第198話 依頼受諾
翌日の夕方、再びトゥルが訪れる。一応受ける方向で話を進める。トゥルのレベルを聞くとまだ6だという。冒険者のランクと強さって別に一致するわけじゃねえのな。まあトゥルがピュリールだからってのもあるのかもしれないが。
「今請け負ってる仕事が、明日は休みだけどそのあと3日あるんだ。とりあえずそれを終わらせてからだな。それでも良いか?」
「大丈夫。旅に出る用意もしないといけないから」
「あと、基本俺たちはずっと走りっぱなしの予定なんだ」
「へ?」
「そうなるとそのレベルだとかなり厳しいと思うから、とりあえずパワーレベリングするから10まで上げてから行くぜ? いいか?」
「そ、そんなのすぐには無理だよ」
「大丈夫。2日で上げるから。明日早朝に西門に集合な」
「2日??? え? わ、わかった」
聞く所によると、特にスキルも持っていない。ピュリールと言うことで初めからランクもFからのスタートで、魔物の討伐などに絡まないと言う事で手取りを増やす感じで冒険者ランクも上げてもらっていたらしい。一応6まで上がってるので初めのうちはちょっと討伐もやっていたようだが、結局自分には向いていないと街中の依頼ばかり受けていたようだ。
夕飯を取り、家に帰宅するとさっそく電話を試す。
「うーん。裕也にかけたいけど……やっぱチソットさん先だよなあ」
「そうだねえ。この魔道具くれたんだしね」
「……くれたんだよね? レンタルかな?」
「え? ……う~ん。この魔道具の資料持ってきたの省吾君だし、貰った設定で?」
「とりあえず、そういう事にしておくか」
電話の魔道具と一緒に入っていた番号にかけてみる。と言っても1番がチソットさんで2番がハヤトって書いてあるだけだ。
……向こう側でジリジリと呼び出している音が聞こえる。みつ子も電話の音を聞こうと右手に持つ受話器に耳を近づけてくる。やばい。この距離感がなんか良いな。2人で頭をくっつけるように受話器の音に集中する。
ガチャッ!
「もしもしっ」
「あ、チソットさん。省吾です。ちゃんとフォルから受け取りました。ありがとうございます」
「おお、ちゃんと声も聞こえるね。よかったよかった」
「はいきっちり声聞こえていますよ。ただ、数日後にちょっと遠くまで出かける用事が出来たので、そしたらしばらく呼び出しに答えられなく成っちゃうかもしれないのでよろしくおねがいします」
「うん、分かった。ユーヤとは話したかい?」
「いや、まだです。まずは使える確認をチソットさんにしたくて」
「そっか、ありがとう。またユーヤとも話してみてよ」
「はい、そうですね」
そんな感じでチソットさんとの通信試験は無事に終わる。やっぱ体感で1~2分くらいか。電話なら3分は話せるようになると良いんだけど。魔石が終わるまで。もちょっと魔石ボックス大きくしても良いのにとか思っちゃうけど、電気のイメージでいっぱい入れすぎると電圧高くなりすぎるとかあるのかな。
魔石ボックスのカスを捨てて、再び詰めて今度はダイヤルを2に合わせハンドルを回す。
……
……
「ん? ハヤトは出かけてるのかな?」
「スマホじゃないからね。居るときしか繋がらないよね」
「明日またかけるか」
翌日、早朝からトゥルを連れて予備の魔物溜まりの所まで行き、ひたすら狩る。その日のうちにレベルも8まで上がる。本当は9に行けば2日で10も楽に行けそうだったがしょうがない。夕方には街に戻ってブラン司祭に今回の話を伝えたかったし。適当な所でゲネブにもどる。
「こちらは大丈夫です。レベルを上げたい司祭等はほぼ終えてますので。年配の司祭は割とレベルを上げてる方も居るのですよ」
問題なく了承を得る。そろそろレベリングの仕事も先が見えてきたな。次のいい仕事も探さないといけないのかもしれない。100人くらいと言うことを聞いていたからまだまだと思っていたが、回復魔法を使える司祭はそこまで多いわけじゃないようだ。修行中と言う名目で多くの修行僧はまだいるんだろうが。
ただ、レベリングをやっていて少し気になっていることが有ったんだよな……
「そう言えば、スラムにある教会の司祭達がまだ上げていない様ですが、大丈夫なんですか?」
スラムの教会にあるルティエさんとか来ていないんだよな。その話をするとブラン司祭は少し困ったような顔になる。
「ああ……実は大っぴらにはなっていませんが、あそこの教会はゲネブ大聖堂の管轄と別なんですよ。なんていうか教会も少し派閥的なものが有りまして……」
「宗派的な物が違うんですかね」
「そうですね、しかし特に教義がぶつかるなど無いので関係は良好ではあるんです。私どもは創造神亡き後に残された神々を主に祀っているのですが、彼らは創造神をメインとしているのです。もちろん現在私どもをお守りしてくれている神々をないがしろにしている訳では無いのですが」
「なるほど。創造神が復活するということも?」
「私共ではそこは判りかねるのではあるのですが、復活を望むというよりこの世界をお作りになられた創造神をお慕い続けるといった感じでしょうか」
なるほど。確かに長年続く宗教が考え方で分かれない方が不自然だもんな。それでもそろそろ声をかけてみようか、なんて話はあったようだ。
今回のレベリングをやってる組が終わったらしばらく休みにしてもらい、また帰宅したら声をかけるということで話は済んだ。
……
……
「お、省吾のところにも電話が設置できたか」
「フォルがエルフの集落から帰ってきてな、途中チソットさんの所に寄って受け取ってきたんだ」
「おう、フォルはどうだ? 元気か?」
「元気だぞ、集落で彼女作って連れて帰ってくるくらい」
「……マジか……どっかで聞いた話だな」
「お前だろ?」
夕方に電話をしてみると今度はちゃんと出た。今度ゲネブの下の方まで行って未知の集落があるらしいので探しに行く話をする。裕也は最南端の村までは行ったことが無いらしい。特に何もなくて閉鎖的な村だって聞いていたしな。との事だ。そこから山の方に向かう奥にそんな集落があるのは聞いたことが無いらしい。
「まあ、気をつけろよ。そんで楽しんでこいや」
「おう、また連絡するわ」
「そうだな。まあタイミングが有ればそっちに戻ることもあるかもしれねえけど、省吾も機会があれば一度王都に来い」
「そうだな、一度行ってみたいな」
なんだかんだで2度魔石を入れ替えて話してしまった。これだけで15個消費と思うとやはり不経済ではあるな、気軽に電話しまくれない。国王に会った話などもしたかったが短時間だとなかなか難しいものがある。
でもまあ、いつでも話せると思うと。やっぱこの魔道具は良いもんだ。
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