第27話 小屋への帰宅
村から裕也の小屋までの帰り道。裕也も居ないし街道を走った。回復魔法が無いから途中でちょっと時間をとって休んだが。それでも休憩は一度ですんだ。行くときと比べればスタミナも大分増えている気がする。もしかして<スタミナ上昇>覚えちゃってるかも? なんてことも考えたりしてしまう。
裕也の小屋につく頃にはだいぶ日は傾いていた。ゼエゼエと息を切らせながらも無事に到着すると3人で出迎えてくれた。裕也になんとかなったのか? と聞かれ。イケメン顔でニヤリと笑って親指を立てる。
「いや、それあんまりカッコよくないぞ」
くっそお。価値観の違いだな!
その後、ちょっと汗を流したいから井戸に行くというと、ソワソワしながらハヤトが嬉しそうに、見せたいものがあるから付いてきて、と外に出ていく。もしや風呂を作ったのか!? と思い付いて行くと、井戸の少し離れた所に木で小さな小屋のような物が建てられていた。ん? ちょっと風呂にしては小さいかな?
「お兄ちゃん中見てみてよ」
言われるがままに覗いてみると、中にシャワーが付いている。ちょうど海水浴場などで見かける簡易的なシャワールームの様な空間になっていた。
「おおお、これを3日で作るとは。やるな裕也」
「まあ、うちの家族だけだったら井戸で十分だったんだけどな、帰り道エリシアと相談して、シャワー室でも作ろうかという話になってな」
「なるほど、どうせなら風呂にしちゃえばよかったのに」
「家はそこまで水魔法の上手いのが居ないからな、井戸からいちいち汲んで貯めるのも大変だし。シャワーの方が掃除も楽だろ?」
まあ言いたい事は解るんだけどなあ……掃除なんて裕也がやればいいし。
「でもさ、このシャワーみたいに井戸から水引けばそんな貯めるの辛くなくない?」
「なっ!!!」
見るとハヤトもエリシアさんもそこは考えなかったみたいで愕然としてる。
マジか……家族ぐるみでボケて来やがった……。
そうは言ってもシャワーはありがたい。
「シャワー室の制作にかかりっきりだったので手甲は出来てない」
「言い切りやがったな……でも、街の領主さんに顔出さなくちゃいけないんだろ?」
「まあ、2~3週間って言ってたしそこまで急がなくてもいいだろう」
割ときっちりしているイメージだったが、案外のんびり屋さんである。
「そう言えばさ、暁天の剣だっけ? あれって何?」
「ん? ああ、王の即位の儀式に使う剣だ」
「おお、即位に使うのか、三種の神器みたいだな。それを頼まれるってすごくね?」
「そりゃあ、その時代の最高の鍛冶師が最高の作品を収めると言うものだからな」
ただ、黒目黒髪の裕也がそれを依頼されたというのは良くも悪くも色んな事を考えてしまうらしい。良く言えば、かつての勇者の事件を王家がようやく許したとも言えるし。他の鍛冶師のやっかみ等がこれから発生する事も考えられる。公爵から正式に依頼が入ればまず断ることは出来ないだろうが、政変に巻き込まれる可能性も捨てきれない。
次の王に誰がなるのか……これも問題になってくるだろうとの事で。現在王子は3人。普通に行けば長子がなるのだろうが、第三王子の人望と名声が高く、ゲネブの公爵も後ろに居るという噂があるらしい。この国では最終的には選定会議で次期王が決まる。選定会議は、日本で言う宮家にあたる2つの大公家と3つの公爵家によって構成されており、ピケ子爵もゲネブ公爵派の代表として出向いたのではないかと裕也は考えていた。
そんな事は今考えてもどうしようもないのだが。
手甲に関してはそんな時間は掛からないと言うことで、完成したら街に向かおうという話になった。タイミング的にはフォレストウルフの肉も教会に持っていきたかったから丁度いいと。
そして今後の俺の身の振り方。当初はレベルを20までは上げたかったみたいだが魔力斬もマスター出来ればレベルがかなり上の奴らとも張り合えるだろうということで修行はとりあえず完了ということになった。
今度街に行く時にみんなで街に行き、そこから俺は冒険者ギルドの登録をして独り立ちする。省吾の大冒険の始まりだ。
「この3日の修行の成果を見せてもらうぞ」
そう言うと裕也は<解析>をする。
ショーゴ ヨコタ
LV15
魔法 光源 ノイズ
スキル 言語理解 極限集中 根性 頑丈 直感 逆境 魔力操作
裕也が新しく生えたスキルを教えてくれる。
「おおおお。魔力操作! 魔力斬のおかげだな」
「それにしても相変わらずスキルの発生が早いな。先が楽しみじゃねえか」
「むふふ。目指せチートですよ?」
「ていっても魔力操作は、魔力斬を使う冒険者なら割と必須に近いからな」
「まあ、途中から楽になったのはコレなんだろうな」
久々といっても、3日ほどだが4人での食事はやはり楽しかった。
次の日は朝から裕也が手甲の製作に励んでいた。俺とハヤトも手伝いという名目で作業場に居る。あまりやることは無かったが。
「それもワイバーンの革か?」
「そうだ、あとトライデントスコーピオンという魔物の甲殻を使おうかと思ってる」
この世界の戦闘に関して、ある程度のレベルになると皆防具や武器に魔力を通しながら戦うのが普通になってくるらしい。魔力の維持、保持を考えた時に通常の金属より魔物の素材、つまり生体材料を使用したほうが有利に働きやすいと言うことだった。
「ある程度のレベルって言うとギルドのランクだとどのくらいなんだ?」
「まあ、キッチリできるランクだとCランクくらいじゃないかな」
「じゃあ、結構上と言えば上なのか」
そうしてまず左手の手甲が完成する。うん、スゲー安心感だ。カッコいいし使いやすそうだし文句なし。しかし当の裕也は、右手は明日やろうと言ってる。焦らすぜ……まるで毎日ちょっとずつしかか仕事をしない宮大工みたいだ。
「そうそう、時間有るならちょっと見てもらいたいのが有るんだ」
「ん? 良いけど、なんだ?」
「ノイズを体に纏う練習をしててな、その状態だと<解析>とか弾けるか見てもらいたくて」
「お、良いだろう。俺の高レベルの<解析>を跳ね返せるかな」
裕也は日常的に鍛冶等で使う金属を<解析>しまくってるらしくかなりレベルが高いらしい……いけるのか? ちょっと強めに行ってみるか。
<ノイズ>
「よし。来やがれコンチクショー」
裕也の瞳孔が開く。青筋も立つ。お、ちょっと苦戦してそうな顔だ。
「やるねえ。かなり見にくくなってるぞ」
「おおう、良いじゃねえか。知らないやつにこっそりスキル見られたりするの防げるな」
「まあ、マナーとして勝手に見るやつ少ないけどな、あと、スキルは<鑑定Lv3>くらいにならないと見れないからまず居ねえよ。あんま気にしなくていいんじゃないか?」
「へ……?」
なんと<解析>で見れるスキルもレベルが高くないとあまり見れなかったらしい。下位の加護が見れるとか言っていたが裕也は<解析>のレベルもほぼマックスまで上げてあるらしい。鍛冶をする時に材料の成分などを常に解析してるから使いまくってると言う話だ。
ギルドの支部に有る魔道具も基本的には名前とレベルが解るくらいでどちらかと言うと本人確認の意味合いが大きいらしい。当然統合スキルなんて、もっと高レベルの<解析>じゃないと見れないという……。
脳内で積み上げてきた謎の男設定がガラガラと崩れ落ちる。
それでも、俺が登場すると魔道具が誤動作とかしちゃう設定を実現するために夜な夜なノイズの範囲拡大の練習は重ねる。
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