裕也っこいつ……。ロケットパンチ撃ってきたぞ!」

「ストーンバレットだな」

「なに??? もしかして魔法なの???」


 残りの2体は特に魔法を撃つこと無く普通に殴りかかってくる。あの1体だけ別なのか??? 2体のストーンドールも2層までの動きとは違う気がする。片方が殴りかかってくると、俺の避ける方を塞ぐようにもう一方が攻撃してくる。ヤバい。連携している。攻撃しようにも後ろを取られ隙きを作れない。なんとか避けた所にストーンバレットが飛んできた。慌てて剣で防ぐが、その衝撃に剣を取りこぼしてしまう。


 カラカラ……。


 剣が後ろの方に転がる。


「おおおおおおお、やべえ!」


 その体勢の崩れた所に、ストーンドールが追い打ちで殴りかかってきた。避けきれず。なんとか腕をクロスして防ぐもその威力に体ごと浮く。激痛だ。だが運の良いことにそのまま飛ばされた場所に剣が落ちている。ラッキー……なのか? 慌てて拾い追撃に備える。


「裕也っ! なんとかしてっ!」

「上位種が居ると、下位種は連携することがあるからな。やりにくいだろ?」

「ぅぉおい。今そんな事言ってる場合かっ!」


 再び2体のストーンドールに挟まれて挟撃を受ける。駄目だ死ねる。


「くっそっ!……<極限集中>発動っ!」

「ぎゃはははっ。俺が居て最後は死なないだろうって心のどこかで思ってる内は無理だろ」

「ぬぅぅぅ! 後でしばくっ!」


 再び2体のコンボにストーンバレット。しかし少しづつ戦闘には慣れてきている。来ると解ってればなんとか避けれる! と言っても俺はほうほうの体で包囲陣から逃れる。


「よく相手の位置を見ろ。連携って言っても単純なもんだぞ」

「ぐぬぬぬぬ」


 確かに、魔法を撃つストーンドールの射線を維持したまま、2体が両側から来る。それだけだ。素早く魔法を撃つ奴と普通の1体の直線になるラインに入る。もう一体は一瞬位置取りに迷いが出た。なるほど。一対一なら問題はない。1体を切り倒すと、その勢いでもう一体と魔法の奴との直線ラインに向かう。途中にストーンバレットが飛んできたがそんなもん当たりはしない。


「ゴラァ!!!」


 取り巻き2体を始末した。後は……ふふふ。あとは魔法を撃つしか無い能無しさ。

 向かっていくとストーンバレットを撃ってくる。剣を寝かせて流すように弾く。行ける。


 ガツゥウ!


「ぐわぁ。痛え、またかよっ!」

「上位種なら魔法抵抗も高くなるぞ」


 その時既に、ストーンドールの手のひらが目の前にあった。嘘だろっ!顔を強引に横にずらす。轟音とともにストーンバレットが耳を掠ってく。やばかった。てか耳千切れたかもっ! 痛てえよおい。


「動きも遅い訳はないわな」


 再度ストーンバレットが放たれる。なんとか剣で弾く。剣に貯めてた魔力が抜ける。ぬうう。体で捌かないと攻めれないじゃないか。必死に魔力を剣に注ぎながらストーンドールの動きを注視する。ストーンドールが距離を取ろうと下がりながら手を向けてくる。ここで決める。ストーンバレットが放たれる瞬間に思いっきり横に飛ぶ。膝がガクガクするが根性で踏ん張る。動きのベクトルを横から前へと強引に変え、突っ込む。


 ゴオオン


 ストーンドールの消えた後には魔石と石ころが転がっていた。

 まじか。これだけ苦労して石かよ……。


「何このストーンドール。上位種なのか? 見た感じあんまり違いわかんないんだけど」

「ロックドールってやつだ。まあこのくらいなら3層でも問題ないか」

「おーい。超問題だらけな気がしますがね」

「省吾」

「ん?」

「3層行きたがったのは誰ですか?」

「……俺……かな?」

「行くのに反対したのは誰ですか?」

「……裕也……さん……かな?」

「気をつけろって言ったのに不用心に突っ込んだのは誰ですか?」

「……私めでございます」

「さあ、どんどん行こうか」


 ぐぬ……裕也のくせに……三段論法とは……知恵を付けやがって。

(※多分、三段論法ではありません。)


 それでも、ロックドールとストーンドールの組み合わせに対する攻略の糸口が見えたため気持ちは少し軽い。ロックドールもそこまで多く出てくるわけでもなく、しかし残念ながらロックリザードも稀に出現するため楽にはいかない。例によって気力と体力がすこぶる順調に減っていく。


 特に三種混合がまずい。ドール組の射線のラインに意識を取られすぎてるとロックリザードの噛みつきに対応しきれない。幸いロックリザードの石化も無視できると言われてるし噛まれて痛いくらいなので完全に無視してドール組から始末することにした。

 痛いくらいと行ってもレベルが5くらいだと噛みちぎられるレベルらしいが……半分無意識だが、噛まれて痛い場所に魔力を集める事でダメージが減らせるのだ。


「おおお。レベルアップ来ましたよ。結構早かった」

「レベルアップは良いけどよ、尻から尻尾生えてるぞ」


 おおう……そうだトカゲが残ってた。痛てえぞコノヤロー。

 何気に段々ロックリザードの外し方も慣れてきた。右手で首根っこを押さえ、左手に持った剣で柔らかい腹から突き指す。簡単じゃないか……いや、痛いのは痛いんだ。


「……変に図太くなりやがって」

「ドールの一撃食らうよりましかなと」

「何で1層で10体抜きやらせたかわかるか?」

「複数体出たときに効率よく敵を減らしていけるようにだろ?」

「そうだ、でもあんまり上手く行ってないと思わないか?」

「うーん、確かに」

「ためが多すぎなんだよ。魔力をためるのに時間をかけすぎる。一瞬で剣に魔力を送り込め」

「えーまた弾かれて手がしびれないか?……まあやってみるよ……」

「違う、やってみるんじゃない、やるかやらないかだ」


 おーい……どこのジェ○イマスターだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る