第24話 ダンジョンおかわり
今日が合宿最後の夜ということで、夕食は例の酒場で取ることにした。裕也もお酒を頼みまくっている。俺はちょっと誘惑に負けそうになったが辞めておいた、この世界では15から大人扱いとは言え地球の感覚でちょっと背徳感があるんだ。これからの成長に悪い影響が有るとチートを楽しめないかもしれないからな。
定食を旨そうに食べるハヤトが尊敬のまなざしを向けてくる。
「お兄ちゃんこの合宿で4つもスキルって超すごいよっ」
「あ、ああ……」
「確かにお父ちゃんの特訓、スパルタだからスキル発生かなり早めてると思うけどさ。精々1つ2つくらいかと思ってたのに」
「あ、ああ……」
「あれ?あんまり嬉しそうじゃない?」
「……嬉しくないわけじゃないけど」
「うん?」
「俺は普通に強くなるのが欲しいんだよぉ!!」
発生したスキルは<逆境>だった。
窮地に陥り追い込まれれば追い込まれるほど、ステータスがアップしていく。
もう嫌がらせとしか思えねえ。
裕也のやり方どっか間違ってるんじゃねえか?
そして明日の予定の話になった。明日午前中残りの魔石と硝石を雑貨屋に売りに行って、その後家まで帰る事になった。俺はちょっと考えてた事を提案した。
「裕也。俺あと2~3日残っちゃ駄目かな?」
「え? お兄ちゃん一緒に帰らないの?」
「始めの課題だった鋼の剣での魔力斬がまだ出来てないから、一人で1層で練習しようと思ってな」
裕也は少し考えていたが、やがてニヤリと笑うと答えた。
「1層ならそんな心配は無いか……良いぞ、そういうアグレッシブなのは俺は好きだ」
ハヤトが家でだって魔力を込める練習は出来るじゃんと言うが、実践で使えてこそだと思うんだ。あまり無茶はせず1層で練習するならという条件で裕也が了承した。心配するハヤトに裕也が言う。
「いざとなれば、こいつの死にぞこない3点セットが発動するから大丈夫だろう」
うわ。「死にぞこない3点セット」とか言いやがった……言い得て妙な所がムカつく。
次の日
「じゃあ先に帰ってるからな、あんま無茶はするなよ」
「分かってるって、俺は石橋を叩いて渡る派なんだ、大丈夫だって。そんなことより例の手甲頼むぜ」
「あれ本気だったのか? しょうがねえな。ちゃんと帰ってこいよ」
別れ際に、修行用に裕也が準備していた鋼の剣を受け取る。いまのと同じスタイルの片刃のは2本しか在庫が無かったようだが、雑貨屋に持っていった2本のうち1本が余っていたのでそれも受け取る。両刃は未体験だからちょっと楽しみだ。
それから一応念の為とポーションとマナポーションを2つづつ受け取った。やっぱりあったか、ポーション。ポーションは半透明の小瓶の中に少しとろみの有る液体が入っている。飲みにくそうじゃね?マナポーションの方はセトモノの瓶に入ってる、陽の光で劣化しやすいとのことだ。どっちも容器は再利用するから捨てるなよと念を押される。
「おや、今日は1人かい。気をつけな」
ダンジョン守の爺さんに見送られ、始めてのソロダンジョンに向かう。
チートはソロから始まるんだ。
ガツィイン
うおお、確かにやり難い。
感覚としてはストーンゴーレムとやる時レベルの魔力量を込めたのだが斬れない。取り敢えず2撃目などの事を考えずありったけの魔力を込めて行くしか無いな。昨日はレベルを上げられなかったので、恐らく今日頑張れば15に成れる……はずだ。
グォオン
ふう……なんか限界まで踏ん張ってようやくといった感じだな。ただ、ストーンゴーレムの攻撃はもうほぼ食らうことは無いので魔力の充填に十分に意識を向けられる。
その後しばらく狩りを続けているとクラクラと集中しにくくなってくる。
やば、もう魔力切れか???
慌ててダンジョンから外に出て、休憩することにした。
ダンジョンから出ると日中の明るさに目が慣れずクラクラする。そろそろ太陽が真上に差し掛かってきていた。今日はスタートが遅めだからこんなもんか、と、ちょっと早いかもだけど昼飯を食べるとしよう。
ここのところ1人で飯を食う事なんて無かったから何となく寂しさを感じダンジョン守の小屋を覗いてみた。爺さんは気持ちよさそうに寝ていたので、そっと小屋から離れる。
裕也と以前昼飯を食べた、入り口から少し離れた場所で座り込んで弁当を広げる。そこは丈の短い芝生のような草が生えていてピクニックとかでレジャーシートを敷きたくなる様なナイススポットなんだ。弁当を食べ終わるとゴロンと横になる。そういう気分にさせる場所だ。
真っ青な空にところどころ雲が浮いている。気持ち良いなあ……そう言えばあれ以来ドラゴン見ていないなあ。もしかしたらワイバーンとかかもしれないけど。そんな事考えながらついウトウトしてしまう。
zzz
zzz
はっ! ヤバい寝てしまった。太陽はそんな動いていないか? せいぜい1時間くらいか。
どうやらダンジョンに冒険者がやってきたらしく、彼らのたてる物音で目を覚ましたらしい。1人で好きにやりたかったので何となく厭わしく感じてしまう。そっと覗くと彼らがダンジョンの通用門から中に入って行くのが見えた。皆斧やハンマーといったヘビーな武器を持っている。彼らが中に入っていったのを確認してダンジョン守の小屋に行ってみた。
爺さんは早速うたた寝ポジションを取っていたが、今の団体は? と聞くと地元の冒険者ギルドの若者だと教えてくれた。ギルドにも3層の情報が行ったらしく、ちょっと見てみようぜというノリなんだろうと。ただ使い慣れてなさそうな借り物の武器を持ってるのが多いみたいだけど大丈夫かのう? なんてボヤいてる。
まあ、そういう事なら1層でまったりやる分には問題ないか。
少し寝たせいか、調子は問題ない。マナポーションをがぶ飲みしながらやれば効率は良いのだろうが、そんな量は無い。出来るだけ魔力を節約していきたいがまだ感覚を掴めないのでやはり最初は無駄が多くなってしまいそう。
鉢合わせを避けるため、入口の前で三十分程ストレッチなどしながら時間を潰して突入した。
なんだかんだ言って、裕也と回っているときにはほとんどMP切れに無らなかったのはやはり剣の差なのだろうか。しばらくやりながら感じたのだが、何となくだが鋼の剣は魔力の通りの悪さと言うより維持の悪さを感じる。ぐぐぐっと時間を掛けて充填した時はミスが多くなる。逆にフンッと一気に魔力を通して攻撃したほうが成功率も高い。
ということは無駄になってる魔力が大量に出るからMPがすぐ枯渇するんじゃないかなと。貯めた魔力を散らさないテクニックが有れば良いのだが。少しそんなイメージを魔力に与えながらやってみるか……
少しづつ検証を重ねながら戦っていると、いつの間にか奥の階段まで来ていた。一応階段の当たりはポップすることが少ないのでちょっと休むにいい場所だ。階段に腰掛けてまた脳内検証を始める。
まあ、魔力を纏めるようなイメージし始めてからちょっとは良くなってるのかね。
……そういえば冒険者の人たちは上に行ったのか
……若者って言ってたな……。
……あれ?
今の<直感>か??? たんなる妄想か???
なんとなく嫌な予感がする。
ううむ……俺1人だしなあ……剣を今までのに戻せば行けるかな……
しゃあない。見に行って問題なければ戦い方の見学だけでもして降りてくれば良いか。
うん。
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