第132話 オーブの鑑定結果はいかに!

 商業ギルドに行き、受付のサラさんに聞くと、料金を払えば鑑定をしてくれるという。とりあえずブランクオーブやスクロールを皆渡してお願いした。


 しばらくすると案内され、以前開業の相談をしてくれたブースに入る。受付のカウンターでの口頭で教えてもらう感じじゃないのな。


 鑑定士っぽい男性が渡しておいたオーブとスクロールを箱の様な物に入れて持ってくる。宝石商で宝石を乗せるようなちょっと豪華な感じの箱だ。


「今回鑑定を請け負わせて頂きましたグリュエと申します。早速ですが鑑定結果について説明させていただきます」


 お、なんか畏まってる。いい結果を期待したい。


 まずスクロールは2本ともブランクスクロールで間違いなかった、それから乳白色のオーブも予想通りブランクオーブと言うことだった。これは各々5000モルズほどで買取が出来るという。とりあえず売らないで取っておく。


「それで、この2つのオーブですが、こちらの小さめのほうが<硬皮>になります」

「<硬皮>?」


 硬皮とは、皮膚が一時的に固くなり刃物などの斬撃に対しても耐性が付くアクティブスキルらしい。固くなる分打撃にも有効らしいが、基本的には切れにくくなるやつという事だった。防御力が上がると考えればかなり良さそうだ。うんうん。


「それとこちらの大きめのオーブなんですが……」


 お、この人ちょっと生唾飲み込んだ。ヤバいの来たかも。


「<辞典>と言うスキルなんです」

「<辞典>?」


 このスキルは、ここパテック王国内のダンジョンでは出てこないらしく、他国でもかなりレアなスキルのようで国内に出回ることは殆どないらしい。<鑑定>持ちの商人が見たこともない物の名前を鑑定できたりするのだが、そういった知識がまとめて得られる物のようで商人としては喉から手が出るほど欲しい物らしい。


 生前日本で読んだ異世界転生物を読むと、割とそういった<叡智>だったり<大賢者>みたいな世界の知識を得るスキルを主人公が初期に覚えてそれが色々役に立つのを書いた作品が多かったように思えるが……ふむ。チートの切欠に成り得るのか?


「もしよろしければ、こちらを商業ギルドで買い取らせて頂きたいのですが……25……いや、30万出します」


 げ……えっと、日本円換算で……500万近いのか???


 やべえ。


 どうするか。


 ……いやしかし。


「これって商人の方が欲しがるスキルなんですね?」

「はい、そうですが」

「実はランゲ商会さんに色々お世話になっているので直接そちらに話を持っていってもよろしいですかね? 要らないようならまたこっちに持ってきますので」

「……いや。大丈夫です。現在のギルドの代表がランゲ様ですので商業ギルドの会員内で回るのであれば問題ございませんので」


 おう、そうだった。うんうん。爺さんには世話になってるからな。


 それとオークションに出品すると言う手もあるらしいが、大きく儲けるか、タイミングによっては安く成ってしまうか難しいので素人が安易に手を出すのは止めたほうが良いといわれた。


 オークションも楽しそうだけどな。


 因みにブランクオーブはスキルレベルが上がって容量が増えたものでもスキル自体は吸えるということだが、吸ったものを付与する時はレベルが1に成ってしまうという。今回の<辞典>の様に元から容量が大きいスキルは容量の大きいブランクオーブを使わないといけないらしい。


「モーザ、<硬皮>使っちゃってよ」

「ん? ……良いのか?」

「一応俺は<強回復>あるからな、ちょっとやそっとの切り傷すぐ治るから。それと裕也みたいに回復魔法持ってないからさ、ダンジョンで怪我しにくくなるならその方が助かるんだよ」

「なるほど、よし気が変わらない内に貰うぜ」


 そう言うと、モーザはオーブを砕いた。


「ん? あれ? これ<辞典>だぞ?」


 突然。モーザがとんでもない事を口にする。


「え? は? まじ??? げっ!」

「ふふ。嘘だよ。ちゃんと<硬皮>だ」

「んが……勘弁してくれよ」


 くう。モーザがこんな冗談を言うとは……でもまあ少し打ち解けたって事だな。許そうじゃないか。




 ランゲ商会の家具屋にランゲ爺さんの部屋があったなと思い向かう。店頭で爺さんを呼んでもらうと部屋まで上がってくれと伝えられる。部屋に行くといつものナターシャさんと一緒にランゲ爺さんが迎えてくれた。


「おお、訪ねてきてくれてありがとう。どうしたんじゃ?」

「はい、コレを手に入れたのでもし必要ならと思い……」


 そう言いながら<辞典>のオーブを差し出す。爺さんはフムとそれを眺める。


「<辞典>じゃな? こんなレアなものどうしたんじゃ?」


 俺はコレを手に入れた話をする。命を狙われていると言う話に眉を寄せるも、話し終わるまで黙って聞いていた。


「我が家にも<辞典>のスキルは伝わっておる。ワシのスキルはブランクオーブで吸って息子に渡してしまってはいるがな。一応そうやって代々残して入るんじゃ」

「あ、さすがです。もうお持ちでしたか」

「しかし、過去には突然の死で伝えることが出来ず一度失っていた時代もあったようでな。もしよければスペアとして売ってもらえれば助かるんじゃが。どうじゃろうか」

「僕は全然構いません。なかなか手に入らない物と聞いておりますので、たしかに予備で取っておきたい気持ちは理解できます」


 そう言うと、嬉しそうにお金の提示をしてくる。


「そうじゃな。50万でどうじゃ?」

「え? いや、商業ギルドで鑑定してもらった時30万と言われたので30で十分ですよ」

「いやいや、それは買値じゃ。売値で言えば50万でも取り合いになるものじゃぞ?」

「ん~~。いやそれでも知り合い価格で良いと思っているので30万で良いですよ」

「何を言っておるんじゃ。商売をするんじゃからもっと取れるときに取っておかないといかんぞ?」

「いやいや。大丈夫です。一度出した金額を変えられませんて」

「いやいや。それはワシも同じじゃ」


 結局、ナターシャさんが割って入り、間を取って40万モルズでお買い上げしてもらうことになった。後ほど口座に振り込んでおいてくれるようだ。


 なんか温泉土産でもあったら買ってあげようかな。


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