第131話 オーク討伐の翌日
次の日。思いの外早く起きてしまった。その割にだいぶスッキリはしているのだが、起きたがなかなか動く気に成れずそのままベッドの上で考え事をしてしまう。
ギルド長。あいつはもう許せない。
それを考えるとグルグルと怒りが頭の中を駆け巡る。今回、団員を殺されたと言うことで本格的に警備団の方も動いてくれそうだ。プロっぽいイペルがどこまで口を割るかは解らないが、俺とアトルの会話はきっちりとロジンさんが聞いている。何とかなる気はするんだよな。
ギルドと言う巨大組織の長ということも有り、不安は有るが。駄目だったら自分で動こうと決める。
――そういえば。
ロジンさんに持って行けと言われたアトルの次元鞄の中を確認していなかったな。
鞄の中を物色する。中には数個の革袋や布袋が入っており、物品ごとに整理されているようだ。几帳面なんだな。取り出した袋を空けていく。これは貨幣っぽいな、お金は……さすがBランクだ。やばい。数10万モルズある。布袋は干し肉やドライフルーツ等の食料、行動食だけだ。水の魔道具の水筒、食器類……。
1つの革袋を空けてみると、干し肉のようなものが大量に入っていた。しかしよく見ると……げ、これ人の耳か?……え? どうやって処分するの? 気持ち悪いんだが。
やばい。他の袋空けるの躊躇するわ。
恐る恐る残りの革袋を外から触ると丸いものが入ってるのが解る。これは魔石じゃないか? うん、確認すると魔石が何個か入った袋だ。それとこっちも同じか……あれ? なんか違うぞ? 乳白色のガラス玉のような物と玉虫色の玉が少し大きいのと小さいのが1つづつあった……これはオーブってやつか。何度か見たから解る。
これデカイのは器が大きめのやつじゃないのか? なんか良いスキルが入ってる気がする。ちょっとドキドキするな……。
それで同じ袋に入っていたということはこの乳白色のやつはブランクオーブかもしれない。そう言えば袋に入らずむき出しに中に巻物っぽいのも。うん、教会で見たのと違って魔力的なのがスカスカしてる感じがする。多分こっちはブランクスクロールってやつだろう。
これって……殺す相手にスキルや魔法をくれれば命を助けるとかやるのかもな。エゲツないぜ。ということは、この中身が入っているっぽいオーブは奪ったスキルってわけか。
鞄の中を見るだけでも異常性を再確認した感じだ。それでもお金と魔道具。オーブとスクロールそして魔石。これだけ貰っておくか。
要らないものを次元鞄に戻し、そのまま俺の次元鞄に入れる。次元鞄に次元鞄を入れると中の次元鞄に入っている中身は圧縮される。とりあえず小さくしてどこかに捨てることにした。
ただ、耳は一応警備団に持っていこうと思い圧縮はやめておいた。
昼近くになると、腹が減ったので事務所に向かうことにする。なんか自分で料理を作るきにもならなかった。
「おはよー」
「もう昼だけどな」
事務所に行くと、モーザは地べたに座り何やら座禅をしていたようだった。魔力斬……やりだから魔力突かな? の足りなさを補いたいんだろうな。
「フォル達はあと20日くらいは帰ってこないのかな?」
「まあ一ヶ月って言ってたからそのくらいだろうな」
「……温泉でも行くか?」
「はぁ?」
以前、フェニード狩りに行った時に寄ったスス村の温泉を思い出す。しかもあそこは鉱山系のダンジョンがある。ウーノ村よりだいぶ深いらしいし、あそこは鍛冶ギルドの管轄で入山料を払えば誰でも入れる。魔力斬の練習にも良い気がするんだよな。
とりあえず、モーザと1階に降りてジローを食べることにした。
「試作品だがテンイチ行ってみるか?」
「お、マジっすか。行きます。ご飯もあります?」
「いや、ねえよ。まだ試作だってばよ」
おおお。なんか俺が作ったのより旨いかも。鳥が違うのかな? やっぱプロの仕事は一味違うな。
「かなり旨いっすよ。なあ、モーザ」
「ああ、ジローも良いけどテンイチってやつはまたコクがあるというか」
俺たちの反応にオヤジも嬉しそうだ。しばらく限定10食でやってみるようだ。麺も細麺で、聞いてみると店の製麺機だと細い麺は打てないから手打ちで作ったようだ。
明日からスス村の温泉旅行がてらダンジョンで特訓してくるというと、相変わらず忙しいやつだな。なんて言われたが。オーク討伐ですり減った心を癒やしたいんだな。俺は。むしろスローライフを楽しむために出かけるんだ。
モーザも、フォルとスティーブが修行して追い越されたら嫌だろ? なんて煽ればすぐに乗ってくる。とりあえず明日からの行程の準備と、耳の入った袋を警備団の詰め所に持っていく事にした。
詰め所に行くと、ザンギ達ともう一つのパーティーが来ていた。どうやらどちらも逃げ帰ってきて依頼の完了書を貰ってないらしく、貰いに来たようだ。帰ってきてすぐに詰め所に来たら、他の団員が戻ってきて話を聞いてからと言われたらしく、今日のお昼過ぎを指定されたという事だった。
「おお、ショーゴも無事で良かったな。なんかお前はゲネブの悪名高い冒険者をどんどん掃除していくなあ?」
「知らねえよ。一番悪名高そうなギルド長が元気でムカついてるけどな」
「おうおう。確かに噂じゃ狂犬もアトルとイペルもギルド長の依頼だって言うじゃねえか。今回ので参考人として連れて行かれたらしいぜ」
「お、とうとう捕まったか。最低でも死刑になってほしいぜ、まったく」
やがて副団長がやってきて完了書にサインをする許可を出す。そして、俺を見ると奥の応接室に来るように言う。モーザも一緒に行く許可を貰い、ザンギにまたなと挨拶して副団長についていく。
「確かに、人の耳だな。つくづく異常なやつらだな」
「ですね、イペルの持ち物にもこういうのあったんですか?」
「ああ、胸糞悪い話だ」
副団長はオーク討伐のお礼と、ポーションを3瓶渡してきた。
「いや、3つも貰えないですよ」
「気にするな、どうせ経費で落ちる。団長からも謝礼を渡せと言われているんでな、帰りに貰っていけ。冒険者ギルドはもう所属していないんだろ?」
「はい、お言葉に甘えて頂いていきます」
「この後どうするんだ?」
「俺もモーザも力不足を感じるんで、スス村のダンジョンで特訓しようかと」
「ああ、鉱山ダンジョンは魔力斬の練習には良いかもな。モーザのこともよろしく頼むな」
「任せてください」
「モーザも、ショーゴ君が無茶しないようにフォローしてやれ」
あれ? 無茶やるタイプに見えますかね。モーザもモーザでしれっと「お任せください」なんて言ってる。
その後軽く雑談して、詰め所を後にした。今回の報酬と謝礼で15万モルズ近く貰えた。これはちょっといい宿に泊まれそうだな。
そういえば、ブランクオーブと共に2つ中身入りのオーブがあったよな。こういうのは商業ギルドで鑑定してもらえば良いのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます