第25話 冒険者救出

 2層を足早に進んでいる。鋼の剣での訓練が中途半端になってしまったが、魔力を纏めるようなイメージは維持しながらである。


「やっぱり前よりだいぶ楽に斬れるな」


 裕也の剣はミスリルが混じっていると言っても主成分は鉄。やはり本物と比べると魔力の維持は下がるのだろう。なるべく散逸しないようにと気を使うことでより少ない魔力で行けるようになってる。


 今までよりサクサク進むのが楽しくて夢中になっているとレベルアップ酔に襲われる。3層の面倒くさい場面とかで来なくてよかった。そろそろかと思っていたから何気に不安だったんだよな。何となくそういう星の下に転生したっぽいし。


 う~ん。そろそろ半分以上は進んでいると思うが、流石に5人くらい居たからな、追いつきはしないか。まあ1層でダラダラやってたし。


 2層の深部。階段までたどり着く頃には魔力の纏めるイメージもかなり良くなってきていた。もう3層に降りてるのか、このペースで行けるパーティーならやっぱ問題なかったんじゃないかと思えてくる。ちょっと階段に腰掛け一息つく。


 MPもそんな減ってなさそうだしな、呼吸だけ整えたらすぐ行くか。


 3層に降りてしばらく進んだところで魔物を処理していると、奥の方から怒鳴り声のようなものが聞こえる。ちょっとやばい感じだ。急ぎ処理してそちらの方に走っていく。


「おい! リュート! リュート! くそう」

「お前等が大量にトレインしてくるからだろっ!」

「仕方ねえだろっ! やろうと思ってやったわけじゃねえんだ!」

「言い争ってる場合かっ! 今は一匹でも減らしてくれ! 保たねえ!」


 見ると結構な数の魔物に囲まれているパーティーがいた。4人か。タンク役の体の大きめの若者が必死に攻撃を受けているが、ちょっとやばい感じだ。残りの3人が必死に斧やハンマーで攻撃をするが、各々別のストーンドールと対峙してる為に殲滅が間に合っていない。少し離れた所には1人倒れている。


 おいおい崩壊寸前じゃないか。

 慌ててノイズでストーンバレットをキャンセルしながら後ろから間引いていく。


「もうちょっと耐えろ。後ろから減らしていくっ!」


 声をかけると、ストーンバレットが飛んでこなくなって余裕が出てきたタンク役の若者が応えた。


「すまねえ。助かる!」


 見た感じ鈍器でのタコ殴り作戦は、1層のあまり魔物が群れることの無い場所だから通用する。複数体に囲まれる状況だと殲滅スピードが足りないのか。


 程なく魔物の処理が終わる。倒れている冒険者も居たため急いだほうが良さそうかと、若者が戦ってる途中だったストーンドールも後ろから斬り落としていった。



「大丈夫だ、息はある!」

 倒れていた若者もなんとか無事だったようだ。しかし足をロックリザードにやられたせいで石化が始まっていた。ポーションを2つ出して若者たちに渡す。


「い、いや。ポーション代なんて払えねえよ。」


 む、ポーションは高級品だったのか。しかしタンクの若者の腕も折れているようだし、満身創痍の様子だ。かなりダメージが酷そうだったので金なんて取らねえよと無理やり飲ませた。ちょっと興味あったのでジーっと見てしまったのだが、ポーションを飲み干すと同時に傷が逆再生の用に治っていく。気持ち悪い。


「何から何まですまねえ。俺はタグっていう。あんたは?」

「俺は省吾だ。まあ何にしろ無事で良かった」


 他の若者も口々に礼をしてくる。よせやい。恥ずかしいだろうが。

 石化の呪いは教会に行かないと取れないらしいのですぐに帰るという。弱い呪いとは言え、放置しておくと心臓まで石化が進むことがあるからちゃんと治療はしないとまずいらしい。



 どうやら3層に入りだんだん雲行きが怪しくなってるところで、先の様子を見に行った二人の若者がエンカウントした魔物をトレインしてしまったらしい。その処理が終わらないうちに新しいのがポップして……確かに厳しいわな。


「彼は背負っていくしかないだろ。出口まで付いていくからすぐ行こう」


 帰り道。若者たちは出てくる魔物を剣でサクサクとぶった切っていく俺の姿に少し引いている。これだよこれっ! なんだかチート主人公っぽいシチュエーションに心がトキメク。ニヤつきそうになる顔を必死に抑える。ただ……男性率100%と言うのはちょっと頂けない。


「そう言えば、ユーヤさんが弟子を連れてダンジョンに来てるって話を聞いたが、ショーゴの事だろ?」

「ん? 確かに弟子って言えば弟子だが。もうそんな噂が?」

「村長ところのメイドがギルドにゴブリンの巣が処理できてなかったって文句を言いに来ていてさ、その時にユーヤさんとその弟子達がゴブリンを退治したって話してたぜ」

「ああ……ゴブリンなあ……。」


 ゴブリンのボスは強かったなあ。戦闘技術だけならストーンゴーレムより強いんじゃねえか? だけど刃が通らないだけで難易度がだいぶ変わる気がする……まああの時も<極限集中>が発動してなかったらどうしようもなかっただろうけどな。


 ていうか、村長……自分で行かないでメイドさん行かせたのな。ほんとヘタレじゃねえか。


 出口まで戻ると、再びダグが礼を言ってくる。


「ホントに助かった。ありがとう」

「良いってことよ、困った時はお互い様さ」


 ダグが手を出してきたので、握手をする。いいなこういうの。

 でもたまに、15の見た目でオッサン臭いセリフを吐いてる気がして変に思われないか心配になる。


「ショーゴはこの後、ユーヤさんところで鍛冶師目指すのか?」

「いや、俺はゲネブの街に行って冒険者になろうかと思ってる」

「ホントか! じゃあ、同じ冒険者ならまた会うこともあるかもな、その時は酒でも奢らせてくれ」

「酒は今やめてるからな、そうだな。飯くらいは付き合うぞ」


 そう言って若者たちと別れた。


 ……おや?


 若者たちが去った後ふと空を見上げると結構良い時間になってる。かと言ってこのまま「やっぱり帰る」とか言って合流するのも恥ずかしいな……失敗したなあ。


 しょうがない、もうちょっとだけダンジョン入るか。

 さて。鋼の剣に戻して少しやるか。



 ちょっとのつもりがつい熱中して1時間程練習をしてしまった。

 ダンジョンから出るともう暗くなり始めている。慌てて宿まで走った。


 風呂と食事を済ますと自分の部屋に戻りベッドに横になる。


 裕也は2泊分の料金を払っておいてくれた。念の為もう少しダンジョンに行きたかったらと追加の宿泊費は貰っているが。


 何となく魔力を纏めるイメージを始めてから光明は見えている。ダグ達と別れた後はやっぱ楽な感じはあったしな。明日みっちりやればなんとかなりそうな気もするのだが。

 最終日の午前中にダンジョンに行った後で午後に帰ると言うのも良いんだけど……やっぱりもう一泊したほうが確実かもなあ……どうしよう。


 ま、明日やってみてまた考えれば良いか。

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